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足の裏についた飯粒

小室圭さんと秋篠宮眞子様の結婚については、バッシングに胸を痛めつつ、かと言って心からバンザイできない思いで見ていた。
それでも入籍されたからには、お幸せになってほしいと思っている。

今回のことで、私が一番残念だったのは、小室さんの試験の結果だ。
受かるとばかり思っていたから。

もう今から30年もさかのぼる。
身分も試験のハードルの高さも比較にならないが、今の眞子さんの気持ちが少しだけわかるような経験をした。

当時、夫は設計事務所に勤めて2年目だった。
結婚の準備に追われ、あまり考えていなかったのだが、その年、3度目の資格試験に不合格だった。

今となっては何度もくり返し言うお笑い種であり、若い人たちを慰めるネタにもなるのだが、当時三浪は会社始まって以来だと聞いた。

「資格取れないとどうなるの?」と、若妻の私は訊いた。
「仕事はさせてもらえるけど、任せてはもらえんだろうね」と夫は言った。

それから私は、毎日ワープロに向かった。
(まだパソコンは普及していない時代だ)
過去問題集から数問選び、A4で3枚ほどのプリントを毎日夫に持たせた。

通勤や現場に向かう電車内で、夫はそのプリントを解いて帰宅した。

バブル期の忙しさは今では想像もつかないほど。
深夜帰宅は当たり前(それは今も同じだけど)、徹夜も珍しくなかったころのことだ。 
そんななか、何時に帰ってもご飯を食べるとすぐに、二人で答え合わせをした。

おかげで私まで、ラーメン構造だの曲げモーメントだの、専門用語を覚えるほどだった。

翌年の夏、Tシャツに短パンという試験慣れした出で立ちで、夫は某大学の会場に向かった。

そして、毎日のプリント学習が実り、一次試験合格のハガキがアパートの郵便受けに届いた。
二次試験は仕事の延長のようなもの、難なく乗り越えることができた。

今思っても、二人の生活の最初の試練だった。
4度目で合格という恥ずかしい結果も、教訓を残してくれた。
押し付けの内助の功は、今も何かにつけアドバンテージになっている。(笑)

合格通知を手にした夫が言った。
「この資格も、足の裏についた飯粒って言うからなぁ」と。
取らないと気持ち悪いが、取っても食えないということだ。

よく表している。
本当にそうかもしれない。でも食いつないでくることはできたから。
今の閉塞感のなか、若い優秀な人たちが力を発揮する場が少ない。
自分の代表作と言えるような、いい仕事ができたらいいなと願っている。

そして、あちらの試験もどうか合格されますようにと、祈っている。



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