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八つ墓村の舞台一考

映画「八つ墓村」(1977)がyoutubeで期間限定無料公開されていたので久しぶりに観てみました。子供の頃は人間関係も含めさっぱり話がわからず、ただただ怖い映画だった本作ですが、やっと理解しながら楽しめる歳になりました(映画もかなり改変されており人間関係も分かりやすくなってるとか…)。
せっかくなので作品の舞台について考察してみようかと思います。既にロケ地や作品で参考にされた地域などは広く知られており、地理的な場所については考察するまでもないので、作中の舞台として少し別の視点から考えていきたいと思います。
尚、松竹版の映画とwikipediaしかみていませんので原作や横溝自身の言及については考慮できていませんのでご了承ください。

キーワード
岡山県
大規模な鍾乳洞
伯備線
津山事件を参考にしているが村の場所は遠くに変更
伯備線の新見駅の近くの村(wikipediaより引用)
備中神代駅(ロケ地 新見市西方
満奇洞(ロケ地 新見市豊永赤馬
広兼邸(ロケ地 高梁市成羽町

舞台は阿哲台

この作品を特徴づけるのは村のあちらこちら口を開ける大規模な鍾乳洞の存在です。鍾乳洞は石灰石が水に溶かされて形成される洞窟なので、作中のような鍾乳洞の形成には大規模な石灰岩の存在が必要となります。
石灰岩台地と鍾乳洞といえば山口県の秋吉台と秋芳洞が有名ですが、岡山県にも帝釈台と阿哲台と呼ばれる2つの大規模な石灰岩台地が存在します。新見市はそのうちの阿哲台の大部分をその行政界内に収めており、キーワードに挙げた多くの項目からも八つ墓村のお話はこの阿哲台と呼ばれる石灰岩台地が舞台であると考えられます。
映画の冒頭やラストで落武者達が村を見下ろしていた高台にもカルスト地形特有の羊のような岩が点在していました。村自体はこれらの台地が侵食されてできた谷や斜面に広がっているのでしょう。この地域では昔から畜産も盛んだったようで、今でも台地のあちこちに牧場があるようです。映画でも牛が出てきましたね。
田治見家のロケ地(広兼邸)は少し離れた成羽にありますが、あくまで映画の絵作りの都合であり、この位置関係には大きな意味はないと考えられます。

石灰岩(青色)の分布とロケ地(産総研シームレス地質図を加工)
高梁川両岸に分布する台地状の地形 (地理院地図)


阿哲台の3D地形・青色が石灰岩(地理院地図+産総研シームレス地質図)


異説 もう一つの舞台? 川上町の高山石灰岩

作品の中で八つ墓村の地下に広がる洞窟を「川上洞」と呼んでいました。「川上」の名称から思い浮かぶのは岡山県高梁市川上町です。阿哲台から10kmほど南に位置するこの地域にも石灰岩が広く分布しており、集落の名称から「高山(こうやま)石灰岩」と呼ばれています。大規模な洞窟やカルスト地形を形成するには至っていませんが、もしかしたら川上洞の名前はこの地域を参考にしているのかもしれませんね。

川上町と高山石灰岩(産総研シームレス地質図を加工)


おまけ 映画「ゲゲゲの謎」とアニメ「アンデッドガール・マーダーファルス」

映画「ゲゲゲの謎」(ゲ謎)と横溝作品との繋がりについてはゲ謎を観ていてすぐに感じました。導入部で案内役として出てくる女性、山の斜面の因習村、村の地下に広がる洞窟など「八つ墓村」要素が散りばめられていたと思います。
2023年に放送された深夜アニメ「アンデッドガール・マーダーファルス」にも人里から隔絶された人狼の村と地下の洞窟を舞台にしたストーリーがあり、こちらも「八つ墓村」っぽさがありました。

まとめ

「八つ墓村」の舞台について地質学的見地から考察してみました。八つ墓村は阿哲台と呼ばれる日本でも有数の石灰岩台地に舞台設定され、石灰岩台地特有の地形や鍾乳洞が作品に色濃く反映されていたと言えます。


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