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前略 どこかのあなたへ

先日、私の住む街の大通り沿いに並ぶイチョウの木々が一斉に剪定されていました。切りすぎた髪を気にするかのようなその姿に、どこか不憫な気持ちが芽生えつつも、本格的な冬を迎える前に、自分の身の回りも整えたくなるような風景でした。

私は四季の中で秋が一番好きです。いつもは殺風景に見える道も、紅葉した橙色や茜色の葉が落ちているだけで、その彩りに思わずうっとりしてしまいます。枯れた落ち葉を踏んだときの「クシャッシャクッ」という音もなんとも言えません。このなんとも言えなさは、たっぷりボイルしたシャウエッセンをかじったときのあの快感に似ているように思います。

音といえば、知人からエレキギターを譲り受けたことがきっかけでギターを始めました。まるっきり初心者の私ですが、練習を重ねるごとに自分の身体が少しずつ素直に応えてくれることに驚いています。硬くなった左手の指先も愛おしく、つい何度もその触感を確かめてしまいます。

驚いたことはもうひとつあります。ギターを始めてから、普段聴く音楽のギターパートが耳に飛び込んでくるようになりました。「人は認識して初めてそこに在るものがわかる」と言いますが、今までひとつの曲として聴いていた音楽が、さまざまな音の重なりから成る複合的なサウンドであることを実感するようになりました。その中でも、とりわけ練習中のギターの音が聞き取れるようになったのは自分でも驚きです。

私たちは日頃、たくさんのものを見落としながら生きています。けれど、これからもっと「わかる」ものを増やしていきたい。気づきの瞬間を楽しみに生きていきたいなと思う今日この頃です。

ゆい

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