友達の単独ライブを制作した話
2024年9月11日 水曜日 晴れ
絶好の単独ライブ日和だ。
18時20分
30人以上の観客が次々と広いホールに入ってきて、だんだんと賑やかになっていく。
音の反響がどんどん無くなっていくのが舞台裏からでもわかる。
会場内には開演前BGMとして、
スーパーカーの「cream soda」が流れている。
私が日本のシューゲイザーを中心に構成したプレイリストだ。
裏方とはいえ、ライブ本番への緊張で背すじが伸びる。
演者の2人はもっと緊張しているのだろうか。
18時35分
開場ギリギリまで直らなかった機材トラブルもなんとかなり、プレイリスト最後の曲がかかる。
きのこ帝国の「ロング・グッドバイ」が終わると同時に開演の予定であったが、時間が押していたため、1曲前、カネコアヤノの「タオルケットは穏やかな」を開演前最後の曲に変更。
裏方と演者に伝え、ライブのOP映像をプロジェクターに映す準備をする。
いよいよ始まる。友達の単独ライブが。
2024年6月某日 たぶん晴れ
大学の部室棟、お笑いサークルの部室で私は友達に言った。
「単独ライブやったら?」
友達はお笑いサークルで1年生から4年生までの間
漫才のコンビを組んでいた。
一期一会のコンビが多いお笑いサークルの中でかなり珍しい、ご長寿コンビだ。
サークルの中で、先輩後輩だれもが彼らの面白さを知っていた。
ランキングのある学内ライブでも数多く結果を残し、
外部のお笑いライブでも活躍する彼らは、次のライブのための打ち合わせをしていた。
彼らの漫才の一番のファンとも言える私は、夢への一歩目として、コンビに作家としてつけてくれと頼み、了承された。
そんな私が彼らにした単独ライブ開催の提案、元々その予定だったかのようにあっさりと了承され、私は制作を担当することになった。
我ながらなんて向いているんだと思う。
彼らの単独ライブについて思考している時が一番楽しい。
すべてをわすれて熱中できる。
フライヤーを制作し、コンビのSNSも運用し、開演前BGMのプレイリストを作る。
OP動画を撮り、幕間の映像を撮り、ひたすら編集する。
照明・プロジェクター操作用のキューシートを作り、
自らが担当する音響操作の練習を繰り返す。
こんなに楽しいことは無い。
時間を忘れ、ぐんぐんとのめり込む。
2024年9月11日 水曜日 晴れ
19時25分
会場内、鳴り響く拍手。
外で強い雨でも降っているのかという気になる。
幕間映像3本を挟み、5分ほどの漫才6本を披露し、35人以上の観客の歯を一時間むき出しにさせ続けた2人の後ろ姿をみて、
私は「ほら見たことか」と思った。
彼らの一番のファンである私が作家につけば、
彼らの魅力を一番引き出せるに決まっているのだ。
少ない裏方の中で、制作のすべてを担当した私のことを、カーテンコールの中で少し紹介してもらえたりもした。
あたたかい拍手に、思わず気持ちがほろほろになる。
拍手と、本番をやり遂げた安心感でほろっほろに解けた緊張の糸をいちおう結び直して、お客さんのお見送りをする。
来てもらった友達との交流や記念撮影などを済ませ、ホールの鍵を管理人に返したとたん、なんだか長い夢から覚めたような気になった。
こんな日々を送らせてくれた2人には感謝しかない。
できたらこれからもこんな思いをさせて欲しいというのが、私の希望であり、ライブの構成作家になるという夢への道標になるのだと思う。
このコンビにはこんなにも良い作家が付いているし、
私はとてつもなく良いコンビに付くことができている。
胸を張って言える。
友達の単独ライブを開くと、もう諦められなくなる。