想い重ねて希望を掴め―TVアニメ『ラブライブ!スーパースター!!』3期第8話「結ヶ丘 VS 結ヶ丘」
早くも『ラブライブ!スーパースター!!』TVアニメ3期が始まって2ヶ月が経とうとしていますが、ようやくLiella!がひとつになる時が来ました。長かった…けどそこまでの道のりに意味があることも強く感じられた第8話でした。それでは今回も振り返っていきましょう。
新しい時代へ
この第8話で主な役割を果たしたのは2年生と1年生の6人だったので、3年生の出番はそこまで多くありませんでした。ただ、それこそが3年生の狙いでもありましたね。
第3話でも2年生にセンターをやってもらいたいと話していた千砂都ですが、その時は新しいLiella!を作るためと言っていた一方、今回は明確に卒業後の未来の話をしていました。第4話で卒業のことを2年生の口から語ってくれたこともあって、安心して後輩たちに託すフェーズに入ったのだと思います。それはこの8人体制の時間を通して、2年生の4人が成長してきたからこそ。
そして何より、かのんがいない場所でかのんに頼ることなく、部長として新しいLiella!を作り上げ、それがかのんが思い描く未来へとつながっていくことは、千砂都がいつか成し遂げると誓ったことそのもの。この側面は直接的に描かれてはいませんでしたが、この話は千砂都の「私を叶える物語」でもあったように感じます。エンディングも千砂都のソロでしたしね。
また、これはかのんにとっても同じ。1年生の2人と一緒に活動してきて、第7話で前向きな――おそらく勝ってひとつになろうという提案を聞いて、この2人ならきっと答えにたどり着けるだろうと任せたのでしょう。お人好しで2人のことを放っておけないかのんですが、今回は披露する楽曲を作ってほしいという最低限の手助けしかしていません。第4話と違い、自らの判断で後輩に任せられるようになったのは、3人で過ごした時間がかのん自身の成長にもつながっていたからだと思います。
夏美と冬毬の家の前までは来ていましたが、心配だったという面はあまりなく、ただ単にマルガレーテを送迎していたのでしょう。というのも、第7話のやり取りを見るに2年生はマルガレーテへの連絡チャンネルを持っていないはずですから、必然的にかのんを経由して連絡することになります。来てほしいということ自体は伝言ではなくマルガレーテに話したのでしょうが、3人に遅れて単独で行くことになったからかのんが牛久まで送った、という流れなのだと個人的に想像しています。
あともうひとつ、実は意味があるように感じられた描写が、恋が学園祭でコスプレをしているシーン。放送日が恋の誕生日だったからかとも思ったのですが(たぶんそれもあるとは思います)、ここで大事なのは「2年生が企画をしている」ということなんですよね。というのも、1年前のオープンキャンパスにおいて、現2年生の4人は生徒会もしくは千砂都の手伝いをしていて、企画に従う側の立場でした。しかし今回は、3年生の恋を逆に巻き込む形になっていて、2年生としてLiella!だけでなく学校の中心的な存在になっていることが感じられます。3年生が卒業した後、さらにこの街に根付いていくはずの結ヶ丘の未来が垣間見えるシーンでした。
可可とすみれは相変わらずでしたが、3年生の様々な想いが散りばめられていることに、過ぎゆく季節の切なさをも感じる第8話でした。
本当に取り戻したかったものは
ひとつのLiella!として結ばれることを願うなか、そのタイムリミットも刻々と迫っていた第8話。1年生の2人との間で解決する必要がある最大の問題は何か?となると、やはり第7話でも固い意志を見せていた冬毬とのことでした。冬毬が来ると分かりきっていた状況ながら、初めての挑戦となる曲作りに手を上げたことに、姉としての責任感を見せていましたね。
一方の冬毬は冬毬で、姉者の気持ちを確かめたい――つまり夏美から答えを出してもらう必要がある。その結果突き放してしまうわけで、なかなか落とし所が見つからないような状況に。こんな時だからこそ、助け合って前に進もうとする2年生の姿というのは本当に素敵です。
なかでも四季のこの言葉、これだけで泣きました。昔だったらメイにしかかけられないような素直な言葉で夏美を励ます姿に、不器用で抱え込んでしまいがちな4人だからこそ、こんなにも固い絆で結ばれたことは文字通りの宝物なんだと感じました。
そうして意を決して冬毬と向き合おうとするも、冬毬は心を閉ざそうとしてしまいます。そこで出てきた言葉は――。
結局この2人に足りなかったものは、互いに本音で心を開くことだったのだと思います。夏美が夢を見失ったあの日から、冬毬は自らの期待が夏美を追い込んでしまうのではないかと心を閉ざし、夏美のことを心から慕い応援することができなくなってしまった。そして夏美も、心の底からの表情や言葉を出すことができなくなり、何より冬毬に対しても踏み込むことができなくなってしまった。
冬毬が夏美のこんな表情を見たことは、少なくともあの日以来は、いや、おそらくこれまでに一度もなかったことでしょう。どんなに考えても冬毬が心を開いてくれないが故に、追い詰められて出てきた夏美の本音ではありますが、「冬毬と話せないことが悲しい、だから心を開いてほしい」と直接伝えることこそが一番必要なことでした。それが、冬毬が一番大好きな夏美の笑顔を取り戻す方法なのですから。
夏美がスクールアイドルを始めて夢をまた見られたとしても、純粋に夢見ていた時いつでも隣にあった、冬毬の瞳の輝きは戻ってこないまま。夏美が、そして冬毬も、本当に取り戻したかったものは、2人で一緒に夢見て笑顔でいた時間なんだと思います。良かった。本当に本当に良かった。めちゃくちゃ泣きました。
すみれの時もそうだったんですけど、素直じゃないキャラクターが追い詰められた時に本音をぶちまけるっていうのがめちゃくちゃ好きで…。なんかこの言い方だとすげえ人の心ないように見えるんですけどね…。
勝利のカタチ
そしてもうひとつ、マルガレーテは一足先にLiella!と一緒に曲を作ることを受け入れていたことから、頑なにLiella!を拒絶する段階からはもう抜け出していたことが分かります。ではマルガレーテの望みとは何か。そこで、マルガレーテのこの言葉を思い出しました。
マルガレーテは基本的に「Liella!に勝ちたい」という言葉に集約して語ることがほとんどですが、その言葉の裏にあるのは、自分自身で積み上げてきたものというか、自分自身の色に納得したいということ。Liella!に勝つ、というか、Liella!を負かすこと自体は本質ではないのです。
ならば、Liella!から「手を差し伸べてあげている」ならそれは振り払わないといけない。例えラブライブ!で優勝したグループであるLiella!だとしても、その色に染まることを望まない――自らの色を失いたくない、そして認めてもらいたい、ということだと思います。だからこそ、東京大会で敗れたあとはラブライブ!という大会そのものを否定していますし、もっと言えば5th LoveLive!で披露した『ノンフィクション!!』でも「もっと自分を認めてほしい」と歌うわけですよね。
その一方で第7話で迷いを見せていたように、Liella!と一緒になることで新たに見えてくるもの、たどり着けるであろう場所があった。それならばどうするのが最も納得ができるのか。それは――
もちろんこの曲は2年生と1年生の6人で完成させたものですから、マルガレーテだけの答えではありません。ただ、自らの色を武器にして、Liella!と手を取り合いともに戦う「新しいLiella!」であれば、東京大会のあの日乗り越えられなかった、ライバルとしてのLiella!をも超えられるのです。マルガレーテがいるからこそ新しく強いLiella!になれる、それこそがマルガレーテが思い描く勝ち筋になっていたのです。
それにしてもこの曲、本当にすごいですね…。2年生と1年生、それぞれの持ち寄った言葉から生まれた歌詞に圧倒されます。それぞれが歩んできた道とそこで得たものをぶつけ合う、これまでにない凄まじいステージでした。6th LoveLive! Tourで披露されるのも楽しみですね。
最後のピース
ここに至る背景までのなかで、それぞれの信念のようなものが描かれ続けた一方で、11人は結ヶ丘の生徒がどう思っているのかという部分に触れる機会はありませんでした。でも、Liella!として11人がひとつになることは、結ヶ丘の誰もが望んでいたこと。「Dazzling Game」で結ヶ丘の生徒が全力で楽しんでいた様子もその表れでした。
Liella!は他ならぬ結ヶ丘のスクールアイドルであり、期待を背負っているスーパースター。だからこそ11人だけじゃない、結ヶ丘のみんなが望んでこそ、本当にひとつになることができるのです。誰しもが望んでいるのであれば同じ結末にたどり着くのでしょうが、やっぱり「ひとつになろう」っていうのは、11人の誰かが切り出す言葉ではないんですよね。ラブライブ!は学校のみんなで挑むものなのですから。
上海でのライブのようにひとつの曲を歌ってほしい――そんな声がなければこのステージが生まれることもなかったわけで、いざという時に頼りになるのは結ヶ丘の仲間。これだけ心強い仲間たちとどんな未来へ向かうことになるのか、3年生にとって最後のラブライブ!が幕を開けることになります。
そういえば、生徒たちの声をかのんと千砂都に伝えたのは理事長ですが、この理事長の提案というか、意思もどのくらい入ってるのか気になりますね。恋の時のように基本的には口を出さないものの、ナナミ達が理事長に提案をした際に、待ってましたと言わんばかりの笑みを見せていましたし、やっぱりこの理事長は食えない人だよなあ…と改めて思います。
その他細かいポイント
夏美がフェイスパックを使っていることが描かれましたが、これまでにそのような様子は特になく、Liella!に入ってから誰かに勧められたのでは?と思っています。さて、誰だ?
そう、「すみれのパックオバケ~!」で有名な平安名すみれです。フェイスパック見るだけでドラマCDのこれ思い出すのも大概だな…w いやでもですね、すみなつはあります。やっぱり「姉者に似てる…?」ですからね。11人が揃ったこれからに期待が膨らみます。
曲を作ってきたと言って激しいロックを流すマルガレーテ、どこの浦の星女学院の理事長ですかね…w 初回から大笑いしました。たまにこういう高齢者向けのネタが入るとニヤリとしていまします。
さすがにタイムラインでも話題になっていましたが、「Dazzling Game」で濃厚なかのすみを浴びて終わりました(すみなつとかのすみどっちの顔やねん)。圧倒的感謝。ゆるいかのすみも大好物なんですけど、1期第4話でもあったように、澁谷かのんというスーパースターに面と向かって対峙できるのは、やっぱり他ならぬ平安名すみれなんですよね。
こういった演出も同じLiella!として活動しているだけではなかなか見られないので、TVアニメ3期ならではだよなと思います。トマカノーテと8人のLiella!が見られなくなるのも、それはそれで少しさみしいものかもしれませんね。
そんなかのんと対等に渡り合えるすみれに認められたマルガレーテと、それにかのんが「よかったね!マルガレーテちゃん!」と言うのも、かのんがすみれの実力を知ったうえで、そのお墨付きに大きな意味があることが分かっているということですよね。うんうん、それもまたかのすみだね。
そじゃなくて。この後の冬毬の「こういう時は涙してもいいのですよ。」が良かったです。第7話で冬毬が探していたマンガをあえて出さなかったことや、第8話で「もしかして、Liella!側にお姉さんが来るかもって思ってる?」と言ったところに、マルガレーテが冬毬の扱い方を少し分かってきた感がありましたが、その意趣返しのようなものを感じましたね。Liella!に加わった後の2人がどういうやり取りを見せてくれるのかも楽しみです。
と、いうわけで
以上、第8話の感想をお届けしました。ようやくLiella!がひとつになり、ラブライブ!連覇という史上初の快挙を成し遂げるための物語が進んでいきます。大きな課題は概ね片付いてきた感もあり、どのような想いを持ってラブライブ!に出場することとなるのか…気になりますね。
第9話は次回予告を見た限り比較的ゆるそうな雰囲気でしょうか。でもそういう話も油断ならないからなあ…引き続きじっくり向き合っていこうと思います。