映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」感想

 アマプラに来ていたので視聴。前評判はかなり良くて、去年の界隈での人気っぷりはグリッドマンと同格だったので割と期待してた。

 ストーリーはよく出来てると思う。戦争の階級主義的側面に目付けして、田舎の悍ましい因習とその結果としての怪異、グロテスクに殺される人々という、金田一シリーズに代表されるオーソドックスな怪奇モノの段取りをしっかり押さえている。ラストに鬼太郎が産まれてきさえすればいい企画で、そもそもの自由度が高かった(ほぼオリジナル作品)のがよかったのかも。水木プロもガッツリ話に関わってるらしいし。

 ただ誤算だったのは、時代が令和になるにあたって、鬼太郎シリーズのアニメの絵柄もずいぶんPOPになってしまい(また、そもそもの画質も上がってしまい)、画に怖さが無くなってしまったこと。スクリーンで観てないからかなぁとも思うけど、どんだけグロテスクな死に方しても全然怖くないし、妖怪も全く悍ましさを感じない。一番顕著なのが終盤の翁で、本来めちゃくちゃ不気味でグロテスクな描写のはずなのに、絵柄のせいでどこかコミカルにすら見えてしまう。その状態で長々と語るから、不快感はあれど怖い、という感情にはついぞ一度もならなかった。

 怪奇モノで怖くないとなると、じゃあこの映画って何なんだよ? ってなっちゃうので、いい脚本だと思うけど、面白かったかって言われると首をひねってしまう。スクリーンで観るべきだったかもしれない。いやー、でも、スクリーンで観ても翁のところは怖くないと思うなぁ。

 同じアニメ映画でも「犬王」に出てくる怪異はちゃんと怖かったから、アニメが駄目って訳でもないんだろうが……ただ、あちらはちょっとしか出てこないんだよね。今作の妖怪は結構長く出てくるから、やっぱり実写じゃないと無理だったのかも。

 全体的に、実写ならなぁ、という印象が強い映画だった。あるいは、ザ・アニメって作風の東映アニメーション制作じゃなかったら、ちゃんとホラーな映画になってたかもな。

 余談:なんか全体的に早口だな、と思ってたら、どうやら昭和のしゃべりの再現として狙ってやってるらしい。ギリギリのバランスだと思うけど、個人的には失うものの方が大きい選択だったと思う。

 8/23追記:どうやら怖くないのは監督の本意ではなかったらしく、真生版と題したR15バージョンが出るらしい。同じ映画は二度観ない主義なんだけど、自分の感想がまぁまぁ的を得ていたっぽくてちょっと嬉しい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?