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『すべてここにある』 てくてく通信+🎈 #36

こんにちは、英会話Oneのただともこです。読む瞑想マガジンへようこそ。
今月のテーマはこちら。
あなたの毎日の底に静かで気持ちのいい音楽が流れますように。


すべてここにある

2週間で格段に暖かくなりました。仙台に春が来ましたね。

今日は、豊かさについての話。

私は10年前、展覧会をしたことがあります。自分のお金で、自分でアーティストに依頼して、自分のテーマで、住み込みで1ヶ月展覧会をしました。ブログが残っています。こちら。ジカンノハナ。

10年前、事務仕事をしながら、週に3日、横浜に通い、時間についての展覧会を開きました。とても面白い経験でした。淺井裕介さん(https://twitter.com/asai_yusuke)という作家さんと狩野哲郎さん(http://www.tkano.com/)という作家さんと一緒にやりました。3年間計画を立てて、狩野さんとは毎週のように1年くらい会いながら、たくさん話をして、テーマを伝え、展覧会をしました。この時、私は初めて、自分の足で、自分の名前で、社会に立つことをしました。若干34歳。遅いデビューですが、とっても怖かったのを覚えています。

展覧会の詳しいことは、アトリエに記録冊子があって、丁寧に扱ってくださる方には、貸し出しができるので、それを見てもらうか、ブログを見てもらうとして、今回はこの時に学んだことをお伝えします。

オープンより前に、搬入という準備期間があります。その期間中、淺井くんと狩野くんと同じところに住み込みながら、作品を作る準備を整えていったのですが、わずか2日で、彼らが開けられる扉と私が開けられる扉に大差が出てしましました。コミュニケーションスキルが格段に違ったのです。そして、何か足りないと、すぐ、買おうとする私を見て(予算もないのに)、二人は「必要なものはすべてここにあるんだよ」と教えてくれました。だから、買わなくても、あるものを組み合わせて使えば、絶対に出来上がるよというのです。

一番よく覚えているのは、展覧会の看板です。看板がなくては人が入ってきません。でも、私には、看板を作る材料も、技術もありません。企画者としては、とても困った状態になりました。でも、私たちが住み込みをしていた場所はアーティストがたくさん住んでコミュニティを作っている場所でもありました。淺井くんか狩野くんのどちらかがそこにいる作家さんを連れてきてくれて、その作家さんに相談するとほんのわずかなお金で、三角立て看板を1日で作ってくれたのです。それに、印刷した題字をくっつけて、オープンしたらそれを出すようにしました。注文したら、何万とかかっていたし、何日もかかっていたものです。とっても親切にしてもらいました。

その時から、私は「必要なものは全部ここにある」という設定から動くようになりました。なぜならそれは本当だからです。頭の中をその前提にして動き始めると、するするとドアが開き始めます。そうやって、工夫して、扉を開けて、助けてくれる人が現れ、必要なものを代用したり、作り出したりする世界の楽しさを知ったのです。

例えば、私がイベントをやろうとして、いすが足りなかったら、今なら、大家さんがやっている保育所からいすが借りられないか聞きます。あるいは、近くの知り合いのやっていた元カフェスペースを時間単位で借りられる交渉をします。私にとって、買うというのは、最後の手段です。私のものではなくても、貸してくれたり、助けてくれたりするリソースは半径5m以内にいっぱいあります。私の頭はそういう設定になっています。

アーティストというととても華やかな職業に見えるかもしれません。私たちが泊まっていたのは、古い家屋を改造した、壁の薄い部屋でした。寒かったです。シャワーがやっと出るかなというところでした。それを見て躊躇している私を見て、狩野くんが、「僕たちが普段レジデンス(住み込みをして作品をつくること)をする場所はもっと簡素で非衛生的だよ。虫が出ることもあるよ。これはとても恵まれた環境だよ。」と言いました。今ならわかります。それが本当だということも、そのアーティストの孤独感も、努力も、彼らがなぜ、それほど工夫ができるようになったのかということも、それで生きていこうとしているのかということも。

狩野くんや淺井くんが同じ地域にあるカフェの店員さんと話をすると場所はなごみます。彼らは、自分たちが何者で何をしに来ていてどうしたいのかということを和やかに伝えます。そして、お互いにメリットがあることをやりに来たのだということを伝えるので、楽しいお客様として迎え入れられるのです。私は、そのころ世界中は敵だったので、怖くて怖くて、そんなことはできなかったし、店員さんの不愛想な顔を見たら、500円払って珈琲を飲むのが精一杯でした。そんな風に、彼らは、世界中で扉を開けていきます。それが彼らの仕事で、得意技で、生きる術なのです。

展覧会のテーマは「ジカンノハナ」でした。それは個人が持っている時間の起源をあらわにしたいという私のテーマでした。私はこの時、本当に時間がそこら中に生まれて、咲き誇っているのを見ました。展覧会はどんどんどんどん大きくなって、町中に4か所も展示場所を獲得しました。私は誰かが私のために、こんなにも一生懸命一つのことに取り組んでくれたのを見たのは、これが初めてでした。一生ものの宝物をもらったと思っています。

ジカンノハナこそ、「すべてここにある」から始まるものです。ジカンノハナは、すべて、私の中にあって、いくら外に買いに出ても見つからないものを、私は求めていたのです。そして、その時は気が付きませんでしたが、それはきっと、他の人(淺井くんと狩野くん)にとって来てもらって運んできてもらって、はじめて、手に入るものでもあったのだと思うのです。そういう人に対する信頼の中から、生まれるのがジカンノハナだったのだろうと思います。そして、さらにそれを多くの人と共有したことで、そのことはより豊かに、より身近に、より繊細に、より正確に、より確実に私の中に残ったのだと思います。

そして、私やあなたが今欲しいと望んでいるもの、必要だと思っているものの、多くは、自分の家の中や環境を見まわして、工夫して組み合わせれば、出来上がるものなのだとも思います。その術を知っていることは、心が貧乏ではないということです。どんな場所からも、自分に必要な環境を作っていける術を持っているからです。アートというと、難解なものに聞こえるかもしれません。でも、私にとって、アートとは、こんな風に生活に根付いた、ごくごく普通の大事な考え方を教えてくれる、生活に役立つ術です。豊かというとき、私が思い描くのは、大金持ちではなく、この技術をふんだんに人と自分のために使う人たち行為を思い描きます。

あなたにとって豊かとはどんなことを指しますか?


ちょっとしたおすすめ

アートみやぎ2019
今日のお話に出てきた狩野哲郎さんが
今、宮城県美術館でグループ展をしています。

先日私も見に行ってきました。
面白い展示内容になっています。
そのほかにも4人の作家さんが展示しています。

アートや舞台は心の食べ物です。
今、役に立たなくても、
10年後自分を豊かにするために、たまのお休みに美術館に足を運ぶのは
舞台に足を運ぶのは素敵なことです。

行った人はぜひ報告してください。
感想をきかせてください。
4月7日まで。


編集後記

教室の近くにある、麦屋さんというパン屋さんが今月いっぱいで閉店してしまわれるそうです。とても楽しみにパンを買っていたので、残念です。またパンを焼く生活に戻ります。そして、高橋広さんが主宰しているランニングクラブに参加して、走り始めました。とってもいい先生です。楽しいですよ。春です。皆さんも何か始めてみませんか?

(初出:2019.3.9)



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