聴こえる人と聴こえない人が一緒に働く職場での気づき 〜その8〜
うすいさーん。
うすいさん。
名前を呼ばれる時、私の耳には入ってきません。
あらためてLINEやメールで名前を使ってくれると嬉しくなります(内容によるけど)。
名前に関して、手話の世界ではサインネームがあります。いわゆる日本語でいうニックネームみたいな感じなのですが、ろう者の中にはその人の特徴を表したものがそのままサインネームになる時があります。
サインネームを知ったのは、アメリカで自己紹介されるたびに「私のサインネームはこれなの」と教えてもらったことがきっかけで。
帰国後、よく考えてみたら私の通っていた聾学校でも確かに使われていました。でも、どちらかというとサインネームは少なく、「指さし」で完結することが多かったです。芸能人やアイドルの話題になった時も「パーマかけた人がね」という感じで、音声による名前を介さずとも通じていました。
にいまーるに関わっている、ろう難聴者たちもサインネームと指さしを使う時があります。視覚的にお互いに【呼ぶ、呼ばれる】の関係性が成り立っているので、わざわざ「うすいさん」と言わなくても、手招きや指さしで完結するため、「あれ?君の名前何だったけ?」という現象が起きてしまっています。
聴者の中には失礼にあたる、と不愉快になってしまうのですが、当の本人は悪気がなく、あらためて音声での名前をどのように思い出したらいいのか分からない、ということがあります。サインネームを使うと「うん、あの人だよね」と誰のことを指しているのかを本当は分かっているのです。
とはいえ、やはり名前はその人の存在を示す上で重要なもの。
就労継続支援B型手楽来家(てらこや)では特に、名前を覚えるよう声かけています。サインネームや指文字使っても別に構わないので、きちんとその人の名前をインプットし、お互いに「存在」を認め合い、良好な人間関係を構築できるよう試みています。それでも間違えて呼んでしまう人がいるのですが、悪意は本当にないし、顔が似ているというのはどうしようもないわけで。
ともかく、「私はあなたと話がしたいんですよ」という想いを名前に乗せて運んでくれた、と思えば良いことあるかも!