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贈賞式に行ってきたよ(中編)

 ようやく会場にたどりつき、中に入った僕。 
 
 テーブルはもらった名札の裏にテーブル番号が記載されており、そこに座ります。
 僕は会場の一番前列、右端のテーブルでした。
 席も決められており、僕の名前の札が置かれている。
   すでに何人かが着席しており、談笑されている。繋がりがよくわかっていないため、ひょっとしてこの方々は贈賞式の常連の人たちなのだろうか? と思う。人というのは初対面でもあんなににこやかに談笑できるものなのか? と。
 と、僕の右隣の方はすでに着席されており、赤い花を胸につけていた。ファイナリストである。
 僕が会釈して座ると、
「贈賞式は初めてですか?」
と声をかけてきた。
「はい」
 と僕が答えると、
「私もなんですよー。緊張しますねー」
 とおっしゃった。
 やった! 仲間が出来た!
 僕はちょっとホッとした。
 とにかくこの、右も左もわからぬ戦場で、同じ境遇の人に会えたのはうれしい。エスポワール号で古畑を見つけた時のカイジの心境である(誰がわかるんだ? その喩え)。
 そこからなぜか暗黙の了解でお互いの作品はなにか訊かないまま、「何回目の挑戦ですか?」話になり、ここで衝撃的なことを耳にする。
「いやー、実は私ね、今回がはじめての挑戦でして。はじめて応募したら、見事ファイナルまで来ちゃったんですよー!」
「ええっ? はじめてで? それメチャクチャすごいじゃないですか!・・ちなみに、何本くらい応募したんですか?」
「それがね・・。たったの、15本でして(笑)」
 
 

 じゅ、15本?????


 
 
「おいっ!」
 初対面の方に、思わずツッコんじゃいましたよ😅
「お父さん、ここいたらあかんよ! そんなの知られたら殺されますぜ!」
 何百、何千書いて、何年も何年も応募してもファイナルに来れない人が大勢いるのってのに、初めてでたった15本でファイナルて・・。おそらくこの会場の中で最小の応募数でファイナリストになったのではないだろうか? ある意味めちゃくちゃレアな人の横に座ってしまった(笑)。
  もしこの人がグランプリ獲ったらわしゃー世の理不尽さを嘆いて死ぬしかないな。そう思いました(冗談ですよ!)。
 
「いやー、なんせ私、コピーの世界のこと、よく知らなくて」
「あ、大丈夫。僕もですよ」
「審査員の先生たちも、お名前くらいは聞いたことあるなーってくらいで」
「はいはい」
「具体的にお話したことあるの、谷山さんくらいですよ」
 
 えっ?
 
 お話したことあるの?
 
 ちょっと驚き。
 そしてその時点で、ちょっとアドバンテージを感じてしまう。
 
 ごめんなさい。
 僕、ほんとにコピーの業界のこと、よく知らなさ過ぎて・・。
 
 審査員の先生方って、具体的に誰が誰やらさっぱりわからないのですよね😅

 いやもちろん、審査委員長の仲畑さん、知ってますよ。一倉さんも児島さんも知ってます(今回もいたのかどうかは知りませんが・・)。谷山さんも知ってますとも!
 SKATに載ってたから・・。
 
 ただその先生方が、具体的にどんな功績をあげられているかって言うと・・皆目・・。
 
 いや、作品を聞いたらね、知ってる知ってる! ってなります。
 
「おしりだって洗ってほしい」
 
 名コピーですよ!
 
「うまいんだな、これがっ」
 
 知らないわけがない。
 
  ただ、コピーは知っていても、それが誰の作品かってなると・・。ごめんなさいっ! ってレベルなのです😓
 コピー検定とかあったら、たぶん、初級も通れないレベルですよ僕は。
 作者と作品を線で結びなさい問題だったら、満点取れない人間です。
 こんなやつがファイナリストになってよいのだろうか? だんだん申し訳ない気持ちになってきました(笑)
 
 そんなことをまぁ、隣になったファイナリストの方と話し、ヒジョーにざっくりとしたリハーサル(というよりも段取りの説明会)を経て、休憩をはさみ、いよいよ贈賞式の本番が近づいてきます。
 いやがおうにも高まる緊張。
 
 フッと照明が落ち、音楽がかかり。
 プロジェクタに映し出される「第60回宣伝会議賞贈賞式」の文字。
 司会はフジテレビの男性アナウンサーの方で、こちらは僕はちょっと存じ上げてなかったのですが、田淵裕章アナウンサー。      あとで奥様に聞いた話によると、野球の田淵幸一さんのご子息らしい。
 で、プロジェクタの画面がパッと切り替わったら、うわっ! となってしまって、山崎夕貴アナウンサー。バラエティー番組『ワイドナショー』を毎週見ている僕には、ほんと、有名人中の有名人。
 しかもうわっ! よくよく見てみたら、ご本人、僕らのテーブルからわずか数メートルのところに立ってらっしゃる・・。隣の「お父さん」と、「ちょっとー山崎アナですよー」「ねー、ホンモノだねー」とキャッキャ盛り上がる。
  いいオジサンがなにをやってるんでしょうか?😂
 
 主催者による開会の挨拶があり、まずは中高生部門の表彰式。
 作品と作者の顔が映し出されるが、全然、侮れないくらい上手い。てか、上手い。
 これはなんだ? この子らは逆になんで大人の部(一般部門)で出しちゃダメなの? と思える。
 またみんな、賢そうな顔しててね。キラキラしてるよね。
 ああ、オジサンも君らくらいの時、演劇で全国大会行くぞ! とか頑張ってたよ(笑)
 それから今度は一般部門の協賛企業賞の授賞式。こちらもすでに作品と作者は紙面上で発表されいるわけですから、作品とご本人が軽く挨拶をして、という感じ。もちろん顔写真などでお顔は拝見したことはあるわけですが、おお、SKATでよく見るあの方はあんなお顔をされているのね、となる。
 んでもって、いよいよファイナリストの紹介。
 ここからがメインエベントですよ!
 大変長らくお待たせしました!(僕たちがね)
 
 ようやくこの3週間の苦悩が終わるのです。
 ほんでもって、謎だったライバルたちの作品が誰のものだったのか、というその謎も。
 
 アサヒ食品グループから順番に、協賛企業のアイウエオ順に作品が紹介され、そこではじめて明らかになる作者のお名前。
 正直、宣伝会議賞挑戦の日が浅い僕にはそんなになじみのお名前はなく。・・ん? 今年は常連組大人しいじゃん。
 そう思っていた。
 9番目くらいが僕の番で、ようやくオープンにされる僕の名前。
 生配信で見ているか? 家族よ。そしてたぶん仕事サボって見ているであろう僕の兄よ。
 SKATを読んで、「俺、この人たちをライバルと思って頑張るよ」と言ったら、「へぇーライバル?  一次審査一回通っただけなのに?」と小馬鹿にした弟は、見事ファイナリストになったぞ!(笑)
 
 

・・まぁ完全にまぐれなんですが(^^;


 
 とにかく、僕にとっての一番のクライマックスはここで、もうこの瞬間のためにこの3週間、爆発しそうになる思いを抑えて生きてきたと言っても過言ではない。
 やっと終わった・・と安堵したのもつかの間、事件が起きる。
 
 同じテーブルで僕とおなじ課題でファイナリストになられた方の作品が映し出され、その名前を見て心臓が止まるかと思った(ちょっと大袈裟か)。
 昨年の第59回大会でシルバー賞を受賞されていた向井さんだったのである。
 うぉーい!  SKATの存在を半年前に知った僕ですら知ってるよー(泣)
 そう言えば式がはじまる直前の雑談時間に、隣の「お父さん」(丹羽さんと言います)が、
「あの人、メチャクチャ有名な方ですよ」
 と言っていて、
「え? そうなんですか?」
 と名札を見ようとしたのだが、ちょうど胸の花で隠れてわかりづらく、まぁいいや、あとでわかるっしょ、と放っておいていたのでした。
 

 たしかにメチャクチャ有名人😅


 
 こんなすごい人とずーっとおなじテーブルに座ってたんかー。全然気づいてなかったー😭
 
 その衝撃も冷めやらぬまま、我々のテーブルを経て、次のテーブルに移ったと思ったら、その次の「セブン銀行」さんの課題で、また作者が向井さん。
 
 だ、だ、Wファイナル???
 
 去年のシルバーが、今年もWファイナル???
 
 おいおいおいおい!  となる。
 で、もうそっからが、たまたまなんだろうけど、運営側の悪意としか思えないような衝撃怒涛の展開で、協賛企業賞W受賞の上條さん、長井さん、内野さんといった、SKATでよくお名前を見る方ばかり。特に、密山さんのトリプルファイナルはもう、机に突っ伏して腹抱えて笑うしかない。
 なんなんだ?  フタを開けたら、結局、強敵しかいないじゃんか! と。
 
 なんでしょう?  一気に絶望に押しつぶされたと言いますか。
 
 一個だけならまぐれでもファイナリストになれるでしょうが、W・トリプルファイナル、協賛企業賞との「二刀流」となると、もう実力に裏打ちされて、来るべくしてここに来た、としか思えません。
 
 なんなんだ?  今年の宣伝会議賞、レベル高すぎない?
 
 と、去年もよく知らないのにそう思ってしまいました。
 ・・そうか、今年は第60回大会で節目だし、今年こそは卒業してやるぞ、と、みんな格別に気合を入れてやってきたんだな・・。
 ポッと出野郎の僕でもそう感じざるを得ない気合と熱量でした。
 
 と同時に・・。
 
 なんか恥ずかしくなってきて。
 
 こんなすごい人たちが、こんなに気合を入れてここにやって来ているのに、僕は大した努力もせず応募して。
 偶然たまたまここに居合わせているけど、そんな志で勝てるわけないじゃないか!
 本数の問題じゃなくて。
 もちろん本数のこともあるのですが、そうじゃなくて、普段からの姿勢。生きる上で普段からコピーに対して向き合う姿勢がもー、根本的に違う。
   なぜか、その作品をひとつ見ただけで。
   画面に映し出された彼らの表情を見ているだけでそう感じました。
   冷水を頭からぶっかけられたような気持ちになって。
   なにか、急速に熱が冷めていくのを感じました。
   コピーに対する熱でなくて。場に対する熱。
   すくなくとも、「やった、ファイナリストだぜ!」とかいう浮かれた気持ちはもはや毛頭なく。
   こんなふざけた覚悟でその場にいる自分が情けなくなってきて泣きそうでした。
 
   すごいよね。
 
 ちょっと前のSKATの表紙に「そのコトバには、100万円以上の価値がある」という文章が載っていましたが、まさにそれです。
 この人たちは100万円以上のモノを求めてやってきて、今、この場に立っているんだな。
 
 そこからはもう、贈賞式というのは僕にとっては「他人事」になっていました。
 僕以外の他人が受賞するのを眺めて、ただ拍手するだけの要員と化していました。
 もちろん、審査員の方が結果の書かれた紙に目を落とすたびに、偉そうにドキドキはしていたのですが、やはり僕の名前は呼ばれることもなく。
   自分がファイナリストになった課題の「社会構想大学院大学」の名前が出たとき、一瞬だけドキッとしましたが、やはりというか順当にというか、同じテーブルの向井さんが受賞し、おなじ課題で大魚を釣り逃してしまった丹羽さんと、デヘヘヘ、と顔を合わせて苦笑いをしておりました。
 向井さんはその後、セブン銀行の課題でも受賞され、Wファイナルのチケットを両方ともシルバーに変えられていました。
 トリプルファイナルの密山さんも2枚をシルバーに。
 もはや圧巻として言いようがありません(ご本人たち的にはもちろん、もっと上を狙っていたでしょうが)。ここに勝つべくしてやって来たという風格を感じました。
 こうして、7つのシルバー枠も終了し、残るは眞木準賞とゴールド賞、グランプリの枠だけとなった。
 
 と、その後、眞木準賞に輝いた二宮さんのスピーチを聞いて、また背中が凍りつくこととなる。
   司会の方(贈呈者の方だったかな?)から
「あなたにとって眞木準さんとはどんな方でした?」
 と訊かれて、二宮さんは泣きながら眞木準さんへの想いを語っていたのだけど、これ、万が一僕になっていたら(選ばれた作品の気風からして絶対にありえないですが)、すいません、よく知らないんです・・って答えることとなり、その場の空気を凍らせてしまっていたではないか😅
 うーんやっぱりライターの方についても勉強しなきゃなぁ、と思わせられる一場面でした😓
 
 その後、CMゴールドは紀川さん。
 僕の作品はCMではないわけだから、あとはコピーゴールドとグランプリに運命を託すしかないのだけど、コピーゴールドに選ばれたのは石川さん。ごめんなさい、You Tubeは諸事情により見れないですが(音だすと家族に変な目で見られるので)ブログはよく拝見しております。
 そしていよいよ残るは賞金100万円、グランプリ!
 
 諦めた、とは言え、やはりドキドキはします。
 
 名前呼ばれろ~呼ばれろ~
 早くこの狂った世界から抜け出させてくれ~
 
 もはやどっちかというと、希望というより切望です。とにかくこのイカレた人たちが集う世界から抜け出させて欲しかった。もう嫌だ。怖い。頭おかしい、この人たち(笑)
 
 しかし。
 
 願いもむなしく。
 
 審査委員長の仲畑さん、
「えーっとグランプリはね、あの~、あれだ、」
 みたいな感じで、壁に貼られた僕らの作品の垂れ幕を指さして、
「ほら、右から6番目くらいの、あれ」
 みたいな感じで発表したのです!
 
 えっ?  もうその時点で俺、違うじゃん!
 
 俺の作品、もっと真ん中あたりだったもん!
 
「あの、三浦工業のやつ」
 
 
 ・・素人だからね、この際ちょっと言わせてもらいますけど・・(炎上するかなー? 嫌だなー)。
 
 

あの発表はどうなのかしらん? と。


 
 参加者はもちろんのこと、見てる人たちも一番興味がある、クライマックスの場面じゃないですか?  ちょっとあの、腰砕けになる発表って・・なんなんだろう? と😅

 ・・この辺にしとこ。

 
 とにかく、グランプリは守本さん。
 守本さんは宣伝会議賞初参加ということで。これまた驚いてしまいました。作品も「夢で見た」というなんともスピリチュアルなお話で、うーん、持ってる人ってこういうことなのかな? と考えさせらました(「盛ってる人」って変換されてえらいことになるところだった😂)
 
 ということで、僕は賞にはなにも絡めず。
 まぁラッキーファイナリストとしては当然の結果と言えば当然の結果なのですが・・。
(初参加の守本さんでも600本応募した、という話ですから)
 いい夢見させてもらったよ・・という感じでしょうか(泣)


   次回は懇親会の様子。
   たぶん、読んでもなんの参考にもなりません(笑)

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