道民が車を使わず道内旅行をした結果伝えたい「北海道観光への提言」
これを書く目的は何か?
メインの目的は以下の通りである。
北海道に精通している/住んでいる人は、季節関係なく"車で移動する"という前提でツーリズムを考えたり受入整備を行ったりするが、非積雪地域(東京等)やインバウンドをターゲットとしていくのであれば、想定モビリティは車以外でなければならないし、車を使わずに当事者として旅行してみることで見えてくる"2次交通の不"を言語化しておきたい
サブ目的(どうでもいい)は以下の通り。
・元道民が改めてじっくり北海道を回った際に、新たな発見があった細かいことをただ乱雑に書き綴りたい
・まちの魅力を最大化するために、これまで当たり前とされてきた観光モデルコースないし推奨タイムスケジュールを見直した方が良いのでは?という一個人としての提言を行っておきたい・"日本Deep案内"のようなサイトは、地元民が書くとなおさら深みが出せるのでは?という興味関心からw
今回はこちらの魔法のレールパス(12,000円/6日間)を駆使し、道央・道南をぐるっと周遊した。広域ルートとしては、新千歳空港→余市→ニセコ→長万部→函館→室蘭→白老→苫小牧(→札幌)を5日間で回った際に気づいたことを駄文として源泉掛け流し公開しているものである。
HOKKAIDO LOVE PASSについて
ニセコのいま
思っていたのと違うニセコの顔について
所有(投資)は高いが、賃貸は安い
地価が高い高いと言われるニセコ。しかし、市街地(倶知安)に4-5万円/月の賃貸のマイソクが並んでいた。
マックスバリュ、セイコーマートという安価な消費財インフラがあり、普通に地元民向けの安価な飲み屋もある(もちろん外国人向けの単価設定をしている飲食店もあるが、体感として日本人向けの居酒屋も一定数あるように感じた)、そして普通に市民が集うパチンコ屋もあるときたら、賃貸でニセコに住みながら高付加価値な商売に携わるといういわゆる出稼ぎも全然余地があるなと感じた。(ex:山岳ガイド、料理人、ノマド一流ホテリエ、美容師)
ここ最近で、秋期の綾ニセコ、冬期のリッツ・カールトン東山(鬼高かった…)、冬期のトリフィート&ポッド(スキーシーズンなのに、5000円/泊!)に宿泊したが、必ずしもお金持ちがすべからく高価な宿に泊まるとも限らないと感じた。この人絶対富裕層でしょ、みたいな人も、普通にトリフィート&ポッドに泊まっていたように感じる。寝るだけなのでコストカットし、ギアや食にお金を掛けたいという主義の人もいる。ニセコのインバウンドターゲットは一辺倒ではない。身なり衣服が物凄い富裕層であろう方も、日本で言うカプセルホテルにあたるポッドにふつうに泊まっていたしめちゃくちゃマックスバリュで買い物をしていた。
外国で暮らす、という認識を持って日本人が生活しなければならない
一面性を切り取っているだけかもしれない(行ったところが特殊なのかもしれない)が、ニセコはもう海外なので、日本人向けに日本語表記のみでノーマスクの案内がある。外国人の生活が主で、日本人は観光のまちとして外国ナイズされないといけないということなのかもしれない。(これはお花屋さんということもあり、店の思想かもしれない)
もっとキャッシュレス化が進んでいると思った
特に交通。ここはなんとかしたほうがいい。バスの運賃が370円、などだら銭になる端数が多い(倶知安市街地-ひらふが370円)バスの運転手さんが1000円札を両替機に入れ、370円だけ取って、残りを返すという所作が1人1人に行われ、外国人もいくら支払ったのか不明瞭な顔つきで降車するし、その所作(20秒くらい)×人数分が降車に費やされるので圧倒的にバスが遅延する。
これは絶対にsuicaのようなIC対応を早急にした方がいい。あとバスの接続がむずい。日本人でもむずい。
一等地の駐車場を活用したトレーラー商売が多くみられる
他の国内観光地へ横展開できそうな仕組み?商売スタイルとして備忘録をば。これは一等地の土地を保有する事業者にも、スノーシーズンにドバッと稼ぎたいノマド事業者にもWin-Winな仕組みと認識した。
ひらふ坂の一等地施設の休眠スペースで、何台もトレーラーハウスが鎮座し、飲食店はもちろんのこと、マッサージサロン(りらくるやカラダファクトリーのようなクイックマッサージのトレーラーハウス版)、デイワックス(20分くらいで板にワックスを塗ります的な)代行などの商売が行われていた。これは結構ジャンルの拡がりを見せる余地を残しており、例えば簡易託児所やこたつバー、シガー専門店、寒い中でサクッと体温を上げるためのウイスキーバー等はトレーラー化され、可能な限りゲレンデに近いところで固定費を掛けずに飲食以外の商機を獲得するムーブが生まれるのではないかと感じた。ニセコに限らず、全国の発展的なスノーリゾートで見られる光景になるのでは。
またダークサイド的な拡がりでいうと、法律上はもちろん倫理観念も絡んでくるが、良からぬことを企む商人による違法産業が蔓延る危険性もある。表向きはシーシャ屋などに偽装し、海外リゾートでは合法化されている麻薬・ドラッグ類をステルス的に提供するショップ等も考えられる。
またこれは全然上記の話の筋と外れるが、宿で事前決済しておけば1日中使える、ゲレンデ内のウォークスルー飲食店なども増えそうな予感がする。キャッシュレス化したとはいえ、スキーを脱いで(かつ手袋を極寒地で脱いで)会計するのは厳しいので、ゴンドラ乗り場でホットドリンクが提供され、降り場でドリンクカップを捨てるゴミ箱がある、といったゲレンデ内のアイドルタイムを活用した商売。1日2000円払えばフリードリンク&ゲレンデ内ウォークスルー会計だよ、みたいな。
倶知安町とニセコ町の行政区分によって不都合が多く見られる
はじめに、バスの接続について。
倶知安/ニセコ/蘭越を束ねてニセコエリアと見た時に、域内にはさまざまなバスが走っていた。
ニセコバス、ニセコユナイテッドシャトル(スキー場とスキー場を接続するバス)、倶知安町(市街地エリア)-ひらふエリアのバス、ニセコ周遊バス(ニセコ町限定)-アンヌプリ(一部モイワ)のバス等。
特に便利だったのは、ナイト号の最終が22時代までやっている(toひらふ)ことだ。ナイト号のおかげで倶知安町の市街地には歓楽街が組成され続け、持続的な収入がもたらされている。
飲食店に補助金を直接出すのではなく、地元バス会社などに補助金を出し間接的に歓楽街の活性を目指すやり方。蔵王とかみのやま温泉のような関係性が望ましいよね、と思った。ナイトタイムエコノミー推進するなら交通事業者を巻き込まないと話にならないよね、といつも思っている。
3日目の際に後述するが、倶知安市街地からバスでひらふに行き、そこで乗り換えてアンヌプリまでユナイテッドシャトルを使い、そこから雪道の歩道なし車道徒歩30分かけて蘭越町の奥昆布温泉まで移動した。圧倒的にきつかった。特に車道を歩くのがとても怖かった。当日はベチャ雪だったので、車に雨雪をかけられた。悲しかった。
にこっとBUS
これは非常に便利。とてもよかった。しかしこれも行政区分の問題で、倶知安町-ニセコ町の区間は使えない。自力でニセコ町に入らないといけない。ニセコ町IN-OUTでしか使えないのだ。
湯めぐりパスは推すのか推さないのかはっきりしたほうがいい
まちづくり会社みたいなところは積極的に売ろうとしていない(窓口受託のみ)のが、ちょっと微妙だなと思ってしまった。
ニセコは温泉大国。美人の湯も多い。ニセコはサウナ発展させる余地はものすごいある。なぜニセコだけは過去の遺産のまま、独自のサウナ文化を発展させに行っていないのか?気になった。
そして、肝心のメイン通りにある、ひらふ亭つかえないのかい…!
その他・余談
・なぜか山岡家を食べていた。
・地元民の文化を感じるには場末感満載のスナックかパチンコ屋を見るとよい、と昔から思っているが、パチンコ屋ではハネモノが人気だった。大体年齢層が高い地域ほど海物語とジャグラーに人が集まる構図だと勝手に思っていたが、ニセコはハネモノブームなのかもしれない。
・ニセコ駅の切符管理、改札はニセコの観光協会が運営していた。(受託業務?)駅の改札員が観光案内をダイレクトに行うことができる、というのは大分特異な体制。ローカル特有の2時間電車がない、みたいな現象に対し、「2時間あればすぐそこのhogehoge牧場の乳搾り体験できますよ、即時予約できるので予約しますか?ありがとうございます、行ってらっしゃい、次の電車は16:30なのでそれまでに戻ってきてくださいね〜」ができる。これができると協会/DMOの予約手数料(3%前後が妥当か?)として大きなインパクトを持つんじゃないかと。無人駅化寸前の駅がManageエリアに組み込まれているDMOの皆様、JRや私鉄と協議してみるのもいいかもしれません。ニセコ町 to JR北海道でそのスキームが成り立っているようなので、きっと他地域JRでも実現の余地はあるかと思ったりした。
長万部・函館のいま
旅館のゲストチェックアウト後のオペレーションを学ぶ
この日はちょこっとだけ日雇いの客室清掃のバイトをしてみた。タイミー便利です。ありがとうございます。そして施設名は伏せますがこんな素人に手取り足取りバックヤードのあれこれ、客室清掃のイロハを短時間で教えていただき本当に感謝ですmm
15:00チェックインや、早ければ14:00-チェックインの宿もある中、10:00チェックアウト後の4-5時間で全ての客室清掃を完璧に終わらせ、次のゲストを迎えるという業務、いつか当事者として立ち会ってみたいなと思っていたので、よい機会でした。そこには、分単位を争う清掃オペレーションの世界がありました。
清掃オペレーションはきっと個別の宿ごとの競合優位性などもあるかと思うのでここでは触れませんが、裏側を見せてもらった身として今後ゲストとして(勝手に/個人的に)気をつけたいことを記載。
・チェックアウト時間を厳守する
同じフロアごとにまとめてリネン剥がしや掃除機一気掛けをしたいのだが、1室でもC.Oしていないとそこだけ残務として後回しでやる必要性が出てくる。「べっぴんさん、べっぴんさん、ひとつ飛ばしてべっぴんさん」の"ひとつ飛ばし"に貴方はなっていないだろうか。フロントから電話が来てから退出すればいいや、という甘えは旅館に想像以上のダメージを与えることになる。
・使ってないベッドは明らかに使ってない雰囲気を出して部屋を出る
たまにあるじゃないですか、シングル利用なのにツインの部屋に通してもらえるタイミング。この時せっかくだから2つのベッドにダイブしてみよう、とか、荷物は1ベッドに置いてもう1つの方に寝よう、とか色々考えちゃうこと、あると思います。清掃員側の立場に立つと、「多分このベッドで寝てないだろうな、でも少しでもシワが表面にあるな」と判断すると下のシーツやら、多分使ってないであろうピローカバーも全部取り替えます。リネン代って案外馬鹿にならなくて結構高いです。地方に行けば行くほどクリーナーさんの総数も少なければリネン会社数も少なくなるので、これから先の未来を考えると必然的に価格は高止まりしていくでしょう(逆に言えば清掃系の人員/パートナーを囲い込めているか、が今後の宿の競争力である)。使ってないものは、使ってないと目に見える形でクリーナーさんに示しチェックアウトしていくことが宿の応援にも繋がるということです。
・連泊の時は予め部屋を出る時間、戻る時間を早めに伝える
これバイトの時も多発したんですが、清掃をしてる途中にゲストが部屋に帰ってくるケース。11-13時の間に帰ってくるとなかなか大変。掃除機もシーツもゴミ類も水回り清掃道具も出しっぱなしのタイミングに帰室されるととんでもないことになってます。ゲストが帰ってきたもんだから、慌てて掃除をせねば、ということで他フロアの清掃人員を急遽集めて急ピッチで終わらせることもあります。そうすると他フロアの清掃員さんの既存のタイムフローが大崩れし、次のチェックイン迄に間に合わない、なんてリスクも生じます。なので、当日朝には清掃オペレーション(特に部屋を回る順番)を確立させられるように、個人的には前日の晩までにはフロントに時間を伝えるようにしたいと思いました。
新幹線が止まる駅、長万部は何を磨くべきか?
長万部=おしゃまんべ、と読みます。東大王・クイズノックの方なら頻出問題としてインプットしているかもしれませんが、大体初見で読めません。このエリア、10年後には北海道新幹線の駅が完成し人流が見込めるエリアです。
これまでは大体車でロードサイドを走り、かなやの蟹飯を買い、お菓子の王国はっぴーディアーズというお菓子特化型のヴィレッジヴァンガードのような施設に立ち寄り、函館に抜ける、みたいな町という認識しかなかったのですが、公共交通機関のみで旅をする、ということになると見え方が変わります。
駅に降り立って最も感じたのは、滞在消費を生む長万部温泉エリアが駅裏にあり、現状正面口から出てぐるーっと迂回しないといけない点
・東京理科大:コロナで学生がいない、駅前飲食店の危機
・巨大水柱で有名になったが、いまは観光スポットになりうる状況ではない(既に噴出口が塞がれている)
これが新幹線駅設置の影響で、駅裏と正面口が高架で結ばれることに。
より駅前飲食店と温泉街の連携のチャンスになりうるタイミング。石川県は加賀温泉の「1泊2日3湯4食」じゃないですが、何かコンセプトを決めて狭域ターゲットに当てる地域連携コンテンツを作る機会なのかもしれません。かなやの知名度を活かした蟹縛りの滞在メニューとか?
函館
・JRイン函館:函館という終着駅のボックスを生かした鉄オタ専門の駅
・朝、回転寿司が振る舞われる。事前に寿司を大量に握って出すビュッフェ形式と、握って寿司レーンに乗せるLive感をエンタメとして感じてもらう、だと満足度は格段に違うはずなんですが、実はオペレーション工数としてはそんなに差がないのでは?(作って皿に置く、という行為なので)だったら、宿に回転寿司レーン導入するだけでなかなか宿として差別化できるのかも…と思って回転寿司レーンを調べてみましたが、1レーン100-150万くらいするんですね…だいぶ初期投資がキツい。
・大門横丁でホッケの刺身をいただく。ホッケの刺身が食べられるよ、ってもう結構大々的に広報してるものでしたか?これ結構全国の魚好きには刺さりそう。漁師の友達曰く、ホッケは足が速いから本当に新鮮な状態でないと生で出せないとのこと。これって北海道ならではだよね?
その他・余談
・本当は伝説の二股らじうむ温泉に行きたかった。が、どうしても公共交通機関だと厳しいこともあり、断念した。いつか行きたい。
・函館といえば、谷地頭温泉。だいぶ愛している温泉なんですが、今回はスケジュール上断念。その先の立待岬も最高の絶景で、夏場はツブ貝とビールが売っているスポット、こういうところこそ車で行かない方がいいですね(飲みたいから)。
・ラッキーピエロに40分並んだのに列車の時間が近づいて買えなかった、無念。やっぱりラッキーピエロは事前予約に限る。ハセストやきとり弁当に切り替えました。
室蘭のいま
道外からの観光客やインバウンドに化け変わって、車は一切使わないとルールを課して臨んでいたのですが、室蘭で唯一ズルをしました。タイムズのカーシェアを2時間だけ借りてしまいました。申し訳ございません。白鳥大橋車で渡りたい、というのと、ブラタモリでお馴染み室蘭はアップダウンが激しすぎる町なので車を使わざるを得ませんでした。冬の北海道なのに、室蘭は積雪がないということもあり、関東と同じ感覚で運転ができます。安心安全です。
地球岬、ここは何で稼ぐ場所なのか?
特急が止まる東室蘭駅と、市役所等陸の中枢機能を有する室蘭駅は離れて位置しており、地球岬はちょうどその中間くらいにポジショニングしています。最寄駅は母恋駅。
この冬の時期に行ったからかもしれませんが、トイレ、岬、展望設備、そして強い風、それ以外は何も商売っ気がない観光スポットです。入場ももちろん無料。訪れた際には東アジア系のインバウンドが複数人いましたが、セルフィー&鐘を鳴らすくらいで、足早に退散していました。物産も飲食もないので消費額向上は望めず、近場に何か換金化できるしくみが欲しいところ。換金化できるとすればタクシーくらいで、ここに何か商売の種があると良いと思います。e-bikeのコース設定に組み込むにはアップダウンが激しすぎる気もしていてビギナーには厳しい(実際室蘭e-bikeは昨年モニターツアーも行われていたようで、推進してるみたいですが)。となるとなんだろう。ロケ地誘致&東室蘭からハイヤープランか。それとも岬にカフェ作るか。と思案しながら車を走らせていたところ、近場に「夢の森」という素敵な平地がありました。ほぼ地球岬と同じような眺めが堪能できて、しかも平地に整備されていてベンチもある、周りに木もなく空間が開けててグランピングなどに活用できると素敵(水道が来てるかどうかが懸念)。特定工作物にならない範囲でキャンプ場にしても良いかも。地球岬とセットで売り出すイメージ。ただし、シカがめちゃくちゃ居るらしくその辺りがネックなのかも。山だし。あと風がめちゃくちゃ強い。キャンプ場的な活用/開発は道の駅横のRVパークで「ZEKKEI BASE CAMP」としてやっているみたいなので、静岡の"天空の茶の間"をはじめとした茶の間シリーズに倣って、「ZEKKEI CAMP MURORAN」でシリーズ化し、キャンプ=室蘭エリアとしてリピーター認知を取りに行くのもいいのかも、と上記つらつらと勝手に部外者が考えを書いているのでした。アップダウンある地形だからこその絶景、なにかもっと前向きに活かせるように考えたい!
感動、何度も行きたい宮越屋珈琲 MUTEKIROU
白鳥大橋方面の高台に位置する宮越屋。宮越屋の深煎りが大好きで、銀座の店舗に豆買いに行ったり、福住のノエルにもだいぶ通った思い出があります。そんな宮越屋で、室蘭の海を一望できる神施設がありました。語彙力ないので申し訳ないのですが、最高です。夜、中島町でふらっとマスターに聞いたところによると、室蘭焼き鳥の一平さんが施設のオーナーで、宮越屋が運営/プロデュースに入っているそう。星野リゾートみたい。所有と運営の分離。
その他・余談
・室蘭駅前のシャッター街がとても物寂しくて悲しい。これはニュースでもみていた通りの風景でした。シャッター街が、本当にシャッター街。
・全国区の室蘭やきとりの名店、やきとりの一平。一瞬火事かと思うくらいモクモクと店先から煙を出しながら営業されています。でもこの煙の香りが最高で吸い込まれる人多数だろうと想像します。におい・香りがいちばんの広告塔。観光を日中していると、五感のうち目はかなり消耗しているので夜には機能しなくなります。したがってそれ以外の四感を攻撃して行くスタイルは正しいと思います。
・室蘭ってうずらの卵が名産って知らなかった。一平名物のうずらの卵串焼き?(名前合ってるか不安)は、卵の殻付きで焼くというワイルドなスタイル。表面ガリガリ、中ふわふわの新感覚食感でした。
虎杖浜・白老・苫小牧のいま
虎杖浜の無料循環バス"ゆたら号"に思うこと
温泉好きなら誰もが知っている有名温泉地・登別。の隣のまち白老町にある、虎杖浜(こじょうはま)温泉。ハイエンド向けの"海の別邸ふる川"の認知度が高く、温泉地自体の泉質も素晴らしく太平洋を一望しながらの湯浴みができるので素敵。今回は登別駅からどうにかこうにか公共交通機関を使って虎杖浜温泉に行こうかと考えていたところ、無料循環バスの存在を知った。今年10月からスタートした取り組みのようで。
今回は"ホテルいずみ"の露天風呂を楽しみにしてきた。
昼前に到着し、11:45のゆたら号にお世話になることに。登別駅からホテルいずみまでは徒歩で20分弱。ゆたら号に乗るとぐるーっと各施設を回るので33分掛かった。(ダイヤ通り)
となると、帰りは同じ回り方だから早く駅に着ける、と思ったのだが、午後便は向きが逆となり運行を行うようで、結局帰りも33分掛かることがわかった。ホテルいずみに行きたい人でお昼を跨ぐ人にとっては、都合の悪い逆回転ギミックが発動した。歩いた方が早く着くという…。
それでも、歩かずに送迎してくれるのはとても有難い。
そんなことより、なぜ無料循環なのか?という点の方が気になった。ドライバーさんに聞くと事業用の緑ナンバーを取れず白タクになってしまうから無料にしているとのこと。
正直乗車前は「徒歩で20分のところ、無料とはいえども33分かかるのはなぁ…」と生意気フリーライダーは思っていたのだが、その33分が最高のガイドツアーだった。ウポポイの開業の光と影、白老牛と神戸牛の関係性、虎杖中学校の早期廃校とリノベーション史、虎杖浜流干物の作り方、等、世の中に存命する薄いガイドツアーと一線を画す濃厚なドライブガイドであり、"輸送"以外の価値を大いに感じた33分だった。ガイドツアー込みの輸送にすればお金が発生し、循環バスの持続的運営も叶うのでは、と思うところだが、観光庁見解としては以下の通りである。
なので、すごい粗々(そしてグレーかもしれない)だが、「バス代は無料だよ、だけどバス移動中に聞いてもらいたいガイド音源は乗車前に買ってね、あ、これはあくまでも音源の販売なのでバス輸送とは別ですよ」という手法でバスの運営を賄えないのだろうか。他地域において、類似した手法で旅客自動車運送ルールを乗り越えながら観光地の交通インフラをディフェンスしているよ、という方がもしこのnoteを読んでいたらお知恵を拝借したい。
ウポポイは訪問者の習熟度によって推奨ルートを変えるべきだ
肝入りプロジェクトとして立ち上がった"民族共生象徴空間"ウポポイ。ウポポイは、アイヌの歴史と文化を学べる【博物館】、舞踊などの伝統芸能が上演される【体験交流ホール】、教育旅行などで使用される大箱の【体験学習館】、織物などの作業を見学できる【工房】、アイヌ語実演や語り部、猟とその暮らしを体感できる【伝統的コタン(村)】と大きくエリアが分かれている。そしてその横に隣接しているのが星野リゾートの界 ポロトである。
場内ではひっきりなしに数々の体験・講義が行われており、初訪者にはどこに、いつ、どの順番で行くべきか難しく感じるシーンがあるのではないかと思う、そして実際にその一人だった。
入場ゲートを潜ると、潤沢に案内スタッフが常駐しており声を掛けてくれる。今回訪問時には、「まずはこの後行われる体験交流ホールでの歌・踊り・語りの伝統芸能上映をおすすめします」と声を掛けてもらった。
が、事前にプログラムをWebで見ていたので、【伝統的コタン】エリアでのアイヌ語学習プログラムと、植物と暮らし紹介プログラム、弓矢体験、口承文芸実演プログラムに参加した。
その後、博物館でのシアタープログラム、展示へ向かった。
結果としてこの流れで回れたことが個人的には非常によかった。
博物館では、なぜアイヌが迫害されていたのか?今に至るまでどういう暮らしをしており、迫害に伴ってその暮らし・文化が失われてきたことの理解を深く促すような展示だと感じた。施設のニュアンスやこれまでの施設設立に至った背景からも、アイヌ保護の文脈が強めに感じられるものだった(個人によって捉え方は異なるという前提で、個人の見解を述べています)。初めてアイヌ学に触れる者としては、この展示は事前のマインドセットに係るハードルが高いように感じてしまった。
そこで話は戻るが、はじめに【伝統的コタン】エリアを訪れ、「猟の時は一時的に寒さをしのぐためにトドマツの葉っぱで簡易宿舎を作ります、作り方を実演しますね!」「アイヌ語は日本語とは異なるイントネーションで、2文字目が上がるものが多かったり、pの音を出す時に日本語と異なる発声となるんだよ!」とか、「毒矢ってこうやって打つんだよ」「アイヌに代々口承されてきた物語をいまから話すよ!」などといった、多少ポップにアイヌを理解させるようなコンテンツに触れられたことで前のめりに学ぶことができたし、その後博物館を回遊することでその暮らし/文化の文脈を補填することができた。
少なくとも、以下6つくらいは想定ターゲット/グループを準備しておき、それぞれに合った回遊方法をレコメンドする必要があると考える。
個人旅行(国内客)× アイヌ文化入門レベル
個人旅行(国内客)× アイヌ書籍1冊以上読み切りレベル
個人旅行(FIT)
団体旅行(国内一般)
団体旅行(インバウンド)
教育旅行
最も懸念してしまったのが、教育旅行である。道内の修学旅行などでは、大人数をいっぺんに収容できる体験交流ホールでの伝統芸能(歌・踊り)鑑賞からスタートし、博物館の見学(時間制約のあるフリー見学)に移行するケースが多いのではないかと推測する。しかし、この順番だと子どもは「なんだかよく理解できない踊りを見て少し退屈だな、この後博物館の見学もあるのか、夜のフリータイムが待ち遠しいな」という状態になる可能性が高い。このあたりをうまくケアした回遊構成にすることで、一丁目一番地の目的である"地元民が地元の民族文化の理解をする"ということが実現されるのではないかと思う。
アイヌ新語誕生・選定フローは常設展にすべきだ
テーマ展示として期間限定で行われている「民族共生象徴空間(ウポポイ)のことばと歴史」展、これは感動した。
ウポポイで特徴的なのが、「第一言語はアイヌ語」であること。各展示には、
アイヌ語での表記
日本語表記
英語表記
繁体字・簡体字表記
ハングル表記 …
と、まず最上部に必ずアイヌ語が書かれ、その翻訳表記として日本語・英語…と同列に記載がされている。樺太・千島地域にもアイヌが在住していたこともありロシア語表記もされていた。ロシア語のパンフレットも存在する。
一方で、アイヌ語にはないここ最近登場した名称を、どうアイヌ語として表記するのかという問題が残った。例えば、ウポポイの施設名にもなっている「民族共生象徴空間」という冠語や、「ミュージアムショップ」「シアター」などという当時はピンポイントに近似するものがなかった単語などである。
それを、ウェブ上の掲示板でアイヌ語案を出し合い、その後対面で文法補正をかけ、複数案の中から1案に選定し、検討委員会で1語1語承認が行われ、展示表記にしていったという。
アイヌ語で「ウシ」と付けばそれは「いつも〜をするところ」という意味を成すが、そういった接頭辞/接尾辞や否定などの文法と、既存の言葉を組み合わせ「スシウシ」=「寿司屋さん」など造語化していく行程なんだと思う。想像しただけでだいぶ難しい。(スシウシなんて言葉ないです)
テーマ展だけで閉じてしまうには勿体無い新語誕生までの営みの尊さ。これは是非常設展にして欲しい。「ことばを作る」という人類の営みの最先端に位置するのだから。
その他・余談
・界ポロトの日帰り入浴は、白老町民であれば400円だが、それ以外の地域から来た一般客は1,500円と大きく価格差がある。この思想は(高い安いは置いておいて)良いと感じる。地元民が立ち寄り易い普段使い(どうやらまだそんな感じじゃないようだが)の施設としてまちに馴染んでいく一方で、施設の自走化のために外から資本を回収する。道内でもここまで町内外で価格差をつけているところは多くない気がするが、それでいいと思う。(星野リゾート感を1500円で味わえるのであれば、全然安い気もするし…)
・職員ひとりひとりにもアイヌのあだ名の様なものが付けられ、アイヌ語を大切にしていることが伝わってきた。いいな、アイヌ語のあだ名欲しいな。
・上記アイヌ語の「ウシ」に派生して、いま保有しているNFTマリモの名前は「トムラウシ」にしています。"花の多いところ"という意味なんですが、トムラウシ温泉が好きだからという単純な理由で名付けています。
王子製紙工場のすぐ横に繁華街が
苫小牧は工場の街、産業観光も推し進められていることは知っていたが、駅真横に大きく「PAPER」と書かれた王子製紙の工場があり、王子製紙社員のために近接させましたよと言わんばかりの繁華街が存在する。
数年前モンゴルに行った時に見た、煙突からケムリモクモク、極寒寒空の中ビールを飲んだあの風景に似ていた。
余市のいま *箇条書きのみ
LOOP、余市のテロワールを感じるアンテナショップ的ポジション
・夕食を起点として余市という街を堪能した方が良いのでは?という提言
・部屋のしつらえもワイン調 ・ソムリエ、シェフが圧倒的ネームバリューがある
・ワインと料理のペアリング
・なぜこの料理にはこの味付けなのか?の説明がわかりやすい
・他所モノかつガストロノミー界の有力プレイヤーが余市に根を張って商売をしていること(現在)と、竹鶴が余市に蒸留所を構えたこと(過去)の合点が合う。新旧入り乱れて余市の土地風土がスペシャルであることを感じてほしい。
・デザートワインとドルチェ(デザートという表現が正しいのか?)の組み合わせまで提案できるのは素敵
・ドメーヌタカヒコ
・牛じゃなくて十分豚でも美味しいことの発見
大"日"本"果"汁株式会社 → ニッカ
ウイスキーは樽熟成に時間がかかる
余市は川と潮があり、酒造りには適した場所
それは果物にも言えることである
ウイスキーが完成するまでの空白の期間の商売としてジュースをつくっていた
その名残が"ニッカ"の社名である
ウイスキー工場は間引かれて建てられている
"余市"は世界唯一の石炭直火加熱で蒸留される
一方、宮城峡はスチーム間接加熱で安全性が高い
石炭を熱源とするため、火が燃え移るとウイスキー樽が一気に消滅する可能性がある→ドミノのストッパーと同じ原理で建物と建物の間を広く空間設計することでリスク回避をしている
ラインアーム下向きのポットスチル
その他・余談
パチンコ屋:Pworld非加盟の間引きパチンコ店
日本総合投資という仰々しい社名の法人が立ち入り禁止になっていたり
温泉は完全に車が必要
余市にはカーシェアが必要(ハンドルキーパーとして)あるいは、Loop宿泊者に翌日のドメーヌ巡りを提案して、ハイヤーを予約するサービスなどが立ち上がると楽しい。(大体ワイン好きはLoopに宿泊し、翌日も余市滞在をする可能性が高いと勝手に判断)
以上で前編終了。
後編は旭川・北見・網走・知床・帯広・千歳をまとめて書いていく所存(またすぐ旅に出ます)←1年経っても書かれず…