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ドアをノックするのは誰だ?

お題

『トン、トン、トン』
ノックの音がした。
そしてドアを開けると・・

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彼女は最近、悩んでいるようだ。
社内の仲間達には普段と変わらない笑顔を見せているけれど、僕には分かる。
失恋でもしたのだろうか。笑顔の一瞬あとに俯いた彼女の表情は、何だかとても痛々しい。
そんな彼女を見るのが辛くて、僕はつい彼女から視線を外してしまう。
何かあったの?
ストレートに聞いてみたい気もするけれど、僕にはそんな勇気があるはずもなく、
彼女は用件を終えると僕の元からすぐに立ち去って行く。
そして、そんな彼女が気になって、僕はもう、仕事が全く手につかないのだ。


今日も僕はいくつかのミスをした。
幸い、公になる前に書類を差し替えて、何とかフォローはできたけれど、僕の書類を一番にチェックする彼女だけは、そのミスに気がついたようだった。
一瞬彼女の眉間に寄ったしわを、僕は見逃さなかった。
ここ数日は、こんなことがたびたびで、残業が続いている。同じ課のせいで、僕に付き合って遅くまで残ってくれる彼女にも申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
ようやく明日の会議に提出する資料をまとめ終え、帰り支度をする彼女を僕は思い切って呼び止めた。


「もしよかったら・・・食事でも、どうですか?」
彼女は驚いたような顔で僕を見つめ、それからゆっくりと微笑んで言った。
「・・・ええ、喜んで」


会社からほど近い、当たり障りのない居酒屋で、僕と彼女は「お疲れ様」と言い合って、グラスを軽くぶつけ合った。
案外飲みっぷりのいい彼女に、僕は少し驚く。もちろん好意的な驚きだ。
少し早いペースで酒は進む。
やがて彼女は、会社とは違う一面を見せ始めた。少し言葉がくだけてくる。ほんのり桜色に染まった頬がとてもかわいらしい。
今なら言えるかも知れない。彼女の心の扉を、ノックしてみる価値はある。
上司と部下。社内だけの繋がりを、せめてもう少しだけつめることができたら。

『あの』

二人の声が、重なった。
お互い発言を譲り合った後、観念した彼女が告げたのは。

......
......

「申し訳ないんだけど、試用期間が終わったら、アナタ、契約更新はナシね」

呆然とする僕に、彼女は畳み掛けるように言った。
「実はね、ここしばらく、アナタをクビにするかどうか悩んでたの。やっぱりかわいそうなんじゃないかって。でもアナタ、最近全然まともに仕事してないでしょう。たまに企画書を書けば誤字脱字だらけだし、ミスばっかりだし。はっきり言って、全然だめなのよ。やる気もなさそうだし、試用期間が終わったら採用打ち切りってことで、いいわね?」

「そんな、課長・・・・・・」
彼女の心の扉を叩いたら、僕がノックアウト。

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yotsuba siv@xxxx
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