ポップ!参鶏湯
8月13日。 晴、あまりにも、晴。
昨日、ばあちゃんとじいちゃんと一緒に、夏バテに効く薬膳スープを飲みに麻布十番の韓国料理屋に行った。
麻布十番駅の地下鉄は余りにも深く、10分くらい歩いたところで、あたしたちはもしかするともう2度と陽の目を見ることは出来ないかもしれないという言いようのない不安にかられた。
さらに10分くらい歩いてなんとか地上に出ると、夏の日差しがコンクリートに跳ね返り、あたしたちの瞳孔を突き刺した。
あたしの夢、希望、憎しみ、悔恨などの諸々の念は、おかしみのみを残し焼き尽くされ、心は激しく六本木方面に向かって溶け出した。
店内でじいちゃんはあたしの服のセンスを激しく褒めちぎった。
センスとは、磨き、あるいは磨かれるもの。
いくら相手を知り尽くしても、己を知ろうとしない奴に、報われる戦など用意されないのです。
勝っても、負けても。
朝鮮人参のぶっ込まれた薬膳酒、キムチ、チヂミ、ナムル的なるもの等、幾つかの前菜の後、メインの参鶏湯が運び込まれた。
本日のメインディッシュでございます。くそ熱いので気をつけて食べろよ。
乳白色のスウプを口にした瞬間、ばあちゃんの全身の細胞が覚醒、すべてのチャクラが全開になり、見開かれた瞳から緑色の閃光が放たれた。
夏の終わり。