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“恐怖”から始まった「ユーザー感覚」への道標

2017年のサービスリリースから約4年半。プラットフォームサービスであるPocochaの本質は、“常に正面からユーザーと向き合うこと”にあります。それがあるからこそ、今現在のPocochaが存在していると言っても決して過言ではありません。

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Pocochaでは、ユーザーに向けたアンケートのみならず、運営とユーザーが直接意見交換をし合うことも当たり前のように行われています。ユーザーというよりも、共にプラットフォームを創造するパートナーという存在なのです。

プラットフォーマーであるPocochaが、なぜここまでユーザーと向き合い続けるのか、そしてそこに拘り続けるのか。Pocochaのスタンスであり揺らぐことのないポリシー、そしてここに至るまでの苦難や葛藤をご紹介します。

【本記事の登場人物】

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▶水田プロデューサーの個人noteはこちら

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*POCO BASE(ポコベース):
Pocochaの「POCO」+基地の「BASE」=「POCO BASE」。「Pocochaをもっと楽しみたい!」「一緒に盛り上げたい!」と思っていただいているユーザーが集う。集まった方々が「学べて」「交流できて」「Pocochaの未来を作る」ことができるような場所を目指し、様々なテーマで開催するコミュニティイベント。
*POCO FORUM(ポコフォーラム):
Pocochaの企画や機能といった最新情報について、運営からユーザーへ直接伝える場。企画の背景やこれからのPocochaについての思いを話し、参加者の皆様からいただいた疑問・質問にもお答えする。


「もう来月にはクローズする」

Pocochaは創業当時から常にユーザーに対して真摯に向き合い、その「ユーザー感覚」を得ていたわけではありません。

当初は、Twitterでのユーザーからの問い合わせへの対応が疎かになってしまったり、今振り返ると、ユーザーの声を拾いはするものの、実際のアクションという部分では量も質も十分ではなかったと思います。iOSアプリのリリースから数ヶ月後、Android版のリリースを控え、社内では着々と準備を進めていた頃、ユーザー間では「来月にはPocochaはクローズするらしい」「全然流行っていない」などの噂がまことしやかにささやかれ、ネガティブな意見も日常茶飯事的に運営に向けて投げられている状況でした。

水田:Android版が出るタイミングなのに、来月には終わるって言われてましたね。あの頃、LMP(※ライバーマネジメントプロダクションの略称であり、ライバーをマネジメントするインフルエンサー事務所)周りの報酬を見直したことでライバーが減少して、3〜4ヶ月の間ずっとKPIも下降していたので、そのトレンドをユーザーも肌身で感じたのか、毎月「もう終わる」と言われていました。

中川:その頃は今現在の「お知らせ機能」も運用されていなかったし、Twitterアカウントは運用停止していました。全くユーザーとコミュニケーションが取れていない状態です。
そこでまず、お知らせをちゃんと出す、Twitterのアカウントを復活させる、という基本的なことをやりましたね。
他にも、Pocochaで使われるNGワードをアップデートしたり、実例ベースでのルールの見直しも実施したんですが、NGワードはアップデートしすぎてしまい、逆に低評価になってしまったこともありました。この頃はまだどうしたら良いのか分からず、かなり手探りでしたし、葛藤の連続でした。


直接会うことでしか感じられない熱量

中川:ユーザーとのコミュニケーションの重要性を感じてきた頃、「スキルアップセミナー」というユーザー参加型の施策を実施しました。
「スキルアップセミナー」は、「 Pocochaはどのようなプラットフォームとしての成長を目指しているのか?」「リスナーやファンコミュニティを大切にするライバーの振る舞いとはどういうものであるべきか?」など、Pocochaが目指す世界観や、Pocochaライバーとしてのバリューを追求するような様々なテーマに対して、ライバーと共にディスカッションしたり、プラットフォームとして開示できるデータなどを直接お伝えしていく施策です。本会はクローズドな取り組みで、毎回2〜5人ほどのライバーをオフィスにお招きして、2時間ほどかけてコミュニケーションしていました。

その中で、実際に参加したライバーから「私たちライバーだけではなく、リスナーにもちゃんと情報開示して欲しい」を言われたんです。
それがきっかけとなり、直ぐに「POCO FORUM」というコミュニティ施策を始めました。これらの施策を繰り返し行うことによって、徐々に徐々に今現在の“パートナー”とも言えるような信頼関係が築き上げられてきたと思っています。
今では、ユーザー自身が積極的に他のユーザーを応援したりサポートしたりする場所にもなっています。Pocochaのルールを見ておらず、それに抵触していたり、非推奨の配信を行っているライバーを発見時に、「もっとルールの告知を積極的にできないか?」「私達も一緒に啓発していきたい!」などというように、ユーザー自らがPocochaのためにと発言・行動してくれているんです。いつも共に考えてくれる。熱量が凄いんです。

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ユーザーに会うことの恐怖

中川:実際にユーザーに会うのは、ものすごく緊張したし、ものすごく怖かったです。
当時私たちは、多くのユーザーは運営に批判的だと思っていたし、「サービス終了」という事実とは異なる情報を吹聴するユーザーの集団は、運営に対して悪意や敵意を持っているだろうと、そういう先入観を持っていたんです。
最初はどんな罵声が飛んでくるか不安で、司会をする私の声は参加者に聞こえないぐらい小さな声になってしまい、水田に「はい、声ちっちゃいんですけどね。もうちょっと大きい声で言ってみましょう」なんて言われながらやっていました。

水田:中川さんは本当にひよこみたいだった(笑)。

水田:そういう私も、ユーザーの中でも特にリスナーに会うのはとにかく本当に怖かった。怒鳴られる覚悟もあったし、もしかしたら殴られたりするんじゃないか、とすら思っていましたね。「Pococha終わるぞ」とか、ネガティブな意見も含めて強い思いを持ったユーザーも多く招いていたし、みんな本当に敵意剥き出しだと思っていたので、会うのが怖かった…。

中川:当時、揉み合いの喧嘩になったらどうします?って話までしていましたよね。

水田:若手で筋肉ある後輩が護衛に付いてもらえば、最悪の場合でも大丈夫なんじゃないか…という話も冗談半分本気半分でしたりしていたね(笑)。


自信も自負もない…ただ自分たちを守っていただけ

水田:当時ユーザーに会うのが怖かったのは、突き詰めると、社会的に意味のあるサービスを提供してる自信も自負もなかったからだろうなって、今だと思います。

最初の頃はライバーに対しては、今と変わらず職業としての「ライバー」を最終的に確立できるといいよね、と言ってはいるものの、社会に胸を張れるサービスなのか?と問われれば、はいそうですと言えるだけの自信はなかった。

ユーザーへのベネフィットは一応追ってはいる「つもり」でした。ただ「つもり」だったんです。だから、ライバーもですが、特に時間もお金も費やしてもらっているリスナーに会うことに、すごくうしろめたさを感じていました。
ユーザーに向けたコミュニティ施策と言いながら、真の意味でユーザーと向き合いきれてはいなかった。運営とユーザーという間で、その心の繋がりを阻害している溝や壁といったメタファーに対してきちんと向き合えていなかったんです。当時リスナーと会ってるプラットフォームなんて全くなかったですし…。


「それがユーザーのためなら、泥臭くても、全てやろう」

水田:コミュニティというものを構築していく上で、当時、私の中ではサポーター制度とかフォーラムなどのブループリントはあったんです。少人数と深く付き合ってコミュニケーション交わすんだったら「サポーター制度」だし、広く情報を包括的に発信するんだったら「フォーラム」が良いかなとか。

また、ライバーもリスナーもそれぞれ抱いている課題感とニーズが違うから、ライバーとリスナーは分けないとダメなんじゃないかっていうのも考えていました。なので、ライバーとリスナー、深さと広さでマトリックスにすると、施策を4つ打たないとダメだとなるわけです。
でも、4つはちょっとやりすぎなんじゃないかって思ったり、もっと効率的で合理的なやり方があるんじゃないか…とか、とにかく思考を巡らせながら悩んでいたんですよね。

それを原田さん(DeNA常務執行役員 CSO 兼 事業戦略統括部 統括部長。Pococha創業時の事業責任者)に、思考の整理として全部話したんです。
「サービスが終わる」という噂がユーザー間で広がり、皆がそれを真に受けている現状やその背景を踏まえて、複数の施策を考えたんですが、どの施策が最も良いのか?その良し悪しの判断ができず、一つに絞り込めないんです…って。

そうしたら原田が「それがユーザーのためになるなら、どの施策と絞らずに、泥臭く、すべてやろうよ。」
と。これが本当に名言でした。身震いしました。鳥肌立つくらい。
「確かにそうだ!!」ってなって、それですごいスッキリしましたね。すぐに中川に「コレ、全部やろう!全部やれるよ!」って言いましたよ。DeNAという企業規模の責任者がこんなことを言ってくれるんだという驚きと喜びがあり、私も自信を持って施策を押せました。

中川:数多くの施策を全て実施していく中で、今現在のPocochaのコアなバリューとなっている気づきや学びを得ることができましたね。
例えば、ユーザーからもらった質問や意見の全部をスプレッドシートに書き起こして、その全てに対してどう捉えてどう対応するか、逆にこれは対応しないとか、その回答を一つ一つ書いてシェアしたりしましたよね。ユーザーが日頃どのような点に不満を持っているのか?何を望んでいるのか?ユーザーの視点や思考を漏れなくキャッチアップして、それを単中長期的にどのようなPocochaのバリューに繋げていくのか?一つ一つ考えていきました。これを真摯に泥臭くやったことって、Pocochaがユーザーに向き合う象徴的なアクションの一つな気がします。

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水田:結局、言ってることは「ユーザーベネフィット」の話と変わりはないんですよね。ただ、言ってることは同じでも、言われてる側への浸透度が低いと本質的な理解ではなくて、表面的になってしまう。私も当時は「ユーザーベネフィット」を語っていても、結局自分の安全圏内からしか語れてなかったんです。
マトリックスとか広さと深さとか、そういうのはどうでも良くて、それが「ユーザーベネフィット」になるかどうか、ユーザーのためになるのかどうかだと言われて、「確かに、どの施策もユーザーベネフィットに繋がるには間違いないから、全てやれば良いんだよな。」と腹が据わった瞬間でした。

リーンな仮説検証の重要性はプロダクト開発においては、一定実践できている自負がありました。しかし領域が変わると、例えば今回のようなユーザーコミュニケーションの場では、誰しもが丁寧に慎重にやろうとするけれど、慎重にどうやるか?を議論するよりも、ユーザーのためになると思ってするんだったらさっさとやるっていうスタンスが決まりました。この気づきがなかったら、私は今でもユーザーには怖くて会ってないと思います。


ユーザー感覚なしに意思決定しない

中川:Pocochaのコミュニティチームでは、「ユーザーと触れ合う機会を数多く設け、ユーザーの感覚を肌感覚で養っていくこと」を絶対にやらなければいけないこととして設けています。また、これは、どこまで突き詰めても完了があるものではないので、永遠に向き合い続けるものです。

水田:ポイントは3つあります。1つは「会って話せるユーザーの温かさに安心せずして、居心地の良い場所に定住することなく、不平不満を抱えたユーザーにも接して、運営が耳を塞ぎたくなるようなユーザーの声や出来事をきちんと認識する」ことです。
今は大多数のユーザーが温かいし、運営が触れ合っているユーザーを見ると「Pocochaって結構良いコミュニティになっているな」と思ってしまう。勿論それも真実ではあるのですが、まだ半ばなのに「出来上がった」という感覚に陥ってしまうのは良くない。お問い合わせの内容や通報内容、耳を塞ぎたくなる出来事にもきちんと触れなければいけない。ライバーをマネジメントする事務所から言われているような噂や、世間からリスクだと言われていることとかも含めて、そういうところから目を背けてはいけない。

2つ目は「ライバーやリスナーはなかなか本音を言わないと知っておく」ことです。SNS上などでは、ライバーはリスナーに見えてる場所だからその視線や反応を自然と意識するし、運営や事務所の前では、思っていること感じていることの100%全てさらけ出し難い。
だからこそ、1人のユーザーと長期的に接したり、地道に丁寧に見つめていくことが重要で、そうすることでそのユーザーの見えない部分が徐々に見えてくるんです。

そして3つ目は、ロングテールかつ多様性を重視するプラットフォームだからこそ、私たち運営であるプラットフォームオーナーが行うべき使命として、「ユーザーの多様性をユーザーそれぞれに認識してもらう架け橋となる」ことが大事かなと思っています。

多様性を重視するプロダクトであればこそ、多様なユーザーが居心地のよいコミュニティを実現していく中で、自分と異なる人々の存在というのはユーザーの視点からは見え難くなったり、想像がつき難くなるものです。
ただ、その想像力を失い、自分たちと異なるニーズや課題を感じる人々の存在を忘れてしまうと、「裾野を広く包含する真の多様なプラットフォームでありたい」という思想と、そこで日々を過ごすユーザーとの間に大きな認識の隔たりが生まれてしまう。
最初は小さな歪でしかないかもしれないけど、いつしか大きな亀裂や分断に繋がっていく可能性があると思っています。

だから、思考の整理として、構造とかマッピングしていくことは可能だったとしても、最終的には多様な「ユーザー感覚」を持ってのみ意思決定をすることが大事なんですよね。それが「ユーザーのためになるなら、全てやる」ということは、私の中で、Pocochaの中で、決して忘れてはいけないことなんです。


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