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【詩を食べるレシピ】わたしは必らず愛を得るだろう(室生犀星)/かぶのミルクジンジャースープ

かぶを近所の方にいただいた。土つきのとれたて!

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さっそく洗って皮をむくと、輝くほど真っ白な姿があらわれる。そのみずみずしさに、ハッと目が奪われた。

冬のあいだ、じっと土で育ったかぶの優美さに心打たれる。


ひたむきな愛をうたうひと、室生犀星

真白のかぶを見ていて、石川県金沢市生まれの室生犀星(むろう・さいせい)の第一詩集、『愛の詩集』のことをふと思い出した。北原白秋による序文に「何といふ優しさだ、素直さだ、気高さ、清らかさだ」と言われているからだろうか。

詩作を励ましてくれた最愛の養父が亡くなった翌年に、この詩集は出された。生活苦にあえぎながら詩を愛し、詩に打ち込んできた犀星。亡き養父にささげられた詩集には、打ちひしがれながらもひたむきな愛に生きようとする犀星の勁(つよ)さが筆跡ににじんでいる。

「愛あるところに」

わたしは何を得(う)ることであらう
わたしは必らず愛を得(う)るであらう
その白いむねをつかんで
わたしは永い間語るであらう
どんなに永い間寂しかつたといふことを
しづかに物語り感動するであらう

もちろん、「愛を得られるか」なんて、誰にとっても不確定事実だ。犀星は私生児として生まれ、実親の顔も見ぬまま養子に出された。幼少期に実母は失踪、実父は死亡。そんな「愛の迷子」たる彼にとって、安住できる愛を得られるかは一大テーマだったにちがいない。

そんななか、「わたしは必らず愛を得るであらう」と前を向ける精神の強靭さよ。(実はこの頃、とみ子という女性と文通のすえ婚約していたので、確信に近かったのかもしれない)

「その白いむねをつかんで」の露わさには一瞬ドキッとさせられるが、寂しさに裏打ちされた清らかさと「白い」という言葉のせいで、かぎりなく無垢な印象を受ける。

犀星にまとわりつづけた「どんなに永い間」かの寂しさは、ようやく終わった…「しづかな」感動が二人の肌によりそう。

この時期、犀星は「永い」ということばを好んで使っている。(この人に逢ふために僕は永い間もだえた/「永久の友」)永久のように長く厳しかった冬をこえ、永久に愛し合う人にめぐりあえた喜びがひたひたと満ちている。

心を温め、満たす。かぶのミルクジンジャースープのつくりかた

犀星は、結婚前のとみ子から送られる手紙が「心のすみからすみを温めた」とも言っている。犀星ととみ子のあたたかい愛をイメージして、かぶのスープをつくって詩を味わおう。純白のかぶをやさしく煮ると、ほろ苦さもありつつ、かぎりなく甘い。心もからだもすみずみまで温めてくれる。

【材料】
・かぶ 適量(大なら1個、中なら2個くらい)
・じゃがいも 2個(なくてもよい)
・玉ねぎ 1/2個
・しょうが 適量
・鶏もも肉 1枚
・ベーコン(なくてもよい)適量
・オリーブオイル
・白ワイン 100cc
・水 400cc
・牛乳 300cc
・塩、こしょう
・ローリエ、パセリ(なくてもよい)
+しめじなどのきのこ類を入れても。
【作りかた】
・かぶとじゃがいも、鶏もも肉、ベーコンは好きな大きさにカットする。玉ねぎは薄切り、しょうがは細く細く刻むか、すりおろす。
・玉ねぎ、ベーコン、鶏もも肉をオリーブオイルで炒める。
・じゃがいも、かぶを入れ、さらに炒め、塩をかるくする。
・白ワインと水100ccを加え、ふたをして弱火で蒸す。
・残りの水とローリエを加え、弱火でことこと煮る。
・火が通ったら牛乳としょうがを加え、塩で味をととのえる。
・仕上げにオリーブオイル、パセリ、黒胡椒をトッピング。
※じっくり蒸煮して野菜のうまみを引き出すので、コンソメは使いませんが、必要だったら入れてください

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後書き 妻・とみ子の愛とおおらかさ

室生犀星の生い立ちは暗くかなしいけど、結婚したとみ子は最高にチャーミングで、愛にあふれる人だったのが救いだ。

小学校教員をしながら俳句の才の持ち主だったとみ子。新聞に掲載されたとみ子の句を犀星が見初め、交際がはじまった。

第一詩集「愛の詩集」が出た次の月に結婚式を挙げたふたり。彼女は食いしん坊でおおらか。大正時代にあって「バームクーヘン風のタマゴ焼き」「フレンチトーストwithハンバーガー」など、食卓にオリジナルのハイカラな料理を並べ家族を楽しませたそう。(どんな料理だろう!?)

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娘に「お母様ほど幸せな女はいません。お父様がとても優しい人だから」と言われたというエピソードも。そんなふうに娘に言われる夫婦、素敵だ。

犀星の作品や新聞記事を集めてスクラップブックにまとめていたそうで、そういう細やかな愛情もかわいらしい。

とみ子さんの魅力を知るにつけ、「室生犀星と出会ってくれてありがとう」という気持ちになる。(そして不倫や離婚がやたらと多い詩人たちのなかで、ダントツにほっこりする夫婦である…)

ちなみに歌人・吉野秀雄ととみ子(※別人)夫婦も愛に溢れたいい夫婦なのでこちらの記事もどうぞ。

作者について

室生犀星(むろう・さいせい)金沢生まれ 1889ー1962 詩人・小説家

私生児として生まれ、生後間もなく生家近くの生家近くの雨宝院(真言宗寺院)住職だった室生真乗の内縁の妻・赤井ハツに引き取られ、ハツの私生児として戸籍に登録された。住職の室生家に7歳で養子となる。12歳で金沢地方裁判所に給仕として就職。

文学に目覚めるきっかけは就職先。上司の河越風骨、赤倉錦風ら俳人に手ほどきを受け、文学に親しむように。のちに北原白秋にも影響を受け、白秋主宰の詩集『朱欒(ざんぼあ)』に寄稿しはじめる。萩原と山村暮鳥とともに「人魚詩社」を結社。『愛の詩集』『抒情小曲集』などの抒情詩は大正期の詩壇を牽引した。

犀星の人柄だなぁと思うエピソード。『朱欒(ざんぼあ)』に掲載された犀星の詩を読んだ萩原朔太郎から手紙を受け取り、終生仲よくなったふたり。萩原の詩集『月に吠える』が発禁になったとき、なぜか室生が警視庁に出頭している…さては、いい人なんだな?

「ふるさとは遠きにありて思ふもの/そして悲しくうたふもの」という詩句が有名。

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