「希望にしては安すぎる」ふりかえり
こんばんわ。ポッキリくれよんズの式部です。
note初投稿。
前までははてなblogだったのですが、ポッキリの公式サイトも更新したことですし、心機一転ということでnoteに移行してみました。
初投稿のお題は、11月下旬に行った、直近の公演『希望にしては安すぎる』を振り返ろうかなと。もう一ヶ月も経つので、すごく今更感が否めないのですが、まあ記録として。
まず、前々回公演の『クロニクル』の話からするのですが、その時の公演の感想として、「面白かった」っていうのが割りかし多くて。「面白かった」ってとりあえずアンケートで書いとく無難な回答ベスト1なのですが。まあ僕は真面目に受け取りまして。公演が始まる前まではそういうことを言われると思わなかったし、けっこう『クロニクル』って作品がぼく自身のことを、けっこうマイナス面多めで、板の上に載せた作品なので、ネガティブな感想が多いのかな、暗い、重い、湿っぽいってめっちゃ言われるのかなと予想していたのですが、予想に反して「面白かった」って感想が見られたので、「あ、これって面白いんだ」って気づきました。『クロニクル』はあんまり書いてる時に「面白さ」を狙っていなかったです。それよりもすごく自分のなかで伝えたいことがあって、それを伝えるってことをすごく大事にしていました。
ポッキリの『クロニクル』以前の公演は、けっこう”形式”だとか”手法”とかに拘っていたんですけど、やっぱり大事なものっていうのは「何を伝えたいのかだ」という至極真っ当なことに今更ながら気づきまして。「面白い」とかってそのあとの肉付けしていく部分なのかな、と。少なくとも僕の作風は一回、そういうベーシックなものを描いてみるべきなのかな、と。そこが『希望にしては安すぎる』の原点というか、作品以前の下地にありました。
『クロニクル』での発見はもう一つあって、シンプルでも面白いものは作れると。正しくいうと、僕らはシンプルなものも作れる、かもしれませんが。台本を書く身でありながら言いづらいのですが、僕は大変な恥ずかしがり屋でして、あえてテーマをぼかす、たくさん情報をまぶしてごまかす、解釈を観客にゆだねる(というていにする)ということを割とやっていまして。ほんとは『クロニクル』もそういう手法を使おうとしていたのですが、前述のとおり、『クロニクル』はこれがやりたいという確固とした核があったので、段々とそれを削ぎ落としていったんですね。その結果、割とポッキリの中ではシンプルな構成になったのですが、この点も割と好評でして。
これも「テーマが大事」っていうことに繋がるのですが、「複雑な構成」だったり、「トリッキーな演出」って先にあるんじゃなくて、やっぱり二の次のことなのかなって思い始めました。
大きくまとめると「テーマなり、心情なり、自分が描きたいビジョンをまず設定する」「シンプルな構成」っていうのは次の作品でも大事にしたいと、『クロニクル』では考えました。
そのうえで、次回作はどうしようかなと。『クロニクル』は自分のことを描いたから、もっと範囲を広げてみたいなと。そこで今度は自分の職場を描こうかなと考えたわけですね。で今まで、舞台、場の設定が頻繁にかわる芝居をやってきたから、今度は一つの場所だけで成立するものに挑戦したいと。そう考えた時に、編集室って色んな人や立場がいるし面白いかもなと、そういう発想で考え始めました。で、まあ登場人物は割とパパッと思いついたし、すごくざっくりとしたプロットはできたのですが、台本を書くのは、まあ難儀しました。マジでこれ何が面白いの???ってずっと考え込んでて、3幕あるうちの1幕目で堂々めぐりしてました。
その堂々巡りから抜け出せたのは、初回の本読みで、役者の声で台本を読んでもらった時でした。役者の皆さんの声で再生された時に、このいやに具体的な編集室の描写はそれだけで成立するのでは、と思えました。
今回はじめましての役者さんは演出のとらちゃんが呼んできたのですが、改めてそのキャスティング力の高さにビビりました。のやも杉山くんを呼んできたのですが、マジでピッタリでびっくりしました。ビッグリスペクト。
2幕目を登場人物の内面が見えてくる構成にしては、とアドバイスをくれたのもとらちゃんでしたね。いつもながら、どこで習ったの?と言いたくなるような的確なアドバイスをくれます。ここでぼくも登場人物がより肉付けされていくような感覚を得ました。今まではこの人物はこういうキャラクターだから、ってあらかじめ決められたことに、如何に嵌めていくかっていうふうに台本書いてたのですが、今回に関しては、書きながら僕自身がああ、こういうキャラなのねって気づいていく感覚がありました。これは脚本を書きながら、並行して稽古していく進め方(あまり健全ではない)だからこそ、出来た部分なのかもしれません。特に、プランナーの西くんと新人の堀込くんの2人きりの会話は稽古してなかったら思いつかなかったかもなと思ったりしています。
3幕目はけっこう書いては消し、書いては消しって作業繰り返しました。プロットだけで3周くらいはしたんじゃないかな。振り返ってみると、今までの公演で、話にオチをつけるってことを如何に回避してたのか、思い知らされました。とらちゃんが終電前のファーストキッチンで脚本会議してた時に「小細工がほんとに効かないね」とぼやいていたのが印象的です。ちなみにラストは役者の亀丸くんが稽古場で思いついたアイデアを採用しました。
全体を通して、今回の作品ではじめて「他者を描く」ってことの一端に触れた気がします。ここでいう「他者」っていうのは、うまく説明できないんですけど、”理解はできるんだけど分かりあえない”、という感覚です。それは僕が、他者、特に職場の人に感じる、好きと嫌い、尊敬と軽蔑、いろんな感情が入り混じった玉虫色の感覚にすごく近くて、そういう意味では、割とやりたいことは達成できたのかもなと思っています。正直、書き終わったあとはこれでいいのか、この登場人物の行動ついてけないかも、と思ったりもしたのですが、その欠けてた大事なピースを役者の皆さんと演出のとらちゃん、演助のあだっちゃんが嵌めてくれました。あらためて、ありがとうございました。当たり前ですが、演劇は1人ではできませんね。
あと、これは観客からしたら関係ないことなのですが、僕は今回、最終稽古の日がすごく印象的で、緊張感がすげえあったんだけど、めちゃくちゃ「芝居が立ち上がっていく」感覚があって、ああいうのを生み出せれば、もっと面白いものが出来上がるんじゃないかなと、僕個人としては思っています。
てなわけで『希望にしては安すぎる』のふりかえりでした。
次回作もそろそろ考え始めようかなと思っていて、前々回、前回と自分に近いところを描いてきたので、今度は自分と距離が離れたところで話を書きたいなと思っています。
前々回と前回の作品を書いて思ったのですが、たぶん僕の作品のコアは「自虐」なんだと思っています。僕の台本のセリフは、まず僕自身に刃が向けられています。次もそこのところ、ブレずに書けたらなあと。あとライトに見れる作品にしたいですね。重めの話が続いたので。
最後に宣伝です。
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期間は12月29日〜1月8日まで。
4年前の作品なのですが、この時は今と違って「面白さ」しか狙っていないです。しかも『希望にしては安すぎる』と同じく、”職場”を舞台にしてるので、作風の違いなんかを楽しんでもらえれば。作品だけじゃない追加コンテンツも用意しようかなと思っているので、よかったら続報お待ち下さい。
リンク↓↓
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来年もポッキリくれよんズをよろしくお願いします。
良いお年を。