【おはなし】 立方体の思い出 #毎週ショートショートnote
この時期になると嫌でも思い出す。潰れた立方体の山を。
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サークル主催の新年会は毎年盛り上がる。
今年は実行委員会に入った。お目当ては智也だ。
テーマは近未来の年明け。
室内は宇宙を思わせる装飾。
参加者は各々「未来人」のコスプレをする予定。
私は智也と一緒に大小の立方体の段ボールでロボットを作った。
近未来にロボットは必須。
新年会前日、一人買い出しに出た智也を驚かせてやろうと誰もいない会場で段ボールのロボットに入った。
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人の気配がする。
入口から手をつないだ智也と茜が飛び込んできて二人はキスをした。
え…?
体に鈍い痛みが走る。
立方体は潰れ、驚いた二人の顔が上から私を覗き込んでいた。
翌朝、私はグループLINEに体調が悪いから行けないと送信して再び布団をかぶった。
夕方、LINEを覗くと一枚の写真が目に留まった。
潰れた立方体が山積みにされている。
立て看板にはこう書かれていた。
「墓場」
私はふっと鼻で笑い再び布団をかぶった。
(408字)
今週も、こちらの企画のお題に挑戦しました!
いつもありがとうございます。