「鶴子」
その①
夏の昼下がり、クーラーの効いた部屋でウトウトしているとインターホンが鳴った。
映像を確認すると女がひとり黙って立っている。
「あ~いつもの宗教の勧誘か新聞のセールスだろうな」と思って無視していると再びインターホンが鳴った。
「めんどくせーな」と呟いて、文句言ってやろうと思って玄関に向かった。
ドアを少し開けて「なんです…」と言いかけた瞬間、女は勢いよくドアを開けてズカズカと入ってきた。
「やられた!」完全になんらかの犯罪に巻き込まれたかと思って身構えた。
女はヒールをポイっと玄関で脱ぎ捨てると私の横をすり抜けてリビングに入っていった。
大声で助けを求めようかと思ったが、恐怖で声が出なかった。
後を追いかけて行くと女はリビングの床の真ん中にゴロンと寝転がり「わたしのこと好きにしていいから、しばらくここに置いて」と言い放った。
「警察を呼ぶ前に出て行ってくれないか?」と頼んだが
「私が大声出して助けを呼んだらあなたが困るんじゃない?」と言われ黙り込んだ。
この問題をどうしようかと色々考えをめぐらせているうちに女はスヤスヤと眠ってしまった。
この隙に通報したり、妻に連絡して助けを求めることもできたが色々と面倒なことになっては後々大変なので穏便に出て行ってもらうように説得することにした。
気持ちよさそうに寝ている女は30代前半だろうか。
ショートカットで夏らしい白っぽいノースリーブのワンピースを着ている。
スマホと財布、化粧道具くらいしか入らなそうな小さめのハンドバッグを持っている。
色白で目鼻立ちのはっきりした美人だ。
身長は160cmくらいだろうか、手足が長くスラっとした印象だ。
なんとか情報を集めようと観察しているうちに女が目を覚ました。
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