『いい日 旅立ち』
私たちの世代にとって、アリスと谷村新司さんの存在は大きかった。
早過ぎる別れに、青春の1ページが消えてしまったような喪失感だ。
4年ほど前カルチャーセンターで、歌に学ぶ助詞の使い方についての講座を受けたことがあった。
その中で、一番印象に残っているのが、『いい日旅立ち』の歌詞についての講義だ。
細かい文法の説明は置いといて、あの歌の中の
「岬のはずれに、少年は魚つり」のところ。
少年が魚を釣っていることを説明するなら、
「岬のはずれで、少年が魚つり」をしている、でいい。
【で】と【に】の違いは大きい。
あの歌を聞いていると、遠くに少年らしき子が魚を釣っている、その光景ははっきり見えないけど、想像してくださいね〜とこちらに投げかけてくるようだ。
こちらは、そこに見える静かな光景を思い浮かべる。
また、タイトル「いい日旅立ち」には助詞がなく、そこにも想像する余白がある。
そんな解説だった。
確かに、いい歌やいいエッセイは書きすぎていないというか、こちらに想像する楽しみを残してくれている。
CMに使われ、百恵ちゃんの歌としてどれだけ聞いたか知れない「いい日旅立ち」。
それでも歌の美しさは褪せない。
チンペイさん、早すぎる旅立ちだった。
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