私が救えなかったあなたへの手紙
私が救えなかったあなたへ
あなたと過ごした横浜の街も
変わってしまいました。
あなたはまだこの街にいるのだろうか?
いつかまた巡り会うのだろうか。
・・・
大学に入って最初の友だちだった。
帰り道まで一緒で、
よく終バスの時間まで
ファーストキッチンでポテトを一緒に食べながら
人生のことについて語っていた。
人生がなんなのかも
ろくに知らない未成年が二人して
大袈裟に。
今でも私は
あなたに通院を勧めたことを後悔している。
不完全だったあなたは
不完全なりにバランスをとって生きていたのに。
健康の代償はあまりに大きかった。
それなのにあなたは
いつまでも私に感謝してくれて。
むしろ私は罪人だったのに。
あなたを壊したのは私だったのに。
卒業式。
私は証書を持ってさっさと帰って。
あなたはその後を追いかけてきて、
喫茶店で一緒にケーキをたべた。
けれど、いつまでも慕ってくる貴方に
私はいつまでも罪を重ねてしまう。
贖罪のためにあなたとずっといるべきだったのかもしれない。
でもそれは私の罪滅ぼしであって、
決してあなたのためにはならないことを、
私は感じていました。
あなたはいつまでも昔のままだった。
私は変わってゆく自分を自覚していた。
いまでもこの選択が間違いだった気がするのです。
謝って昔の通り仲良くしようじゃないか?
そう思うこともあるのです。
でもそれは違う。
どちらを選んでも
それは正解であり、間違いになるのだと思う。
選択を迫られた時点で敗北が確定するのだと、
そんな話をしていたのは太宰治でした。
私はあなたの敗北者。
貴方のまっすぐな心に。
今その負けを認め、
潔く謝りたい。
ごめんなさい、と。
いつまでも不甲斐ない私より。