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SPOTLIGHTを辿って。

(写真引用:Musicman

はじめに

「まだ見ぬ世界」は、圧巻だった。@onefiveの5か月間の鍛錬と、成長。そして、技術、表現力、フィジカル、チームワーク、様々な面での、彼女たちのポテンシャルがはっきりと分かるパフォーマンスだった。このクオリティが、恐らく@onefiveの ”基準” となるのだろう。それは、彼女たちの表現の未来が、僕たちの想像を軽々と超えていく可能性を示している。
https://note.com/officialonefive/n/nad9f57488c22?magazine_key=med92aaf89451

これは2020年12月、@onefiveのオンラインライブ『Blue Winter 2020』のライブレポート募集企画に寄せたテキストの中の一文だ。新しいグループとしてのスタートが想像もしなかった災厄と重なり、様々な社会的制約の影響も受けながら活動を進めて来た@onefiveが、初めてのイベントをオンラインというスタイルで実現させたのは2020年7月のこと(『「まだ見ぬ世界」リリース記念トーク&ライブ』)。それからおよそ5ヵ月後、2020年の活動を締めくくる形で開催された『Blue Winter 2020』の最後の一曲のパフォーマンスを観て、僕が感じたことを素直に書き起こした拙い文章である。

7月の「まだ見ぬ世界」のイベントがどのような形で準備されたのか詳細を知ることは出来ないけれど、当時は外出・対面・発声に対する制約が現在(2022年11月)よりもずっと厳しかった時期であり、短い期間でのレッスンは困難を極めたのではないかと想像できる。僕たちも "動く@onefive" を見られる事自体が奇跡的であると充分に分かっていたし、あの時は、オンラインでもフルで披露できる楽曲が2曲でも、とにかくイベントが開催されるということが最も重要だった。ただ、マイクをしっかりと握る4人の生の歌声が、配信の音声の中でほとんど微かにしか聞こえて来ないことに少しばかり寂しさを覚えたのも事実だった。

『Blue Winter』が始まる直前まで、心のどこかにほんのちょっぴり不安を抱えていた。彼女たちのパフォーマンスはとても楽しみだけど、きっとこのライブでグループの「歌」に対する考え方がはっきりと分かるだろう。もし、それが自分の望まないようなものだったら…。7月は歌の完成度を高めるのが間に合わなかっただけと信じていても、そんな思いを完全に消し去ることが出来なかった。けれども、ライブ冒頭の「Pinky Promise」のパフォーマンスが始まった途端に、その不安は簡単に吹き飛ばされた。まだまだ力強さは足りなかったものの、イヤホンを通して、僕の耳には彼女たちの生の歌声、ほんものの息遣いがしっかりと届いたのだ。

このライブではピアノ伴奏のみのアンサンブルという誤魔化しの利かないパフォーマンスも披露されたし、一方でマイクを持たない表現方法という選択をした時に彼女たちがどれほど魅力的に躍動するかということもはっきりと示された。初めてのイベントから5ヶ月を経て、グループが明らかにパフォーマーとしての立ち位置を確かめようとチャレンジしているのを感じた。そしてライブの最後の曲、@onefiveのパフォーマーとしての底力が爆発した「まだ見ぬ世界」が、僕はグループのライブパフォーマンスのスタンダードになると思い、冒頭に引用した一文を綴ったのである。

「雫」を例に挙げたが、その他の楽曲でも、彼女たちの為に編まれた音と紡がれた言葉を、彼女たち自身も携わって創ってきたパフォーマンスを、納得するまで突き詰めて表現する姿は、それだけで@onefiveの個性として見る者に大きな衝撃を与えるほどのものになっていると、僕は3回の公演を体験して思った。
https://note.com/poka_syuuu/n/nee7ee1e49054

そしてこれは、2022年3月の『@onefive 1st LIVE -1518-』渋谷公演について書いた記事に綴った一文。観客が居る会場で@onefiveのフルライブを観るには『Blue Winter』から更に1年以上の時間を待たなければならなかったが、そこで目にした、体験した@onefiveのパフォーマンスは、僕がスタンダードになると感じたあの「まだ見ぬ世界」の質や強度、会場を巻き込むような勢いが正当に進化したと感じられるものであり、パフォーマンスにおいて自分が求めるものと@onefiveチームが目指すものの解釈が一致していると(勝手に、あくまでも勝手にであるが)思えたライブの全編であった。それは端的に言えば「良い楽曲をしっかりと歌いながら良いダンスを魅せる」という誠実で愚直で、ともすれば地味にも思えるような姿勢であり、志である。

『@onefive LIVE SPOTLIGHT』の事を書くのに何故こんな回りくどい書き出しをしているのかと言うと、結局のところ、@onefiveはブレていないということをまず記しておきたかったのだ。「表現」を受け取って何を感じるかはどこまでも受け手の主観に委ねられるので、ここに連ねる言葉はあくまでも僕が見てきた@onefiveの姿を通して何を感じたかに過ぎないのだが、彼女たちの、チームの、パフォーマンスに対する根本的な姿勢は、デビュー以来一貫してブレていないと僕は思っている。


現在地と未来図

最新の@onefiveを魅せる場であると同時に、メジャーデビューの報告と祝福の時間という位置づけもあった『LIVE SPOTLIGHT』でも、当然その姿勢がブレることはなかった。ライブで奇を衒った演出やサプライズは見られず、夏よりも更に良くなった歌と良くなったダンスが舞台の上で混ざり合って上質な表現に昇華し、自信に満ちた笑顔と声のコンタクトでフロアは熱気に包まれる。言葉にするとただそれだけのことになってしまうが、そういう真っ当な、愚直で誠実で、だからこそ強固な@onefiveのパフォーマーとしての基本姿勢があらためてはっきりと示されたライブだったと思う。

梅田、恵比寿ともに、ステージの始まりを告げる楽曲として選ばれたのは「雫」であった。ライブ前には「1曲目から@onefiveの世界に引き込まれるセットリスト」という言葉もあったし、メンバーがいちばん@onefiveらしいと公言する「雫」でライブをスタートするという選択は、この楽曲のパフォーマンスにかなりの自信を持っていることの顕れなのだと感じた。実際に、「雫」は@onefiveの楽曲群の中で最もパフォーマンスの難易度が高くかつ芸術性も高い一曲であると思われるが、4人の体力が削られていないライブ冒頭に披露されたこともあって、ほぼパーフェクトと言って良い出来栄えだった。激しい立ち位置移動の動作と繊細な表現を両立させながら、歌声はほとんどうわずる事も無く、凛然と響き渡った。

歌声という事で言えば、今回のライブシリーズでは@onefiveの「歌」の成長に言及する人がとても多かったように思う。僕自身もライブ全体の印象として、歌の存在感が今までよりも格段に増したと感じた。「雫」はもちろん、ライブ中盤のメロウな時間を彩る「缶コーヒーとチョコレートパン」、「Just for you」ではピアノの演奏が無い分だけ4人それぞれの個性的な表現とハーモニーの美しさのどちらもが際立っていたし、"エイベックスの大先輩の曲"として紹介された「BOY MEETS GIRL」(TRF)も、4人の勢いある、だが丁寧な歌唱によって、ライブを盛り上げる為の演出に留まらずしっかりと満足感をもたらすパフォーマンスになっていた。更には「Underground」だ。歌うことを想定しない振りを付けてしまったとメンバー自身が語るほどの、"あの"「Underground」が、ダンスの鋭さと激しさはそのままに強く確かな歌声を聴かせる楽曲に進化していたのには、正直に言って驚きを隠し切れなかった。恵比寿の公演で、マスクの中で小さく「凄い」と呟いたのを覚えている。「雫」や「Underground」、或いは「まだ見ぬ世界」で見せた強度、逞しさ、フィジカルの強さは、@onefiveがパフォーマーとして新しいレベルに進んだことをはっきりと示していた。

セットリストは2公演で変わらず、構成からは@onefiveがこのライブでファンと何を共有したかったかが透けて見えた。"魅せること"に集中する冒頭の「雫」と、中盤の「缶コーヒーとチョコレートパン」~「Just for you」のブロック。対して「未来図」を除く全てのアップテンポな楽曲でフロアへのアクションと呼びかけがあり、ウォームアップに慣れてきたファンたちはより一層気持ちよさそうに身体を揺らしながら、手拍子や仕草で4人の声に応える。単独公演では初披露ながら見事にフロアを熱気で包み込んだ「Tap!Tap!Tap!」もライブにおける新しい武器になると感じたし、とにかく「一緒に楽しもう」というメッセージがフロアに投げかけられることが多かった。息を吞むほどの繊細で鬼気迫る表現と、思わず笑顔がこぼれる親しみやすい楽しさ。その2つが違和感なく同居するのが@onefiveのライブの特徴であり魅力なのだと以前の記事でも書いたが、『LIVE SPOTLIGHT』では観客を巻き込んで楽しませるエナジーが更に増し、要所で見られる気高い表現とも滑らかに溶け合って幸福な空間を創り上げていた。初めての有観客ライブからフェスへの出演を経て、挑戦し、掴み、反省し、修正し、また挑戦するというサイクルを重ねた経験を、@onefiveはライブアクトとしての実力にしっかりと結び付けている。

「未来図」のことを書こう。「未来図」は、間違いなく『LIVE SPOTLIGHT』における最大のハイライトだった。セットリストの中の配置も完璧だったし、4人のこの楽曲にかける気迫、魅せたいと思っているものへの確信がはっきりと伝わるパフォーマンスだった。辻村有記によるトラックはこれこそ@onefiveという爽やかな疾走感に溢れていて、これまでの楽曲に比べれば"崩し"が少なくストレートな印象。それが4人の歌声とダンスをダイナミックに、直接的にフロアに伝えることに繋がり、ライブでこそ輝く曲なのだと感じた。手脚を大きく使った振り付け、マーチングバンドを思わせる立ち位置移動やアイリッシュダンスのようなステップ、曲線的で艶やかな身体のうねりなど新しい表現を取り入れながら、やはり歌に込められた想いは強く、確かに、会場の隅々にまで届いた。梅田、恵比寿どちらの会場でも、イントロから自然発生的に起こったフロアのクラップは、舞台の上の4人を鼓舞するかのように最後まで途切れることはなかった。ファンが表現者に期待をしていること。表現者が示した答え。ライブコンサートという場においてそれは特別なことではないのかも知れないが、それは美しい時間だった。そして、@onefiveがどんな表現者になりたいか、なろうとしているかを象徴するようなパフォーマンスだった。

@onefiveのライブでは、4人が一つになって放つエネルギーと共に、1人1人のカラフルな個性も観る者を魅了する。相変わらず「とても緊張している」と正直な気持ちを吐露したKANO。だが彼女は今までのライブと比べてもより楽しそうに、溌剌と躍動していた。緩急を織り交ぜた歌は多彩で、ダンスでは持ち味のダイナミズムに加え振り付けの細部にまで神経を使った表現も目を惹き、指先が描き出す表情も見事だった。元気いっぱいの掛け声で会場を盛り上げる場面も多く、フロアを"煽る"彼女の大きな笑顔を目の前に見て声を聴きながら踊ることは、ライブでしか味わえない幸福だと思った。SOYOはライブ全編を通して常にキュートで、一つ一つの挙動から可愛らしさが溢れていた。曲間のトークは勿論、パフォーマンス中のちょっとした仕草も表現のアクセントとして輝く。ファルセットもしっかりと聞かせる歌声、しなやかで力強いダンス、楽曲ごと場面ごとに切り替わる豊かな表情。表現者としての抽斗が多く、見ていて飽きないどころか、情報量が多くて、全てを記憶しておきたいのに次々と現れる新しい魅力に上書きされていってしまう。観客とのコミュニケーションでは、意識してフロアの奥や端の方に視線を送り「見えているよ」と言うように手を振る姿が印象的だった。

GUMIは、4人の中で最もパフォーマーとしての変化と進化を見せてくれたと言っても良いかも知れない。今まで以上に思い切りよく大胆になったダンスには目を瞠るものがあったし、言葉の一つ一つから揺るぎない自信と決意が感じられた。彼女は聡明で勇気ある人だが、これまでは慎重で奥ゆかしい一面(これも彼女の魅力である)が目立つことも多かった。やはり『LIVE 1518』以降、創り上げた表現に対する反応を直に受け取ることができたのが、彼女の自信に繋がったのだと思う。そしてライブ後に多くの人が口を揃えて絶賛した、GUMIの歌。真っ直ぐに響いて素通りできない存在感を放つほどになってきている彼女の歌声は、間違いなく@onefiveの表現の軸の一つである。MOMOの強さである「伝える力」は、このライブでも存分に発揮されていた。テレビドラマで本格的な演技を見る機会ができた今、あらためて実感するが、ライブにおける表現でも彼女の「目」が伝えてくるものはとても濃密だし、歌声の繊細な響きも心情の機微をしっかりと訴えかけてくる。特に「未来図」での表現力豊かな歌唱は楽曲のイメージを膨らませ、グループとしての新しい表現領域の可能性を感じさせた。2回の公演でMCをリードし、恵比寿ではとてもエモーショナルな言葉で@onefiveとしての溢れる想いを観客に伝えた。歌とダンスだけでなく、その時、その場所でしか生まれ得ない彼女の「言葉」を受け取ることも、ライブの醍醐味の一つなのだと感じた。


「メジャーデビュー」というグループにとっての大きな節目と重なっていた『LIVE SPOTLIGHT』では、MOMOだけでなく、KANO、SOYO、GUMIからもそれぞれの想いが込められた力強い言葉が聞かれた。そして、受け手である僕も、どうしたってメジャーデビュー以降の彼女たちの未来図に思いを馳せてしまう。冒頭から書いてきたように、@onefiveはデビュー以来、幾つもの困難に見舞われながらも、表現に対する姿勢を変えることなく、階段を一段ずつゆっくりと登るように歩みを進めてきた。突然に大きく様変わりしてしまったエンターテインメントの世界を生き抜いて行くのに何が正解なのか、という答えを出すのは今はまだ難しいのかも知れないが、少なくとも彼女たちは分かり易さや即効性に頼らず、表現者としての基礎を固めることに粘り強く挑んで来た。『LIVE SPOTLIGHT』は@onefiveが2年半の時間をかけて地道に、確かに積み重ねてきたものの結実であり、彼女たちが立つ揺るぎない現在地である。

一方で、これからは少し違った視点で更に広い世界にグループの魅力を訴求していくことも必要になってくるのだろう。「名を知ってもらう為の活動」に注力するというよりも、あくまでも表現や作品を通じて@onefiveと言う存在を知ってもらうこと(その意味で、ドラマ「推しが武道館いってくれたら死ぬ」との出会いは本当に幸運だった)。それが大切なのだと個人的には考えるが、とにかく今まで彼女たちのことを知らなかった人たちがその魅力に気付く機会が増えれば嬉しい。

恵比寿ガーデンホールのフロアには後方まで人が入っていたものの、まだまだスペースに余裕はあった。まずはあの規模の会場が立錐の余地もないほどに埋まるような状況を作りたいし、今の@onefiveのポテンシャルであればそれだけのファンが、いやもっとたくさんの人が彼女たちの魅力を受け取って然るべきだ。おかしな表現になってしまうが、今の@onefiveは例えれば "非常に泉質がよく湯量も豊富な温泉に少人数で浸かっている" ような状態だと思う。彼女たちが放つ陽のエネルギーは、(大げさに言えば)それを受け取った人を"救う”ことができるような、とてもスケールの大きいものだと今回のライブで実感したし、それを現在のファンの規模で独占しているのはある種の罪だ。世界平和に繋がるとまでは言わないけれど、@onefiveのことを知る人が増えれば増えるほど、世界には「幸せな人」が増える。それは間違いない。

2022年11月現在、@onefiveの4人は年が明ければ大学受験が目の前という状況にいる。学業と芸能活動の両立が必要な中、僕の想像以上に幅広い場で活躍をして、見るたびに様々な喜びを与えてくれる彼女たちには本当に感謝しかない。まずは彼女たちが進路についての望む結果を手にする事を心から祈り、そしてその後の近い未来に、@onefiveの歌と踊りで、姿と声で、幸せになる人が今以上にたくさん増えることを楽しみにしている。

(2022年11月27日)


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