【オール2落ちこぼれ女子が心理士!?】希望の次は崖から転落!?|大学院編#1
「う、受かっている…」
臨床心理士指定大学院。
どの大学院もほぼ倍率3倍以上。
臨床心理学はマイナーな学問であるが、目指す人は意外に多い。
それに対し、大学院の入学募集定員は少ない。
「小中高とオール2か3だった私が合格だと…?」
2016年春。
私の人生で奇跡が起こった年。
『ゆりなさんは患者さんを下に見てるの?』
突き刺さるような言葉。
目の前には顔が整った男性が脚を組んで座っている。
N先生。
実習先の病院の臨床心理士。
私の実習担当の大先生だ。
この人の攻撃力はやばい。
何人もの実習生が瀕死の状態にした噂は有名だ。
「けっ、けして患者さんを下に見ていません」
震える声で返答する。
『患者さんが弱い人間だと思っているの?弱い人間だと思っているから、最初から何もできない人間だと決めつけてるんでしょ?だから、厳しい言葉をかけられないんでしょ』
「……!?」
声が出ない。
もしかして
そうなのかもしれない。
私は心の底で患者さんを弱いと決めつけているのかもしれない。
患者さんの未来を
ポテンシャルを
最初から否定していたのかもしれない。
「すみません…」
なんて厳しくて、核心をつく優しく強い先生なんだ。
そして
なんて最低な自分なんだ。
2016年6月。
修士1年目。
実習先でいい大人が恥ずかしげもなく人前で涙を流す。
「すみません…よく考えます…」
ダメな自分が
悔しくて
悔しくて
私、本当に臨床心理士になれるのかな。
このままオール2の人生なのかな。
この先が真っ暗闇で
途方に暮れた帰り道であった。