【おはなし】チャリンチャリン太郎 #毎週ショートショートnote
チャリンチャリン太郎は、10歳の時に銀行のキャンペーンで当選した、マスコットキャラクター型の貯金箱だ。高さが100センチある。
15年後に20万円貯めると設定した。15年経過するか、20万円貯まるまでは開けることができない。
お金を持っていくと、パクリと食べる。そして「すごい。頑張ったね」と声をかけてくれる。
そればかりかお金を狙うやつには容赦なく攻撃もする。
ギャンブル狂いの父親が壊そうとして酷い目にあわされたのを知っている。
こいつは貯金箱であり、警備員であり、友達でもある。
最近はチャリンチャリン太郎を磨きながら晩酌をするのが楽しみだ。AI搭載で会話も可能。
満期がもうすぐというある日、アパートに帰るとチャリンチャリン太郎が倒れていた。首の部分から配線が飛び出てちぎれている。
胸のモニターに文字が流れている。
「大丈夫。一週間後には開くよ。今までありがとう。」
部屋の奥には感電した父親が気絶していた。
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