花火 5

日差しはまだまだ真夏のもので、夜になっても気温はちっとも下がらない。
生暖かい風は、汗で湿ったTシャツをちっとも乾かしてはくれないけれど、
それでも少しずつ、季節が動いていることはわかる、
そんな8月の折り返し地点。
軒並みおろされた商店街のシャッターには、お盆休みを知らせる張り紙。
そんななか、僕らは無意味にはしゃぎながら、
駅から15分ほど離れたところにある公園を目指す。
あれこれ吟味して選んだ袋いっぱいの花火と、
コンビニで調達したアルコールとおつまみを抱えて。

広い公園にはすでに数組の先客がいて、
片隅のベンチには寄り添っているカップルまでいたけれど、
ロマンチックなムードをかけらも持たない僕らには、
そんなことはまったく関係あるはずもなく。
「花火は振り回してはいけません」
いい大人たちが揃いも揃って、そんな注意書きを見ないふりして大はしゃぎして。


何なんだろうね、この人たち。
ま、もちろん僕も、その中の一人なのは確かなんだけどさ。


・・・・・・
・・・・・・


僕らが手元で交互に咲かせるのは、小さな小さな花に過ぎなくて。
きれいだと思った数秒後には消えてしまうもので。


でも思ったんだ。
打ち上げ花火のような華やかさはなくたって、少なくとも僕らの足元は十分に照らしてくれる。


そんな花を、今僕らは持っている。

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yotsuba siv@xxxx
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