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天のお導きと黒猫の案内

今日はどこかに行きたくなり、有名だけど行ったことがない神社へ行くことにした。お参りをすませたのが昼過ぎ。まだ時間はあるから行く当てもなく歩くことにした。

行き先は天にお任せして導かれるまま。何も考えずに歩いていたら周辺地図があった。地図上のとある神社名がぱっと目に入った。ここに行こうと思うまで1秒もかからなかった。これぞ天のお導きだと思ったから。道順やどれくらいの距離かもよく見なかったけど、とにかくまっすぐ行けばいい。

しばらく歩いたら、小高いところに木が茂っている。きっとあそこだろう。どうやっていくのだろう? なにも考えないまま左に曲がる。目当てのところから遠ざかっているのに、ふと横をみたら奥の方に石段らしきものが見えこた。これぞ天のお導きだ。

石段を上り始めたら、上方に黒猫がいる。黄金色の大きな目で私を見つめながらニャーニャー鳴き始めた。また黒猫だ。
(先日、初めて行った神社で黒猫の歓迎を受けた話は ”奇跡のめぐりあわせ” でどうぞ)

黒猫はゆっくり堂々と階段を下りてきて私の足にもたれかかった。ニャーニャーずっと鳴いている。何がお望みなんだろう?動かずにいたら、黒猫は階段を上り始めた。案内するからついてこいってこと?と思いながら黒猫のあとを追った。

ひっそりとした狭い境内。さっきの黒猫が草むらの一点をみつめ集中している。突然なにかに飛びつき、なにかを口にくわえ、こちらに歩いてくる。そのなにかは、ヤモリだ! 私が苦手な類。きゃっきゃっ言いながら逃げた。

しばらく黒猫から離れて、心静かに境内の由緒書きを読んで、本殿にお参りをすませると、黒猫がまた近くにいた。さっきつかまえたヤモリを口から放して、前足で押さえていた。
「ヤモリ、生きていてよかった」
黒猫はヤモリを放してはまた追いかけて前足でおさえつけて、遊んでいるようだったが、しまいには、ヤモリは無事逃げ果せた。まるでショーを見せられたようだ。題して、”奇跡からの生還” ”危険な遊び” ヤモリが生きて逃げられハッピーエンド。本当によかった。神社で殺生は見たくない。

遊び終えた黒猫のいるところには、なでると願いが叶うといいつたえのある石があった。私が願い事をしながら石をなでている間、黒猫は横でちょこんと座っていた。

神社でよい気をいただき、帰ろうとすると黒猫は石段をすでに下りていた。お見送り? 石段を下りきった鳥居の下で黒猫は立ち止まった。私は黒猫に顔を近づけて話しかけた
「神社を案内してくれたんだね、ありがとう。楽しかったよ」
大きな黄金色の目がじっと私の目を見つめていた。そしてニャーニャーと泣き始め、私の足にもたれかかり駄々をこねているようだった。
「また会いに来るから。今日はこれでさようなら」と手を振ると、招き猫のようにきちんとすわり直し見送ってくれた。

天がこの神社に私を導き、黒猫が神社を案内し、ヤモリは神のお使いとして幸運のメッセージを運んでくれたのだろうか。楽しい1日だった。

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ポエミスト朱見
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