【ショートショート】田中の決断。
「話したいことがあるんだ。」
そう田中からラインが入っていたのは今朝、午前4時頃だった。
どうやら田中はぼくだけでなく
いわゆる彼が「仲間」として認識している人間たちに
同じようにラインを送っていたようだった。
荒川の河川敷に呼び出されたぼくらの前で
田中は神妙な面持ちをしながら
そして一度だけ「ふっ」とキザな笑みを浮かべたあと
ぼくらを背にした形で、体育座りをした。
そうして
ぼくらに背を向けたまま
真っ赤に染まる夕暮れの空と東京スカイツリーを
1人眺めながら呟いたのである。
「俺、東京行くわ。」
荒川区生まれ
荒川区育ち
実家暮らしの田中の
背中は今日も大きかった。