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チャイルドZ

         

                               Mikio 作
1 野球

 私は人一倍人見知りだ。それに加えて、ADHD人特有の反芻が常時加速している。そう。私は、定型発達人には理解できない、一生治ることのない、地球最強のハイパータフネスマジキチ疾患を患っているのだ!喰らえ、闇の勢力グワシっ!ワハハハ(白目)。そんなテロリスト気質の私は、小学生時代のある日のこと。保育園来の友人クライム・タカトに誘われ、突然野球を始めようと思い立ったのである。それまで、好きなように絵を描くことに力を入れ、創作活動を行うタイプだったのだが。断れない性格なので仕方がない。やれやれ。ついに、あの作業興奮または運動興奮と呼ばれる、身体の力を、思う存分試す時が来たのだ。と謎のエネルギーに満ち溢れた解釈を行った。私はとにかくひたすら、「野球やりたいなぁ~」と志望動機を深く考えずに思った。すると、理由が分からぬまま「申し訳ないんだが、すごく野球やりたい。ここはひとつ頼む」と唱え始めた。そのようなマントラを唱えたついでに、親にも語りかけたのだった。そして、まんまと野球道具を手に入れることに成功した。某のび太くんと同じ手口だ。問題は、ない。

 問題はここから。マッチョで若々しいクライム・タカトは微妙に年上からモテる男だったので、素質だけでエースピッチャーに成り上がった。一方、当時は座りたい人で、顔が割りと無表情の私が皆の信頼を得るには、少々工夫が必要であった。座ったままでいいポジションで、しかも守備の時は冴えない顔面を隠していられる。この2つの利点を兼ね揃えているのはキャッチャーだ。同級生がなかなか地味なキャッチャーをやりたがらない中、闘将吉濱監督が私に目を付けた。「君は球を怖がらない、キャッチャー気質だね」と太鼓判を押したのだ。だがしかしそれは、「この程度の痛みなら、下手によけて、吉濱に大声でしかられる方がおそろしい」と、下を向いて座り込み、球を取りに行くのを諦めていたからなのだよ。もっとおそろしいことに、下を向いて諦めることで、あら不思議。楽々パラレルワールドを選び、自動的に守備位置まで手に入れてしまったのだ。なんということだ!なんやかんやしているうちに私は、クライム・タカトとバッテリーを組むことになった。さー、皆さん。いよいよデビュー戦だ。みんな、い、いくぞー!尚、セカンドのペドロとかその他の者は、吉濱監督に「とにかく得点を与えんじゃねーよ!」と渇を入れられ、野に放たれた。

 さー大変だ。私の世代はJリーグが全盛期。野球をやっている同級生が極端に少なかったこともあり、「レギュラーとして公式戦のグラウンドに立つ」という目標までもが、何かしらの力で結構簡単に達成されてしまっていたのだ。そういった運要素も悪魔合体。現実にぞっとしてしまった。同時に、ここに来て、「これはまずい流れなんじゃないかなぁ〜、逃げたいなぁ〜」と思わずにはいられなかった。相手チームは、いかにも根性がありそうな定型発達人のメンツが勢揃い。彼らは、試合前だというのに大声を上げ、我が吉濱軍を威嚇している。ほらほら〜、もう嫌な予感。すると次の瞬間、遠転移が起こった。我が軍のキャプテン、ぺっち王子が、じゃんけんでしっかりと負けてしまったので、後攻に回ることになってしまった。あろうことか、超合理的先制攻撃を仕掛けることに失敗した。我が吉濱ベイスターズの選手は守備に就き、私は渋々キャッチャーデビューを果たした。

 まもなく、ピッチャーとキャッチャーがボール遊び→内野手が絶妙のタイミングでエラーを犯した途端に→外野に一発ぶちかまされ→キャッチャーである私の目の前を相手達が次々と左から→右へ→ホームイン!するニトロ・マイクロフォン・アンダーグラウンド現象が起こった。思っていたそれとは明らかに違う、凄まじい得点の重なり具合。今日はこんな立派な防具などいらないのではないか、との疑問を抱くも、ゲームは時とともに着実に、残酷に進行していった。ちなみに相手チームは、埼玉原発バファローズだったと思う。

 3分で味方は攻撃を終え、30分かけて相手の猛攻を受け続ける、手加減なしの地獄のような試合展開。さすがのキャッチャー志望の私も、座るのも、キャッチャーの面を被ることすらも、とっても、とっても辛い。スポーツしてるのに鬱々とした気分になってきた。(ぴえん)こうなると、吉濱ベイスターズサイドは、普段の凹凸症候群が更に勢いを増すばかり。サインも、バットを振ることも、やることなすこと皆忘れてしまう。これには吉濱監督も保護者も、申し訳ないが目を覆っていただくしかなかった。おまけに、私はこの日の打席の記憶がいっさいない。本来であれば、相手の球を見極める時間も存在するはずだが。注意機能の乱れから来る、「見ちゃダメ」案件だったのかもしれない。

 そんなことをくり返しているうちに、完全に日が暮れてしまい、周りの景色までよく見えない状況になってしまった。幽界冥界の存在がすぐ側にいそうな暗闇の中、足を組んだままフリーズしていた吉濱監督がとうとう動いた。

「降参!」

 とうの昔に吉濱ベイスターズナインが見るのもうんざりしていたスコアボードには、

 32−1

と記されていたのである。大事な初の公式戦の途中で降参するという、吉濱ベイスターズチームの歴史上初の珍事。いや、それよりも、「いつの間に、誰が、どうやって1点をもぎ取っていたのか」という驚きが勝っていた。これがもし0点に終わっていたら、、、私の記憶からこの綺麗なスコアボードの数字が、跡形もなく抹消されていたに違いないと思う。ねぇ、大砲kakeruっち、何か言ってよ?
kakeru「え、聞いてなかったです!何ですかー!?」
終わりだー!!

エピローグ

 打席でサインを忘れてしまうキャッチャー志望の少年の現在。見るのも、聞くのも、察する能力もいまいちなので、紙に書いている小生は自称インディゴチルドレン。皆様、いかがでしたでしょうか?0点でなければ次にお進みください。あっ、そう言えば私、フニフニ暦のラッキーナンバーは0番です。
kakeru「頑張ってください!」






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