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パルワールドをどうしてこうも許せないのか

 タイトルの通りですが、パルワールドというゲームに対して許せないという感情はありつつもその正体がわからずにいるので、綴りながら解いていこうと言う記事です。

 2024年1月19日、パルワールドのアーリーアクセス版リリースから一週間が経ちました。リリース前から各ゲームメディアで取り上げられてはいましたが、リリースされてからはパルワールドの話題を目にしない日はありません。そして、その中の大きな話題の一つが"パクリ"。すでに多くの方がこの問題に対する見解を示し、十分議論され、渦中にあった会社から声明が出されたこともあって一時に比べるとほとぼりは冷めたと思います。

 ではなぜいまさらこんなnoteを書くのか。PVやプレイ動画を見た自分はこのゲームに対して怒りを覚えました。手を付ける配信者に対しても勝手に落胆しました。しかし、この一週間ずっとその身勝手な感情に理由をつけられずにいました。安易に「これはパクリだ!許せない!」とするわけにはいきません。業界的にゲームデザイン、システム、アート、サウンドすべてにおいて完全にオリジナルと言えるものはありません。これはゲームに限らず、クリエイティブに関わるもの全般に言えます。これを許さず、あれを許す。自分が許せないこの作品と自分が好きな作品たちは何が違うのか。本当に違うのか。何に苛立っているのか。とにかく自分の言葉が好きな作品を貶める可能性を感じ、一度自分なりの論理を組み立てることにしました。

 長くなりましたが要は自己満足です。パルワールド(ポケットペア社)とパルワールドを遊ぶプレイヤーに対して批判や何か訴えかける意図はありません。これを書いている時点では正直どちらに転ぶかもわかっていません。同じくこのゲームに対してモヤモヤを抱えている人と自分が答えを見出すきっかけになればと思います。


1. 前提として

 未プレイです。なので、パルワールドのゲームシステムについてPVやインタビュー記事、プレイ動画などでわかる範囲以外で触れることはありません。プレイされている方からは「やってみたらわかるよ」「体験はもっとちがうものだよ」という指摘が上がると思いますが、あくまで購入を控えた者の視点から書きます。

2. "パクリ"?について

 さて、この話題を触れるからにはパクリについて明確にする必要があります。ゲームシステムとデザインを混合して語られがちです。オマージュではないのかという話もあります。そもそも"パクリ"という言葉はとても攻撃性のある言葉だと思うので気を付けましょう。それではパルワールドというゲームを要素分解していきます。

2-1. モデルデザインについて

 パル(パルワールドにおけるモンスター)のデザインについてですね。最も問題になった要素です。これは明らかにポケモンをモデルにしています。肌の質感のテクスチャ表現や目の陰影とハイライトの表現、単純な造形や模様パターン(これだけでポケモンというには難しいですが)から、パッと見でポケモンを思わせるデザインをしています。類似だけなら良いですが、数多くの比較画像から特定のポケモンを組み合わせたり、同じ特徴の部位を持つパルが存在していることがわかります。

2-2. 演出について

 これは何かというと、パルにボールを投げたときのボールの挙動やパルの表現。パル出現時の表現。ゲームオーバー演出。新エリアを発見したときの演出などなど。なにかプレイヤーがアクションを起こすたびに「○○じゃん!」と言わせる既視感のあるエフェクトとSEによる演出がされます。
 オブジェクトの砕け方、木の切り方などモーションにも既視感があるかもしれませんが、開発エンジンがUnrealEngine4とのことなので同様のアセットを使っているだけかもしれませんね。

2-3. システムについて

 ゲームのシステムについてです。パルワールドには建築要素とパルの捕獲や育成、戦闘、愛でる要素があります。捕まえたパルは自動で建築の手伝いをしてくれるそうです。これらを組み合わせたこととオートメーション化がこのゲーム最大の特徴でしょう。この辺りは開発者インタビューから「ARK+ポケモン」がコンセプトだと思います。
 もう少し細かい要素を見ていきます。パラセールやフィールドでのパルの切り替えシステム、建築可能アイテムを開放していくテクノロジー、ボールを投げてパルをゲット、気温システム、素材の回収と建築。ざっとプレイ画面からわかる要素ですが、どれも「アルセウス」「ゼルダBotW」「ARK」などで馴染みのあるシステムです。ただ、テクノロジー要素や気温、素材と建築などはもはや"サバイバルクラフト"というジャンルの定番と言えます。一方で、その要素が特定のゲームの特徴(モンスターボールなど)として認知されている場合は"パクリ"だと言えるでしょう。

2-4. UIについて

 システムとかぶりますが、テクノロジー画面や手持ちパル、パル切り替えや経験値獲得UIなどですね。これらは他のゲームにそっくりだなと思われるUI構成です。ただ、体力やスタミナのHUD、メニューやラジオメニューなどは一般的ですし、UI全体のコンセプトはパルワールドらしいSFチックなものに統一されています。

3. 何が気に入らないのか

 ではなにが気に入らないのか。上記を書いていて見えてきました。

3-1. 過度な類似要素

 やはりこれが大きいです。あらゆる点で似すぎです。わかりやすく目につくところがポケモンと酷似している部分なため、多くの場合モデルについて批判の声が上がっていました。しかし、上記に書いた通りこれはモデルだけに限らずUIや演出、システムも酷似しています。それはダメなことなの?と思うかもしれないですが、個人的にはこれはありえないです。
 ゲーム開発は基本的に作って壊しての繰り返しです。モデルはどういうデザインが愛されるか、世界観に合うかと何度もリテイクされるものです。システムやUI、演出に関してはどうしたらわかりやすくなるか、不便じゃないか、触り心地が良いかなど、ちょっとしたアイコンの追加や色、配置と大きさの変化などでまったく違います。こういった試行錯誤を経て、悩み、頭を掻きむしりながら出来上がったものなのです。それをそのまま真似ているのですから、そこのズルさは感じます。真面目にやってるのが「あほくさ」です。

3-2. プロモーションの仕方とスタンス

 パルワールドはポケモンに似たモンスターが存在し、奴隷になっていたり現代兵器を持っているPVによって注目を集めました。似ているだけでも目を引くのに、ポケモンではタブーとされるような要素もあれば大きな話題となるでしょう。結果多くのウィッシュリスト登録を得たのですからプロモーションは大成功です。気になるのは、こうしてポケモンに似ていることを最大限利用したプロモーションの仕方をしているにも関わらず、インタビューでは「比較するのは恐れ多い」と答えています。先人として参考にしていると言い、関わった方々の魂を感じるとまで称したポケモンをこういった形で利用していることに強い違和感があります。

3-3. パルの扱い

 これは自分は特別気にならないです。ポケモンに似た、または、単純に可愛いパルがひどい扱いを受けることに対する批判をよく目にします。可哀想という感想もわかりますが、ロケットランチャーで飛ばすくらいならおふざけかなと思います(そのまま死んでしまうなら話は別ですが)。ただ、パルを解体しているシーンは悪趣味だなと思いました。

4. 問題あるの?

 こう書いてみると"お気持ち"の範疇を出ないですね。少し冷静になりました。法的な問題があるかというとおそらくないです。インタビューでも法務に確認していると言っているので慎重に実装しているのでしょう。不正競争防止法の問題も言われていますが、ポケモンと誤認させるかと言われるとそうではないですし、"似ている"ことを楽しんでいる人はいても勘違いした人はいないと思います。ARKとの類似についても著作権侵害の線で問題になることは過去の裁判を見てもほぼないと思います。
 法的に問題なければ良いのか?という話になりますが、良くないでしょうね。今回はARK+ポケモンでしたが、今後面白さが確立されたゲームに有名IPに似たモデルの組合せのゲームが生まれるかもしれません(実際は組み合わせただけではないですし、ここまでマッチする組み合わせもないと思います)。それを作るのが海外なら?ゾッとしないですね。とはいえこれはただの懸念なのでこれも個人的には気に入らない理由にはならないです。

5. パルワールドのすごいところ

 じゃあパルワールドはゲームを組み合わせただけのゲームなのか?と言われるとそうではないと思います。真似ていると言いましたが、ただ真似るだけでは面白くなりません。矛盾しているようですが、その要素を正しく理解していなければ見かけだけのコピーになります。面白さや快適さには繋がりません。パルのオートメーション化とそれがオープンワールドで破綻せず動いている点や、そのキャラ数とモーションの物量が凄まじいです。パルが作業開始するときの電球のようにリアクションやUIの動きも細かく、とても分かりやすく作られています。そしてこれらが軽量だと言うのが驚きです。
 また、マスに刺さるゲームを高いクオリティで作り上げ、プロモーションによってしっかりと注目され売上に繋げているのですからその実力は本物です。

6. 他の作品はなぜ大丈夫なのか

 先ほど、面白さが確立されたゲーム+有名IPという話をしましたが、"面白さが確立されたゲーム"に"独自の"IPを載せたゲームというのは多く存在します。原神やウマ娘、ApexやVALORANT、モンストとかもそうだと思います。元となる人気なゲームがあり、それぞれ独自のキャラやストーリー、スキルやモチーフを乗せています。そしてそれが成立するように様々な工夫がされていると思います。個人的にはこの工夫がボーダーラインです。もちろん原神の壁登りシステムやモーションのようにそのまんまな部分が残るゲームはあります。そこは正直好きではありません。
 ゲーム以外はどうでしょうか。例えば漫画「呪術廻戦」もまたパクリだとよく言われます。他の漫画の影響を大きく受け、たしかに同じような設定や構図がしばしば現れます。前者に関してはそこからの展開も使い方も異なるので気になりません。後者は他の漫画の作者がこの構図は映えると考えたものをそのまま使っているのでパクリです。
 大丈夫かといわれるとちょっと嫌です。3-1でも書いたようにやりすぎは許容できません。やればやるほど嫌いです。アウトに変わるかどうかはその許容量を超えるかどうかで決まりそうです。そしてその大きさはゲームかそうでないかで変わります。

7. さいごに

 パルワールドはすごいゲームです。が、やはり許せない部分もあります。自分にとってはその一部が致命的でした。そしてプレイする配信者への落胆。これはわがままです。自分が好きなものを好きな人を好きになるように、自分が嫌いなものを好きな人もまた好きにはなれません。同じ発想にはならなかったんだなと残念に思う気持ちはあります。
 この一部が気にならない人がほとんどだと思います。「似ているからなんなの?面白ければいいじゃん」ごもっともです。「運営のスタンスなんて知らない」そうですね、ゲームには何も関係ありません。
 もとより自分自身がなぜ許せないかというnoteなので業界のためにならないなんて高尚なことは言いません。面白いゲームは楽しんでください。

 それでは。

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