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再び戦う、その意味は―TVアニメ『ラブライブ!スーパースター!!』3期第9話「ザルツブルガー・ノッケルン」

 ようやくひとつのLiella!として結ばれたと思いきや、早くも第9話と佳境に差し掛かっている『ラブライブ!スーパースター!!』TVアニメ3期。サブタイトルから比較的ライトな回かと思いきや、完全にオタク各位の読みが外れる自体になりました。1期第10話の「チェケラッ!!」の再来かこれは…。予想を上回る大きな意味を持つ第9話、今回も振り返っていきましょう。

Liella!は何を目指すのか

 これは物語というよりかは、どちらかというとラブライブ!の世界の根本的な部分の話。Liella!は5人、9人、そして11人と人数が増え、そのたびに新しい姿を見せ成長してきたわけですが、人数が増えることがグループの成長に直結するかと言われると、必ずしもそうではありません。
 Liella!に限らず、グループでの活動が長くなってきた場合、新しい体制を作っていくのかどうかというのは、かなり大きな問題だと思います。例えばSunny Passionの場合、その原点は作中では語られていませんが、1年生から3年生まで体制を変えることなく、悠奈と摩央の2人のみで卒業まで活動していました。現実で考えると分かりやすいですが、部活は後輩を集めて残していくという方が自然ですから、ステージで表現するものなり、根底にある想いなり、2人である必要性にこだわってきたということでしょう。
 もちろん、2期冒頭のLiella!のように、スター性が強く後輩がなかなか入れないという可能性もあるわけですが、(少し変な言い方ですが)『ラブライブ!』のμ'sのように積極的にグループに区切りをつける理由がない限り、新たな一歩を模索しないことはないはずです。現に『ラブライブ!サンシャイン!!』では、Aqoursは新しい学校でも続けていくことに、そしてSaint Snowは理亞が新しいグループとして想いを受け継ぐことを決めたわけですからね。

 で、そこから先の難しさが描かれたのが、3年という期間を描けるこの『ラブライブ!スーパースター!!』という作品。突如表れたマルガレーテという新星にSunny Passionが敗れたように、本当に何が起こるのか分からないのがラブライブ!の世界です。同じように優勝できるとは限らない、でも変われば優勝できるかというと、2期第9話で描かれたように、変わることには変わることの難しさもあるわけで、正解なんてないはずのスクールアイドルで競うということの不条理すらも感じてしまいます。
 そしてそんなラブライブ!で勝つためには、実力的な部分はもちろん、明確に答えを持って挑むことの必要性もシリーズを通して描かれてきました。優勝が目的では勝てない世界なんです。出場している以上はみんな優勝が目的になり得るのですから。本当に求められているのは何のために優勝を目指すのか。誰も成し遂げたことのない連覇を現実にするために必要な答えは――。それが『ラブライブ!スーパースター!!』TVアニメ3期のラストまで描かれるものになっていくはずです。

マルガレーテが見つけた答え

 さて、この第9話はマルガレーテがメインの回になりました。確かにマルガレーテは全てを解決したわけではなくて、「Liella!に敗れた日を乗り越えて自分が納得できる結果を出した先に、何を目指してステージに立つのか」という問題が残っていました。もちろんウィーンに戻るためにラブライブ!で結果を出す必要があるわけですが、一方で先程述べたように、ラブライブ!優勝は目的ではなくあくまで結果。ひとつのLiella!として何を目指すのかを見つけなければ先には進めません。

 そこでヒントになったのが、ザルツブルガー・ノッケルンの作り方をありあに教えるマルガレーテの姿。これまでLiella!のメンバー、そして特にかのんにとっては、マルガレーテは「教える」側の相手でした。だからLiella!にうまく馴染めるようにしようとか、マルガレーテが気を使わずいられるようにしようとか、そういった対応が中心になっていました。しかし、Liella!とひとつになることを決断したマルガレーテが9人の想像以上の力を持っているのであれば、むしろマルガレーテの視点や発想を取り入れることがLiella!にとってプラスになる、というわけです。そうして出てきたのがこの言葉。

「技術も大切だけど、スクールアイドルには同じくらい心も大切だって。スクールアイドルにとって、みんなの心がひとつになることが何よりも大切。誰かが一人優れていても、全員の足並みがそろわないと、いいライブは生まれない。」

『ラブライブ!スーパースター!!』3期第9話「ザルツブルガー・ノッケルン」

「きっと、伝わると思うんです。大変でもやりたいことを続けていれば、その先にある楽しさは大きくなるって。みんなが一緒にやってみたいって思うものが作れるんじゃないかって!そう思うんす!」

『ラブライブ!スーパースター‼︎』2期第2話「2年生と1年生」

 マルガレーテが見つけた手がかりに、2期第2話のきな子を思い出して感情が揺さぶられますね…。後ほど触れますが、第9話だけで考えたときだけでなく、次に控えるきな子の物語の序章としても本当に素晴らしい回だと思います。やっぱりスクールアイドルって、いつだって人の心を動かすんです。
 そして、マルガレーテがもうここまで気がついてたのなら、「歌を教える」というかのんの役割は果たされたということ。そこからの答えを2年生と見つけて来いと見送るのも、最後の1年間を通じて後輩たちにバトンを託していく3年生らしい姿だと思いました。

一緒に歩んでくれた仲間から、まもなく旅立つ先輩へ。

 ただ、そのシーンがこれまでと比べ物にならないくらい感情に迫ってくるように感じられたのは、マルガレーテにとってのかのんの存在が大きく変わった瞬間だったからだと思います。「自分のことを信じてスクールアイドルとして一緒に活動してくれた仲間」だったはずが、いきなり「卒業という旅立ちが迫った先輩」になるのですから。
 今回は「かのん”先輩”」と呼ぶことこそなかったものの、過去の自分の発言がもはや恐ろしいまでありますね…。この作品本当に容赦ないって…。

 メンバー全員が1年生から始まるということは、これまでのシリーズ作品のような1年という縛りがなくなり、3年楽しめる―つまり3倍長く楽しめるのではないかと思っていました。でも、本当は違いました。確かにストーリーとしては文字通り3年間を描くことができます。しかしそれは、ただ1年が3倍になったというだけじゃない。後戻りできない青春を駆け抜けるスクールアイドルにとって、どの1年もかけがえのない大切な「いま」で、1年1年すべてが宝物のような時間なのだと。

まだ見ぬ色の未来へ駆け出す星たちを見届けて―Liella! 2nd LoveLive! ~What a Wonderful Dream!!~ with Yuigaoka Girls Band

「千砂都先輩は3年生最後の年と言ったけれど、私たち下級生にとっても、最初で最後のラブライブ!になる。理由はたった一つ。11人で優勝を目指せる瞬間は、もう二度とないからです。

『ラブライブ!スーパースター!!』3期第9話「ザルツブルガー・ノッケルン」

 第2話で「世話になる以上、相手が誰であろうとお返しするのは私のモットー。」と話してもいましたが、自分を信じて受け止めてくれた先輩たちへの恩返しこそがマルガレーテの出した答えだということに、本当に心震わされました。しかもLiella! 2nd LoveLive!を通して見つけた答えが、こんな形で作中で跳ね返ってくるとか思わないじゃん…。やっぱり『ラブライブ!スーパースター!!』が描く青春が大好きなんですよ…。

作品タイトル出すだけで感情破壊できるの本当におかしい。

 さらにそうして披露されたのが、第1話で見た瞬間に「あ、ヤバい、この作品完全に様子がおかしくなったぞ」と異様な空気を察した「Let’s be ONE」って…。オープニングがカットされた時点で何事なんだとオロオロしていたのですが、大好きを叫んで『ラブライブ!スーパースター!!』が始まった1期第1話に対して、11人で同じ方向を向いて走り始めた瞬間に最終楽章の始まるのを告げるのは本当にズルいって…。渋谷でスペース借りてオタク5人で一緒にリアタイしていましたが、全員本当に息を呑んで言葉も出ないという有様でした。衝撃的すぎた。
 それにしても1話の感想でも書いたとおり、ラブライブ!決勝で披露するレベルの楽曲なんじゃないかと思っていたんですが、これを地区大会で披露するとか本気か…。東京大会と決勝で何が出てくるのか、もう今から怖くて夜しか眠れません…。残りの話全部震えながら待っています。

桜小路きな子を描く意味

 さて、本編の時点で相当やってた第9話でしたが、その極めつけは次回予告でした。「次回、桜小路きな子。」……え?桜小路きな子?サブタイトルが?いやいやいやいやキャラクターの名前がサブタイトルになるってどういう事態なんですか?第6話以来の、いやひょっとすると第6話以上の挑戦状が来てしまったようです。もう終わりかもしれん…。

 ここで一度、第10話に先立って、桜小路きな子というキャラクターについて、ごく簡単に整理をしていきたいと思います。というのも、きな子はこれまで目立った出番が比較的少ないキャラクターに見えて、実はめちゃくちゃ重要なキャラクターでもあるからです。それは。

 桜小路きな子は、Liella!のなかで「最もフラットな立ち位置のキャラクターである」ということ。

 どういうことか。『ラブライブ!スーパースター!!』は「私を叶える物語」とあるように、メンバーそれぞれが思い描く夢を持っている物語です。3年生の5人は特にスター性が強いこともあり、かのんは歌を世界に響かせること、可可はスクールアイドルとして大好きを表現すること、千砂都はかのんを助けられるようになること、すみれはセンターで輝くこと、恋は結ヶ丘を街で一番の学校にすることと、それぞれが明確な夢や目標をもっています。
 そして2年生も、メイは大好きなLiella!の力になること、四季はスクールアイドルを通して誰かに気づいてもらうこと、夏美は一度失った夢をまた見ることを、またマルガレーテは自身の歌を認めてもらうことを目指しています。冬毬はハッキリとはしていない部分もありますが、第8話から、大好きな姉者と一緒に笑顔で夢見ること、なのではと考えています。
 さてここで問いましょう。きな子の目標って一体なんでしたっけ?

 Liella!に加わったのはかのんの勧誘がきっかけで、きな子がスクールアイドルを通して何かを成し遂げようということは、2年生の共通の目標以外でこれまでに特に述べられてはいません。そう、少なくともLiella!に加入した時点では、きな子は目立った夢や目標を持っていなければ、暗い過去も特別な才能もないという唯一のキャラクターなのです。
 こう書くとすごく軽薄なように思えてしまうかもしれませんが、決してそうではなくて、そんなきな子なりにスクールアイドルの魅力を素直に受け止められたのが2期第2話でしたし、それ以降もメンバーの支えになるシーンが散見されていて、その最たるものがこの第9話でした。

 では、きな子がメンバーとして入り、終盤のここで焦点を当てる意味は何か。それは、「何もないところから走り始めたキャラクターが、Liella!として活動する中で何を得られたのか」を描けるということ。これは背景が少ないきな子にしかできない役回りであり、この作品が描く「私を叶える物語」の完成形ですらあると言えます。「夢を持つ人だけが特別なんじゃない、夢がなくても走り出せば掴めるものがあるんだ」と言えるのは、Liella!の11人のなかできな子だけなんです。

 ここまで全部勝手に考えたことを書いているだけですが、夢を語る作品であるならばそこに触れてほしいし、もし本当に触れてくれたのならば、それは多くの人の心を掴む物語になるという予感がしています。そんな期待を持って、次回の第10話を楽しみにしています。

その他細かいポイント

 姉者とのわだかまりが解けた冬毬は随分かわいらしくなりましたね。一緒に活動ができるのが嬉しいのが伝わってきます。「動画作成しましょう、姉者!」のシーンに、鬼塚姉妹の本来の姿が垣間見えました。でもあなた新メンバー側でしょうがw

 TVアニメ3期はトマカノーテの練習場所である鳩森八幡神社が多く映し出されましたが、ようやくすみれの家である穏田神社が映ってくれました。これを待っていたんですよ。
 それにしても買い物帰りという家庭的なすみれの姿が良すぎてですねえ…!

残された課題

 さて、ざっと第9話について振り返ってみました。それでは最後に、『ラブライブ!スーパースター!!』が最終楽章に突入したことを踏まえて、残りの課題として何があるのかを整理していましょう。TVアニメ3期の残り話数も少ないため、一部はおそらくあるであろう続編に持ち越しになると思いますが、これらの点に注目して観ていきたいと思います。

きな子はどんな答えを出すのか

 これは前段の続き的なものですが、きな子が出しうる答えのヒントは3期を通して描かれてきたのだと思います。Liella!を離れるかのんに対して、「それでも寂しい」と涙を見せたこと。自らの意志を貫こうとするマルガレーテと冬毬を、思うところがあるように振り返っていたこと。そしてマルガレーテのことを放っておけず仲良くなろうとアクションを起こしたこと。
 いずれのシーンからも、「みんなで一緒に」ということに誰よりもこだわり続けてきたキャラクターなのでしょう。その一方で「みんなで一緒に」いられる期間は残りわずか。思いもよらない景色へと連れてきてくれた先輩を見送るということが、きな子にとってどのような意味を持つのか。それこそがきな子にしか出せない答えにつながっていくのだと予想しています。

決勝大会までにLiella!が出す答えは

 地区大会と同様に、東京大会や決勝大会においても、Liella!は何かしらの答えを持って臨む必要があります。11人で挑める最初で最後のラブライブ!を悔いなくやり切るという、強いメッセージ性を出した地区大会。ならばこれから、それを超えていくような答えを出していかなければならないわけです。
 この辺りはきな子が出す答えが1つ関わってくると思いますが、それでも決勝大会でどんな想いを胸に臨むのか、ということはまだ未知数です。これまで以上の答えとは何なのか、気になるばかりです。

恋の夢はどのように叶えるのか

 そんな決勝大会でひとつ鍵になり得ると思っているのが、恋の「結ヶ丘をこの街で一番の学校にする」という夢。3年で手にするにはなかなか果てしないような気もしてしまいますが、Liella!が史上初の連覇を成し遂げることは、この夢を叶えるための大きな足かがりとなってくれそうです。
 ただスクールアイドルは学校の代表ということを考えても、先述したように、連覇したから学校が素敵になるわけではなく、素敵な学校だからこそ連覇を果たせるはずです。そのためには恋が、そして学校のみんなが答えを出す必要があるのだと思います。この部分にも注目してみたいですね。

冬毬は自身の目標を見つけられるのか

 冬毬は姉者と一緒に笑顔で夢見られるようになったわけですが、冬毬自身がどうなりたいのか?というような話はまだされていません。これは少し先の話になるかもしれませんが、Liella!としての活動を通して、冬毬が自分自身の夢を見つけられたらとても素敵だなと思います。TVアニメ3期はもちろん、その後の活躍的なものにも期待したいですね。

3年生5人の旅立つ先は

 かのんと可可は将来の進路についてどうするか口に出した一方で、千砂都・すみれ・恋が何を目指すのかについては言及されていません。必ずしもハッキリさせる必要があるかは分かりませんが、夢に向かう未来を描く作品であるのならば、その部分も描くことになるのかもしれません。
 個人的にすみれの主だった出番は、真に誰かに必要とされてもらえた2期第9話で概ね完了していると思っていますが、もう一歩踏み込んだ物語があっても嬉しいですしね。

マルガレーテは今後どうするのか

 ほとんど未来の話をしましたが、ここはこの第9話でも関わってくる部分。マルガレーテはLiella!の一員として歩むことを決意した一方で、Liella!としてラブライブ!優勝を果たすことで、ウィーン国立音楽学校への推薦を手にすることができるかもしれません。そうなると問題になるのは、Liella!がラブライブ!連覇を果たしたとして、マルガレーテはLiella!に残るのかウィーンへ旅立つのかという問題。

「期間限定」の文字が心を打つ。

 最後の最後に出てきた「期間限定」のザルツブルガー・ノッケルン、やはりマルガレーテが結ヶ丘にいる期間のことを示唆しているのでしょう。ただ言えるのは、マルガレーテが「私を叶える物語」を貫いたとしても、あるいは「新しい私」を見つけたとしても、どちらも一抹の寂しさはあるし、またどちらもとても美しいということ。だからこそこの点もまた、今後の展開の大きな部分になってくると思います。

と、いうわけで

 ちょっと長くなりましたが、第9話の振り返りとこれからの展望についてざっと書いてみました。もう何が来てもおかしくない最終盤、心して続きの話を待つこととしましょう。第10話の時点で本当に怖くて震えていますが…引き続き何とか向き合っていきます。

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