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【ポーカー】GTOwizardの頻度を参考に覚えやすい単純戦略のプリフロップレンジを考えてみた。


代表的なプリフロップレンジ

 これを読んでくださっている皆さんはポーカープレイヤーだと思いますが、皆さんはどんなプリフロップレンジを用いてプレイしているでしょうか?
 適切なプリフロップレンジを覚えて、それに基づいてプレイするだけで、プリフロップでエッジを出せるだけではなく、ポストフロップでも他のプレイヤーに優位に立つことができます。
 さて早速ですが、現在ネットに出回っているレンジで使っている人が多そうなものを以下に挙げてみました。

ヨコサワレンジ表

 まずは、言わずと知れたポーカーYouTuber、世界のヨコサワさんが公開しているレンジです。1枚のレンジ表を色分けすることで非常に分かりやすく、1枚でどのポジションにも対応しています。

Poker Snowieのレンジ

 次はPoker Snowieのレンジです。Poker SnowieのレンジはAI同士の対戦によって導き出されたレンジで、特徴的なのはハンドによって、一定の割合でレイズしたりする複合戦略を用いていることです。しかしながらこの数字を含めて全て覚えようとするのはかなり難しいです。

GTOwizardのレンジ

 次はGTOwizardのレンジです。複合戦略を用いていることはPoker Snowieと同様ですが、こちらはかなり精度が高いです。それだけでなく様々なシチュエーションや様々なベットサイズにも対応しています。

Zerosハンドレンジ

 最後にZerosハンドレンジです。これは海外のハイレートプロであるZeros氏が公開してくれているハンドレンジで、筆者も今までこのレンジを参考にしていました。
 特徴としては、GTOwizardやPoker Snowieと違い、「このシチュエーションでこのハンドレンジが来たときはレイズ」と単純戦略を用いていること。そしてヨコサワレンジ表と違い様々なシチュエーションに対応しているところです。

既存のレンジの問題点について

精度が高くない

 まずPoker SnowieのレンジはAIの機械学習によって導き出されているので単純な計算結果をもとにレンジを作成するソルバーと比べると相対的に精度が落ちてしまいます。そして、ZerosハンドレンジについてはPoker Snowieののレンジを参考にして単純戦略のレンジを作っているみたいなので、そちらもソルバーと比べると精度が少し下がってしまいます。その点GTOwizardは計算結果を元にレンジを作成しているので精度は高いですが、それを元に作成した単純戦略のレンジはまだ見たことがありません。

対応しているシチュエーションが少なすぎる/多すぎる

 ヨコサワレンジ表は非常に覚えやすいですが3betへの対応などシチュエーションがかなり限定的です。一方Poker SnowieやGTOwizardはかなり網羅的なシチュエーションに対応していますが、人間が覚えるには多過ぎます。その点Zerosハンドレンジはよくあるシチュエーションに対しほど良く対応していると思います。

複合戦略は人間には再現不可能

 snowieやGTOwizardにはすばらしいプリフロップレンジがありますが、それらは複合戦略であるため人間が完全に再現することは不可能です。
 例えばAAは62.1%でレイズで残りの37.9%でコールという戦略が示されていた時、その頻度を忠実に再現することは到底難しいですし、それ以前に覚えるのが難しいと思います。

レンジを作るにあたって意識したこと

レンジにある程度「一貫性」を持たせる

 一般的にはポジションが後ろになるほど強いハンドは3betできる傾向にありますが、例えば、HJからA5sは3betするけれども、COからはA5sはコール、BTNからはA5sは3betというプリフロップレンジがあった場合、 HJで3betするのにCOでコールに後退するのはこの原則に反してしまいます。それよりはA5sはHJ以降は必ず3betとした方が、原則とも合致しますし、なにより覚えやすいです。

オールインから逆算してレイズ/コール/フォールド比を考える

 例えば、3betレンジに入れることができるハンド候補(3betしてもEVロスが少ないハンド)というのはたくさんあるわけですが、それを考慮するに当たっては、その後の4betに直面した際のレイズ/コール/フォールド比を適切に実現することを重視しています。
 また、4betレンジについては、その後の5betオールインをされた時のコール/フォールド比がGTOwizard通り概ね1:1になるように構成しています。

なるべくコールをしない

 例えば、HJ~BTNから3betするレンジについては、当然コールレンジを設けても良いわけですが、あえてレイズのみにしています。
 これは、レイズすることでフォールドエクイティを期待するのはもちろんのこと、後ろからスクイーズされる可能性を減らしたり、UTGレイズ→BTNコール等のポストフロップでの学習すべきシチュエーションを減らす目的があります。
 もちろんポジションがBBの時など、コールを多用すべき場面ではきちんとコールのレンジも考えています。

ポストフロップでヘッズアップになるようにする

 ポストフロップの学習を考えた時に参加人数が2人だとpiosolverやGTO+等のソルバーで解析できますが、3人以上だと不可能です。
 したがって、「なるべくコールをしない」にも通じる部分がありますが、オープンサイズを3BBにしてポストフロップでの参加人数を絞っています。
一時期、できるだけ多くのハンドで参加したいと2BBオープンのプリフロップレンジを考えてみましたが、マルチウェイになることが多く、マルチウェイでの戦い方に自信がない筆者は、ストレスを抱えることが多くありました。

OR(オープンレイズのレンジ)

 まずはオープンレイズ(自分の前にレイズしてる人が誰もいない場合)のハンドレンジです。
 GTOwizardにおけるコンボ数を根拠に、各ポジション毎(UTG→HJ→CO→BTN→SB→BB)にレイズするハンド(青色)を単純戦略として選定しています。
 UTG OR 3bb 224コンボ
(wizard GG R&C 3x シンプル 224.28コンボ)
 HJ OR 3bb 286コンボ
(wizard GG R&C 3x シンプル 286.13コンボ)
 CO OR 3bb 380コンボ
(wizard GG R&C 3x シンプル 381.21コンボ)
 BTN OR 3bb 576コンボ
(wizard GG R&C 3x シンプル 576.77コンボ)
 SB OR 3bb 594コンボ
(wizard GG R&C 2.25x シンプル 595.79コンボ)

ROL(リンプに対するレンジ)

 レイズオーバーリンプ(自分の前にリンプしている人がいる場合)のレンジについて、残念ながらGTOwizardは現時点で対応していません。
 したがって、これについては、Zerosハンドレンジをそのまま参考にさせていただいています。
 青色はそれぞれのサイズにレイズ、緑色はチェックで止める、白色はフォールドします。

3bet(1)(HJ~BTNから3ベットするレンジ)

 次は、IP(インポジション)から3betするレンジです。本家のZerosハンドレンジでは、コールするレンジもあったんですが、今回はレイズのみとしています。
 理由はコールするハンドの種類が単純戦略として使うには少なすぎたからです。特定のボードに弱くなりすぎるor強くなりすぎてしまい、フロップ以降のアクションにおけるバリューorブラフレンジの構築が難しくなってしまう弱点がありました。
 例えば、以下の画像はZerosハンドレンジにおいてBTNがEP=アーリーポジション(UTG,HJ)に対して3betを行うレンジを示したものですが、コールのレンジがAQs,QJs,JTs,AQo,TT,99,88とかなり限定的です。これらのレンジでコールした場合、Qハイボードの時にはかなり強いですが、逆にAハイボードやKハイボードの時には強いハンドが存在していないのでレンジとして極端に弱くなってしまいます。

 そこでGTOwizardを探したところ、シンプルにレイズだけするレンジがありましたので、それを参考にしました。

 シチュエーション:総コンボ(3Bet/all-in・3Bet/C4Bet・3Bet/Fold4Bet)

 HJvsUTG 3Bet 8-9bb:98コンボ(18・44・36)
 (wizard NL500 3x シンプル:96.81コンボ(19.34・41.41・36.06))

 COvsEP 3Bet 8-9bb:116コンボ(18・58・40)
 (wizard NL500 3x シンプル:118.35コンボ(17.88・60.1・40.37))※COvsHJを代表値として用いています。

 BTNvsEP 3Bet 8-9bb:134コンボ(22・52・60)
 (wizard GG R&C 3x シンプル:134コンボ(24・50・60))
※BTNvsHJ このシチュエーションではレイズだけのソリューションが存在しなかったため、
(レイズ115.47コンボ) + (コール37.57コンボ) / 2 ≓ 134コンボ
と便宜的にレイズの頻度を算出しました。

 BTNvsCO 3Bet 8-9bb:168コンボ(28・66・74)
 (wizard GG R&C 3x シンプル:166コンボ(26・68・74))
※当該シチュエーションでもレイズだけのソリューションは存在しなかったため、頻度は概算で算出しました。概算の方法は前述の式のとおりです。

3bet(2)(SBから3ベットするレンジ)

 SBはポストフロップに進んだとき、どんな相手に対してもポジションが無く不利なので、レイズで参加することがほとんどで、プリフロップでコールで参加することは極端に少ないというのが一般的です。
 レンジを構築する時に意識しているのは、(3Bet/all-in・3Bet/C4Bet・3Bet/Fold4Bet)の割合を調整するというゴールを見据えた上で、最初の3betのハンドを選出していること、また、5betAll-inのレンジの中にも、A5sやA4sのようなブラフハンドも極力入れてバリューに偏りすぎないようにすることです。(ブラフハンド入れられない時もありますが...)

 シチュエーション:総コンボ(3Bet/all-in・3Bet/C4Bet・3Bet/Fold4Bet)
 SBvsEP 3Bet 9-10bb:100コンボ(28・20・52)
 (wizard GG R&C 2.5x シンプル:102コンボ(26・24・50))
※SBvsUTGとSBvsHJのコンボ数を平均した数値を用いています。

 SBvsCO 3Bet 9-10bb:134コンボ(40・24・70)
 (wizard GG R&C 2.5x シンプル:135.33コンボ(37.92・26.76・70.66))

 SBvsBTN 3Bet 9-10bb:186コンボ(48・46・92)
 (wizard GG R&C 2.5x シンプル:184.93コンボ(46.01・51.6・87.31))

3bet(3)(BBから3ベットやコールするレンジ)

 BBはすでに1bbをブラインドで場に出しているため、コールに必要な追加投資が少なく、コールの頻度が大きいです。SBなどと違ってレンジ全てレイズで入ることはできません。
 また、相手のレイズ額に応じてコールする範囲は変わってくるので、今回はよくあるオープン額である、3bb,2.5bb,2bbを調査対象としています。その分暗記するのが難しくなっていますが、そこはご了承ください。
 BBvsSBについては、BB側がポストフロップ以降のポジションが有るため、SBからの4betに対して強いハンドをほとんど降りることがありません。フォールドするレンジが無いということは、言い換えれば3betしなさすぎということになりますので、本来であればコールとフォールドの狭間にある弱いハンド(A5o~A2o,K8o,K7o,Q9o,J3s,J2s)を3betレンジに入れています。

 BBvsUTG 3Bet 12bb

 BBvsHJ 3Bet 12bb

 BBvsCO 3Bet 12bb

 BBvsBTN 3Bet 12bb

 BBvsSB 3Bet 9bb
※vs2.5bbとvs2bbはZerosハンドレンジを参考にしています。

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