しんやの餃子世界紀行 Vol.56
「始まれば必ず終わる日のこと」
東京から岡山に戻ってすぐ、いつもの表町は僕の働く場所ではなかった。
岡山駅から岡山城を分断する大きな道路を挟んで東側だけが封鎖された街。
賑やかな西側と死んだ東側の矛盾を毎晩感じながら、僕と守屋は奉還町から表町までの道を発泡酒をワンカンしながら歩いて帰るのがこの1週間の日課であった。
いつもより長い帰り道は、晴れの国にふさわしく一度も天気に裏切られることなく過ごしやすく酒がうまい温度を保ってくれる。
ただ今日はその道を歩いて帰ることはない。
KAMPのメンバーとタクシーに乗り込んでス豚ズへ向かう。
守屋の好きな店に向かう。
この1週間は学びの深い1週間で、何よりKAMPは、スタッフもお客さんも自分を持っていた。
外から見てカッコいいだけでなく、内から滲んでいるんだって気がついた。
クリエイティブでいないといけないと思って日々を過ごさなくても、クリエイティブは空間から滲み出る。
気負って出るようなもんでもない。
いや、出ない人からは永遠に出るようなもんでもない。
どちらかと言えばクリエイティブから程遠く、空間頼みで生きてきた人生だけど薄暗いあの空間が好きな人種であることは間違いない。
北島さんはおおらかで、締める時はしっかりと締めて、どっしりと構える姿がカッコよかった。
ともさんは聖母のような優しさと肝が据わっている両面を持っている。
ぶっちーやハイカロは明るくキャラが濃いが芯がある。
北島さんの教えに一生懸命ついて行き、かつ自分のありのままを働きながら表現していた。
いのまゆちゃんやこころちゃんはほぼ初めましてのしんやとすごく仲良くしてくれた。
すごく働きやすい環境を作ってくれて感謝しかない。
ひかりくんやあらたくんはまだ初めましてだしあまり話せなかったけど、これからKAMPに染み渡っていくんだろうなって思う。
良い組織と良い環境に、感化されて。
ああこのイベントが終わらないで欲しいと思うんだけど。
始まったものは必ず終わるのだ、逆に終わりに向けて成果があったと思えないとやった意味がないから。
こんな気持ちになれたのだから、岡山の謎の結界にありがとうを言うしかない。
後味に浸るように参加した打ち上げで、酔っ払って自分の話ばっかしすぎただろうか。
笑い話に変えられただろうか。
上手く笑い話にできた話も、2年前を考えたら上手に笑えない話だ。
それが時間と共に消化されてしんやの自己紹介になったなら幸せ。
終わった話から始まることもある。
カレー対餃子の対決は一旦持ち越され、また必ず決着をつける時がくる。
その時もまた、決着がつかなければ良いと思うかもしれないが。
必ずまた合間見える時が来る。