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「マグノリアの小径」 マダム、何があったんですか

金曜の夜、浜田省吾さんのファンクラブ限定ライブに出かけた。

開場1時間前というのに、名古屋センチュリーホールには長蛇の列ができている。

その列に並んで待つ間、隣にいたひとりの女性に話しかけられた。
品の良い、マダムと呼びたくなる佇まいの人だ。

後ろには、長年のファンだとわかる出立ちの男性二人連れ。
話す言葉から名古屋の人ではないらしい。

「どちらからですか?」と女性に聞かれ、地元ですと答えると、
その人は京都からだと言った。

「熱い(ファン)ですね。京都は今回公演なかったんですね」と尋ねた。

するとその方が、

「私、今回初めてライブに来たんです」と言う。

ま、そういう人もいるかもなぁと思っていると、

「ライブにはよく来られますか?」と聞かれ、最近はだいたい来ていると答えた。

すると後ろの男性が「ファン歴どれくらいですか?」と私に尋ねた。

40…(引き算がすぐにできず)『愛の世代の前に』のコンサートは見た記憶があります」と言うと、男性も「あー、同じくらいですね」と言った。

そして、皆が女性の方に、何年くらい?みたいな顔をすると、

「私、1年前からファンになったんです」と。

男性二人と私が、同時に「え~~!?」と声をあげた。

私は「失礼ですが、1年前に何があったんですか?」と尋ねた。

女性は、ある動画をネットで見たのがきっかけだと言った。
長い間、心の病気をされていたといい、その動画の浜田省吾の歌で元気になり、今ではすっかり治ってしまったのだと。

1曲の歌にそんな力があるんだ…。
確かに、浜田省吾さんの曲に力があることは、私も十分感じている。

そうなると男性らと私の関心は、何の曲かということになる。

その曲、当ててみてもいいですか?と聞きたかったが、それを言う前に女性は「どの曲かは言えないんですが、それ以来浜田さんの曲を順に聴いているんです」と言った。

開場になったらしく、人の列が動き始めた。
ゆっくり歩きながら、私も行けなかった野外ライブの話を男性から聞いたり、映画の話などをしながら前に進んだ。

二列に並んだ人たちが、いくつものゲートに分かれるところで、

「じゃあ、お互い楽しみましょう」
「いい席だといいですね」
そう口々に言って別れた。

開演を待つ間、彼女の1曲が何だったんだろうとひとり考えていた。

なんとなく直感で「マグノリアの小径」じゃないかと思った。

名古屋にはお嬢さん一家が暮らしているとかで、「車で送ってくれた主人は、今ごろ孫とご飯食べてると思います」と言っていた。

そんな優しいご主人がいたら、あの曲は感じるものがある。

ひとしずくのワイン、ボトルを満たして
時を経ていつか、君を酔わせる

私たちの年齢のカップルには、味わい深い曲。
私も何度もくり返し聞いた曲だ。


それを、君が許してくれるなら

おれを、君が望んでくれるなら

そこのところがもう、たまらない。
60代でキスされてときめくなんて現実にはないけれど、だからこそいい。


浜田省吾愛がとまらず、読まれなくても書かずにいられなくてマガジンを作りました。
いい曲たくさんご紹介します。
よろしかったら聞いてみてください。


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御手洗 育/暮らしのエッセイスト
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