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【ショートショート】一滴のしずく。

「ほら、また一滴の雫が落ちましたよ。」

「ええ、知ってます。」

組んず解れつの後の会話はこんなものです。

あ、ごめんなさい。

自己紹介を忘れました。

わたくし、足立区出身の銀行員でございます。

一滴の雫を零したわたくしは
静かにスーツの襟元を正し
背筋を伸ばします。

そして溜池山王へと
向かうのだ。

しかしながらの雨。
外は雨なのです。

傘をどうしよう。

でもよく考えてごらん。
もう一滴の雫を落としたのだから。

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