宅八郎が死んだ。
宅八郎が死んだ。57歳だった。はやすぎる死だ。
宮崎勤も麻原彰晃も死んだ。サブカル界隈に巨大なつめあとを残した人びとだ。まあ、別に、宅八郎は死刑囚ではないのだが。
何故か、今、私の手もとには宅八郎の『イカす!おたく天国』(太田出版、1991年)がある。ブックオフの値札がついているという事は、古本をまとめ買いした時にまぎれ込んだのだろう。
読みだすとなかなか面白い本だ。実相寺昭雄のインタビュー。佐川一政との焼肉対談。そして、香山リカへのストーカー行為。
だが、私が一番気に入ったのはオウム真理教の取材だ。宅八郎はオウムについてこんな風に書いている。
〈こうしてオウム真理教「おたく」訪問は終わった。"狂気の集団"といわれるような「危険性」は、ほとんど感じなかった。
ただ怖いといえば、教祖である麻原にではなく、むしろ彼をとりまく側近。幹部たちのほうにこそ、何らかの「怖さ」があるようにボクは感じた。〉(前掲書48ページ)
結局、オウム事件の真相は不明のまま、安倍政権が麻原彰晃を処刑した。つまり、永遠の謎だ。
そういう状況では、宅八郎の感想にもいくらか価値はあるだろう。
私は死後の世界など認めない。だが、もしも、あの世におたくたちの天国があるとするなら、宅八郎と宮崎勤と麻原彰晃は顔を合わせているに違いない。そして、自らの人生と『ウルトラセブン』12話について語り合っている事だろう。