笑顔あふれる星空へ―TVアニメ『ラブライブ!スーパースター!!』3期第11話「スーパースター!!」
ついに『ラブライブ!スーパースター!!』TVアニメ3期はクライマックスへ。前人未踏のラブライブ!連覇に挑戦する3期第11話が放送されました。Liella!が放つ煌めきの道のり、その先にあった答えとは。今回も振り返っていきましょう。
それぞれの夢のカタチ
1年生
前回の感想でマルガレーテが結ヶ丘に残るのかどうかという話をしましたが、早くもそれが描かれることになりました。第10話でもやや迷いが感じられる部分はありましたが、「笑顔のPromise」のステージを通してそれは更に強くなったのでしょう。
一度夢見たものは簡単には覆せない。でも、「戻りたい」ではなく「戻るべき」と言った時点で、マルガレーテの本心は決まっていたも同然。そして、冬毬からの「一緒に続けたい」という素直な想いがこぼれたからこそ、残ることを決められたのでしょう。以前の冬毬であれば、このような個人的な希望は口に出すことはなかったはずですが、こうして心を通わせて想いを伝えることの大切さを知ったことが冬毬の成長であり、それがまた新たな未来を掴み取っていくこととなるのです。
それぞれが信念を持って決めた道であるならば、結ヶ丘に残ることも残らないことも大切な答え。誰かに求められたいという想い、そして誰かのために歌いたいという想い、どちらも叶えてくれたスクールアイドルは、マルガレーテが心の底から求めていた場所でした。
「私、Liella!には戻らない。」から始まったTVアニメ3期が、この言葉に行き着いたことは、大きな意味を持っていると思います。夢を追うなかで大切なものを見つけ別の道へと駆け出すことも、それが自分の本心から求めるものなら「私を叶える物語」なのです。マルガレーテが宝物を見つけられて良かった。心からそう思います。ずっと一人で彷徨ってきたなかで見つけた、冬毬という大切な仲間と一緒に歩んでゆく未来はきっと素敵なものでしょうから。
2年生
昨年の春、きな子が「Starlight Prologue」のステージの映像を見ていた場所に「笑顔のPromise」が流れていることに、きな子たち2年生の夢がかなったことを実感します。
まもなく旅立っていく3年生への感謝が尽きないであろう4人が最後に目指すものは、11人だからこそ歌える楽曲を作り、再びのラブライブ!優勝を果たすこと。自分たちだけで答えを出そうとする姿に、この2年で本当に頼もしくなったと感じますね。
3年生を追いかけこれからの未来を託された後輩として、そして迷いながらも1年生をここまで導いてきた先輩として、結ヶ丘の3年目の最前線に立ってきた2年生の4人。第10話にも通じる話ですが、きな子に限らず明確な夢をもっていたわけではない4人が、Liella!として過ごすなかで、それぞれの隠れた力や追い求めるものを見つけることができたのは、本当に素敵なことだと思います。夢は『ラブライブ!スーパースター!!』という作品の大きなテーマであり、だからこそ「今は夢がなくても、跳び込んだ先で見つけられるかもしれない」という姿を見せてくれた2年生4人の姿は、常に私の心を揺さぶるものでした。
運命に導かれLiella!として結ばれ、悔しいこともたくさんあったけれど、大切なものを見つけて、固い絆で前に進み続けることができた。3年生というスーパースターが旅立ったとしても、この4人ならきっともう大丈夫。「スーパースター!!」という楽曲は4人の力で作ったのですから。
3年生
ここまで走ってきた3年生5人の長い道のりはまもなくゴールへ。第11話ではそれぞれが羽ばたいて行こうとする未来が描かれました。北京の大学の冊子が映っていたところから見るに、可可は大学に通いつつステージに立つ道を選ぶのでしょうか。スカウトを待っていたすみれはオーディションで結果を勝ち取るほどになり、結ヶ丘を託せる後輩を見つけた恋も安心して勉学に励んでいました。
とはいえ、先の分からない未来は本当は不安なもの。強い部長としてLiella!を引っ張ってきた千砂都が、ダンスチームのオーディションの結果を落ち着かない様子で待ち、合格の文字を見て大喜びする姿に、この可愛らしさと人間味が千砂都の魅力だよなと改めて感じました。
そして、未来への不安が最も描かれたのはかのん。家族からも仲間からも離れ異国の地で過ごす姿に、新しい環境へと進み挑戦していくことの重みをも感じました。可可やマルガレーテも、来たばかりの時はきっとこうだったんだろうな…。その姿は1期第1話の頃をも思い出すようで、久しぶりに頼りないというか、どこか怯えているかのんを見たような気がします。
そんなかのんの背中を押すのは、1期第11話で向き合って救った「歌が大好き」だという純粋な想い。最後の最後でも自らの夢に救われる展開、最高に『ラブライブ!スーパースター!!』過ぎて心が震えました。
この場ではかのんの姿だけが選ばれていますが、夢を原動力に結ヶ丘での青春を駆け抜けてきた3年生5人にとって、誰しも同じような想いがあったのだと思います。心の底から愛するこの場から旅立たなくちゃいけないのは寂しくて。でも、夢を──私を叶えられる場所はもっと遠くの未来。だから、笑顔で。
11人が揃ったTVアニメ3期は、それぞれ違う形の夢を描く物語でした。それぞれが胸に思い描くものを追いかけてきた日々はとにかく輝いていて、とても一言では言い表すことはできないけれど、ただひとつ間違いないのは、どんな形でも夢は素敵だということ。ひとつの夢を貫いても、跳び込んだ世界で新しく見つけても、もっと大切な別の夢に走りだしても、たとえ途中で見失いかけたとしても。心の奥底にいる「私」が走りたがっているのなら、そこから始まる「私を叶える物語」は本当に美しくて尊いものなのです。
夢を見守ってきた人たち
これは私自身大人だからということもあるのでしょうけれど、第11話で非常に印象的だったのは、2期第12話同様にLiella!を取り巻く大人たちの姿。
マルガレーテの姉は初登場でしたが、この言葉は彼女のどういった想いから出たものなのか…。まだ謎に包まれている存在ですが、新しい夢に手を伸ばしたマルガレーテのことを見守っていたからこそ、かのんにこう言ったのではないかという気がしています。
2期第12話のこの言葉が大好きなんですけど、かのんの母親ってすごく良いこと言うんですよね。1年前のかのんはすごく悩んでいたなかで、大人たちにも支えられて進むことができて。でも、3年生になって自分で答えを出せるようになり、夢中で走り出してどこか遠くへ行ってしまうことに、嬉しさと羨ましさ、そしてどこか一抹の寂しさもあったんだろうなと思います。
かのんの母親が昔やり残したことがあったのかは明かされていませんし、ましてや親心なんてものはまだ私には分かりませんが、そんな自分とっても刺さるシーンでした。
高校を卒業したSunny Passionもラブライブ!決勝の客席に。TVアニメ3期もどこかで出てくれるかな…と期待していたのですが、2人の助けがなくてもここまで来られたことがLiella!の成長の証なのかもしれません。
過ぎ去ったとしても忘れることなんてできない、夢中で夢を追いかけていた日々。大人になると共に遠のいていくことは寂しいかもしれませんが、そんな青春の記憶はきっと今も2人のことを明るく照らしているはず。連覇という夢は叶わなくとも、2人の姿に憧れたスクールアイドルたちが切磋琢磨し、それぞれの夢に手を伸ばそうとしていることは本当に嬉しいことなのだと思います。
他にも可可の姉・萌萌やきな子の母親、葉月家に仕えるサヤ、そしていつも答えを見つけるまで見守ってくれた結ヶ丘の理事長。たくさんの人たちに支えられてここまできたLiella!は、いよいよみんなを笑顔にするための最後のステージへと踏み出します。
未来の星たちへ
毎年のように超新星が現れる、荒波のようなスクールアイドルの世界。若手が中心となって「追いつけ、追い越せ──。」を体現するかのように前回優勝者のLiella!に立ち向かおうとするなか、受けて立つLiella!が出した答えは──。
これまでのLiella!の道のりが歌詞や衣装、振り付け、あらゆるところに散りばめられた楽曲「スーパースター!!」。11人の声が美しく重なる合唱、結ヶ丘で過ごしたかけがえのない時間、それぞれの夢のために駆け抜けた青春、そして羽ばたいていく未来のこと。全部が詰まった最高のステージでした。そして、そんな大きな答えを持った楽曲を、2年生の4人が作り上げたことが何より嬉しいのです。
僕らが走ってきた青春のように、ここにいるみんなが光ることができるんだ。こんなことを伝えられるのは一度優勝を掴み取り、尚も進化を続けてきたLiella!だからこそ。ただ勝つんじゃない、夢を支えてくれたみんなの笑顔を想って感謝と喜びを伝え、そして追いかけてくる未来のスーパースターたちのために、このラブライブ!という場所に歌で勇気と希望を残していく。これがLiella!にしか出せない答えなのか…すごすぎる…。
きっとこのステージに憧れた小さな星たちが新たに生まれ、またこの場所を目指して駆け出していくことでしょう。夢の舞台に手が届くスクールアイドルはほんの一握り。うまくいかない人の方がはるかに多いでしょう。だとしても、夢のために本気で走っていくことそのものが素敵で、その姿はきっと誰かのスーパースターとして映るはず。だからこそ。「みんな、あつまれ──!」
去り行く季節に
自分の中の消せない夢に気がついたあの日駆け出した道は、みんなの笑顔が溢れる場所へ。「歌でみんなを笑顔にすること」という夢は叶いつつも、歌を響かせるための世界はまだまだ広く、その夢が終わることはありません。でもこの続きは、結ヶ丘を飛び出した先。
いよいよ迎える最後の春、卒業の時。3年生は何を想い、何をこの場所に残すのか。2年生は結ヶ丘の新たな最上級生として何を伝えるのか。1年生は先輩たちの背中から何を受け取るのか。
ラブライブ!シリーズの一番大切な瞬間であり、一番見たい瞬間であり、そして一番寂しい瞬間。最後まで見届けます。