勘違いだよ恋愛は
ある先生に帯同するかたちで、とある秋の例会に3回ほど出席したことがある。
第一部の講演に続き、第二部は和風庭園に会場を移し立食パーティと茶会が催される。
バイオリンや琴が演奏され、華やかな雰囲気だ。
著名人の参加者も多く、知り合いのいない私と友人はまず食べることにした。
夫に話すと、そういう場ではあまり食べないものだよと言うけれど、ここにはここの流儀がある(笑)。会費払ってるんだし。
ホテルのケータリングのステーキやお寿司、その場で切り分けられるパイやサンドイッチ、どれも美味しかった。
そして、ひととおり料理をいただくと、あとは何することなく会場の人たちを眺めるのだった。
美しいお着物の女性や、どんなお仕事をされているのだろうか風格のある男性、見ていて飽きなかった。
ただそれだけで帰るのも…と思った初参加の時だった。
作家のR氏のお姿を会場に見つけ、ファンの私は一緒に写真を撮ってもらおうと思った。
女性に人気の作品を書かれるだけに、まわりには輪ができて順番待ちのようだ。
そしてようやく私と友人は写真を撮ってもらうことができ、記念にお名刺を頂戴した。
その次に参加したときも、R先生が来られていた。
私たち3人のうち、読んだ著書の数は私が一番多い。
というか、そのパーティの前にはもしもの話題作りのため数冊を読んでいく。
R先生はサインを頼まれたり、知人と話をされたり、お忙しそうだ。
ふっと、先生がおひとりになられたところをねらって、お話をさせていただいた。
「先生の描かれる世界の、○○が△△だった時に心を揺さぶられて、たまらなくなります」と簡単ながら熱くお伝えした。
「そう」とだけ言われたように記憶している。
友人らのいるテーブルに戻ると、「えー、御手洗さん、ふたりで話すなんてすごい」と驚かれた。
パーティを終えた帰り道のことだ。
友人が「なんかさ、顔をあげるたびR先生がこっちを見てらっしゃる気がしたんだよね」と言う。
実は私もそうだった。
R先生はどこにいらっしゃるかなと探すと、結構遠い距離なのに目が合う。
私たち3人連れ、そんなに目立ってたかな。
確かに、一人はおしゃれだし、もう一人は少女風でかわいい。
でもR氏が見ていたのは、私だったと思う(何を言う~!)🤣
3回目も同じような感じで、パーティ会場で何度も「あ、先生ここです」と、私は手を挙げそうになった(友達かっ!)。
友人は名刺を渡していたが、名乗るほどの者でもない私はお話しするだけで充分だった。
私を何者と思われてか、励ましのお言葉まで頂戴した。
そんなところが、R氏のおばさんキラーたる所以なんだろうな。
あれから数年になる。
コロナ禍を経て、今はもうR氏と会う機会はなくなった。
もう一度会えたらいいな。
その時は、どんなお話をしようか。
お互い孫の話でもするかな。
※タイトルに「恋愛」とありますが、ここに恋愛感情はほぼありません。
ただの誇大妄想でした。