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手をつないで、夢見て未来へ―TVアニメ『ラブライブ!スーパースター!!』3期第4話「No Rain, No Rainbow」

 序盤の3話を終え、早くも第2クォーターに突入した『ラブライブ!スーパースター!!』TVアニメ3期。いよいよ3期からの新キャラクター・鬼塚冬毬にスポットを当てた第4話がやってきました。
 今回も感想を色々と書いてみますが、これを読む前に2期第6話の私の感想エントリを読んでおくと良いかもしれません。というのも、2期第6話で夏美の背景について想像した部分が割と合っていたとともに、その予想を上回るものでもあったからです。個人的にもそれなりに考えがまとまって書けた感想でもあるのでぜひ。

傷だらけの姉、妹の決意

 第2話の時点では「スクールアイドルについて確かめたい」として練習にもあまり来なかった冬毬ですが、「Bubble Rise」と「Special Color」のステージを経て、少なくとも「練習が必要だ」と感じるようにはなっていました。ただこれは、冬毬自身がスクールアイドルとして必要としているわけではなく、トマカノーテの3人でLiella!に勝って夏美に現実を見せるため、と解釈する方が正しそうです。
 ということは、冬毬は夏美が夢を見ることを止めたいわけですから、裏を返せば「スクールアイドルには夢がある」ということを認めた、と言えるでしょう。スクールアイドルが素晴らしいものであればあるほど、冬毬は夏美のスクールアイドル活動を止めなければならない…本当に皮肉なことです。
 この話は、冬毬がスクールアイドルとして立つ意味を見出すまでには至らなかったわけですが、そこはまた冬毬についてより深掘りする回があることを期待しています。冬毬の異常に高い身体能力の理由、本当に気になるんだよな…。

 さて、夏美というと2期で登場して以降、濃い個性を活かしたコミカルな描かれ方が多いキャラクターでした。第2話の感想でも触れた通り本音をあまり出さないからという部分もありますが、その心の奥底にある想いが姿を見せたのは2期第6話がほぼ唯一だったと思います。
 それゆえに、視聴者の私達の認識としても、夏美の背景にある「たくさんの夢を叶えられなかった」ということがものすごく深刻には見えていなかったのだと思います。これはおそらく、Liella!の他の8人からしても同じことでしょう。

これがこの話以前の視聴者の理解。少なくとも自分はそうでした。
これが突きつけられた現実。冬毬がずっと見続けてきたもの。

「あなたたちと姉者との関係は、スクールアイドル活動をしている間だけになるかもしれない。けれど私は、これまでも、これからも、ずっと見ていくのです。姉者のことを。」

TVアニメ『ラブライブ!スーパースター!!』3期第4話「No Rain, No Rainbow」

 大好きな姉が夢見ては傷つく姿を、10年以上も一番近くで見てきた冬毬の苦しみは想像を絶するものでした。夏美が夢に傷つけられてきたことの証でもあるノートをあえて手元に置き、もはや呪いのようなものを背負って生きてきたなんて…。

「でも、まだ分からないよ。諦めない限り、夢が待っているのは、まだずっと先かもしれないんだから。」

TVアニメ『ラブライブ!スーパースター!!』1期第4話「街角ギャラクシー☆彡」

「決めつけたら終わりだよ。まだ未来なんて誰も分からないんだから。」
「だから…続けてもかまわないと言うのですか?ダメだったら?」

TVアニメ『ラブライブ!スーパースター!!』3期第4話「No Rain, No Rainbow」

 夢破れて傷つき続けてきたキャラクターというと、夏美のほかにまず思い浮かぶのがすみれ。1期第4話でかのんがすみれにかけた言葉を思い出させるセリフもありましたが、そんな言葉すらも届かないくらいに冬毬が見てきた現実は苦しいものでした。
 すみれも同じく妹がいるわけですが、歳が離れていることもあってか比較的さっぱりした姉妹関係という印象だったのに対して、夏美のことが大好きな冬毬だからこそ傷も深くなる。夏美が頑張れば頑張るほど、夏美が見る夢が美しければ美しいほど、いつか傷つくことを想像してさらに未来を恐れてしまう。かのんと冬毬のやり取りは短いシーンながらも、見ていてこちらまで苦しくなってしまうようなものでした。

みんなとだから向かえる未来

「私には才能がないんですの。夢を追う資格も、きっとない。」
「それは、かのん先輩に夢を叶える才能があるからです。」

TVアニメ『ラブライブ!スーパースター!!』3期第4話「No Rain, No Rainbow」

「私は、これまでたくさんの夢を見てきて、何も叶わないって分かったんですの。かのん先輩のような、夢を見ていい人とは違うんですの。」

TVアニメ『ラブライブ!スーパースター!!』2期第6話「DEKKAIDOW!」

 さて、この話を観ていて少し気になったのが、夏美も冬毬も、夏美個人が背負う夢についての意識が強いという点。2期第6話でかのんも「みんなと一緒なら夢を追いかけられる」と伝えているように、1期生の5人は特に、夢を持っている――スター性の強い個人が集まっていて、その代表格でもあるかのんが言うからこそ、夏美も冬毬もこのように言ってしまうのでしょう。夏美"個人"では夢を叶えられなかったことは事実なのですから。

 では、Liella!として過ごしてきた夏美が今見ている夢は、いつか崩れてしまうものなのか?それを突きつけるために、冬毬は夏美の夢が記されたノートを渡したのでしょう。しかし、ここで冬毬も、そして夏美自身も見落としていたことがありました。それは「夏美の夢はもう夏美一人のものではない」ということ。
 きな子・メイ・四季は、それぞれで夏美が語った夢を見ているのではなく、4人で一緒に夢見ているということ。4人でなければ見られない夢を見ている。仲間の強さだけじゃない、自分自身の弱さも抱えたうえでひとつのチームになっている――ここが1期生と2期生の大きな違いでしょう。

「オニナッツー!」「Song for All!」

TVアニメ『ラブライブ!スーパースター!!』3期第4話「No Rain, No Rainbow」

 いつもと違うこの掛け声こそが、今の夏美を、そして2期生を象徴するものなのです。自分だけの夢じゃない、みんなで見る夢のために歌っているからこそ、その先にはきっと最高の笑顔になれる日が待っている。一緒に努力して、一緒に落ち込んで、一緒に笑い合って、一緒にひとつの夢を見て。そんな2期生の強く固い絆を感じられた話でした。

もっとね 笑顔でいて欲しいから
はるか遠く目指すんだ
聴こえてくるよ さあ かけ出そう
手をつないで未来へ

未来の音が聴こえる / Liella!

 だからこそ、夏美の部屋に「未来の音が聴こえる」の衣装が大切に飾ってあったのを見て、本当に嬉しくて嬉しくて、涙が堪えられず叫びそうになっていました。夏美が目指す先には、2期生の4人で一緒に見る夢の先には、みんながもっと笑顔でいられる未来があるんだ、と。
 やっぱり私は、Liella!の夢を大きくしてくれた2期生のことが本当に大好きです。私にとって本当に本当に大切なこの楽曲を、夢見る力にしてくれてありがとう。2期生と一緒だからたどり着ける景色を、私もまた夢見ているのです。

残された時間

 第4話ではもうひとつ明らかに意識されていたポイントがありました。それは夢という未来の話をするからこそ、必ずや語らなくてはならない目の前の未来──1期生の卒業のこと。

「この結ヶ丘に、最高の歌を。最高の思い出を残したいの!」

「今度は自分が中心になって、いつかかのん先輩たちが卒業したあとも、頼られるような存在になりたいって!」

TVアニメ『ラブライブ!スーパースター!!』3期第4話「No Rain, No Rainbow」

 かのんのように1期生はもちろんのこと、2期生の4人も迫りつつあるタイムリミットを意識し始めていました。ある日突然考え始めるのではなく、青春を夢中で過ごす中で考えているところがリアルだなと感じる一方で、TVアニメ3期は必然的に1期生の卒業の話が来ることを覚悟はしていても、こうやって話題に上がるだけでも切なくなってしまいます。
 でもやっぱり、1期生が未来へと羽ばたいていくのを語ることなくして、みんながもっと笑顔になれる未来を掴み取ることはできない。限られた時間を精一杯輝こうとするスクールアイドルとして過ごす青春こそが、Liella!が出す答えにつながるはずなのですから。

 冒頭のシーンからしてこの第4話は5月頃。鉢合わせた11人を見た結ヶ丘の生徒が期待するように、残された時間でかのんが思い描く通り11人はひとつのチームになることはできるのか。3期生はどんな夢を見てLiella!として結ばれるのか。2期生はどんな覚悟でLiella!を背負っていくのか。1期生はこの結ヶ丘という場所に何を残して旅立つのか。
 話が進んでいくたびに受け止めるのが大変になっていくと思いますが、それこそがラブライブ!でなければ描けない、ラブライブ!にしかない物語。この先に最高の景色が待っていることを信じて、このTVアニメ3期と向き合い続けていきます。

きな子と夢

 チームとしての2期生にも焦点を当てた第4話ですが、個人的にはもうひとつ気になったことがありました。それは桜小路きな子個人についてのこと。

「でも、きな子、このノート見た時感動したっす!」
「感動?」
「そうっす!夏美ちゃん、こんなにたくさん挑戦してきたんだって。」

TVアニメ『ラブライブ!スーパースター!!』3期第4話「No Rain, No Rainbow」

 2期生について改めて触れる話が続いているTVアニメ3期ですが、これまできな子って根本の部分に触れられたことがあまりないんですよね。かのんに誘われてLiella!に入って活躍してはいますが、その素直さを武器にしつつも、心の奥底に何があるのかがまだ見えていないというか。
 そんななかでのこのセリフに、もしかしてきな子は、これまで挑戦することがほとんどなければ、夢も特に見てこなかったようなキャラクターなのかもしれないと気がつきました。
 思えばLiella!のメンバーって、みんな大なり小なり夢を持っているんですよね。そこが明かされていないのは他だと冬毬くらいですが、夏美の心が折れて「一才夢を語らなくなった」わけなので、冬毬自身にも本当は何かしらの夢があるのだという気がしています。

 この作品は夢の尊さを描く一方で、実際は誰しもが夢を持っているとは限らないわけで、そんななかで「夢がなかった」キャラクターはどういう答えを見つけ出せるのか。もしかするとそれは、すごく多くの人に刺さる物語になるのかもしれません。
 TVアニメ3期オープニング楽曲「Let's be ONE」では、落ちサビがかのん・きな子・マルガレーテが歌うパートになっています。ここから言っても、この先の未来できな子が重要な役割を果たすのはほぼ間違いないでしょう。きな子はどんな未来を掴もうと走っていくのか、これからの活躍も見逃せません。

その他細かいポイント

 マルガレーテは基本的にLiella!に対する興味はさほどなく、2期から通しても特に意識しているかのん以外と関わる機会はこれまで少なかったのですが、「オニなんとか」呼ばわりするのは本当に夏美に対する解像度が低いw Liella!に対する対抗心は燃やしていても、Liella!自体に対する興味はまだまだ薄いようですね。それにしても「姉はともかく」って…w

 相変わらず四季の謎発明が火を吹いていますが、夏美にあらかじめ発信機なんて仕込んでいるあたり、最近早く帰っているのを気にしていたのでしょう。そうやって理由を探ろうとする辺りが科学者肌という感じです。
 そういえば、なぜ早く帰っていたのかは今回特に触れられませんでしたが、1年生の頃にはそのような描写がなかったため、単に家が遠いからというわけではないと思います。これも今後どこかで関わってくるのでしょうか?

 2期第6話の感想で書いた、夏美の家が北関東だろうという予想は当たっていたのですが、栃木ではなく茨城ということが判明しました。LoveLive! Daysで、表参道駅で東京メトロ千代田線(常磐線に直通していますよね)を待っている冬毬のイラストが公開された時点で、茨城という可能性が高かったわけですが…(もし栃木なら通学はJRになるはず)。今思えば夏美の好物が納豆で、冬毬の好物が焼き芋というのも、茨城に絡めた設定だったんですね。それにしても牛久って…一体どういうチョイス?
 ちなみにもうひとつ分かったのが、Liella!メンバーのうち電車で通うのも鬼塚姉妹が唯一だったということ。他のメンバーはみんな近場なんですよね。遠くから来る生徒が少ないことに、結ヶ丘が始まったばかりの学校であることをなんとなく感じさせます。

と、いうわけで

 涙なしでは観られない、第4話の感想をお届けしました。え、もうTVアニメ3期の3分の1終わったの?嘘でしょ?いやマジで早すぎますって…2年待って3ヶ月で終わるのヤバいって…。
 そしてなんと、次回はまさかの上海回…だと…。ラブライブ!シリーズでは劇場版で海外に飛び立ちがちでしたが、まさかのTVアニメで早くも上海に行くとは驚きました。必然的に可可の話になると思いますが、可可といえば上海に姉がいましたね。第4話で冬毬の姉への想いを察していたというのが伏線になるのか?気になることは尽きません。
 それではまた第5話の感想で。これも渋谷でリアタイするから楽しみだけど、新しい聖地は全部上海かなーw

追伸

次回予告に全部持っていかれたんだけど(終)

エッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!

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