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お母さんなんて、すぐ泣くんだから

昼休みがそろそろ終わるという時間、娘からLINEが来た。

珍しいな、何だろうと開いてみると、

「今日のランチのシチューが、ママのと同じ味がしたんだけど、どこのルーだったの?」と。

シチューって、何シチューなん?
そして正直に返信をした。

「ビーフシチューは、よくハインツ使ってたけど、自分で作ることもあったよ。
でもクリームシチューは自分で作ってた」と。

しばらくして返ってきた返信は「白いシチューでした!」。

ヤッタネ!と言う娘の顔が目に浮かんだ。
不意に瞼がジワワ〜ンとなって慌てた。

都会のオフィス街の、レストランのランチ。
お母さんはそんなおしゃれな料理はできないけど、あの味を思い出してくれたのが嬉しかったよ。

今夜は久しぶりにクリームシチューにしよう!
(と思ったが、都合によりつみれ汁に変更)

帰宅して、いつものように脱力しながらスマホを手にする。

めったに見ないインスタを開くと、見覚えのある制服のツナギ。
息子の働くディーラーの動画だった。

若い整備士が異動になり、お別れのセレモニーらしい。

息子からたまに、その外国人の彼の話は聞いていた。
とても真面目でいい仕事をすると。

動画を見てすぐに彼だとわかった。

仕事ぶりは私にはわからないけど、とても好青年だ。
シュッとして、挨拶の声は聞こえなくても誠実そうなのが伝わってくる。
花束をもらった彼が、ツナギの袖で何度も涙を拭う。

日ごろは車検など用事があっても、息子のいる店に行くことはない。
でもあんなにイケメンの彼がいるなら、行けばよかった😆

インスタの動画は「入社以来、支えてくれた先輩のあいさつ」とテロップ。

そして愚息登場で、また何を話してるのかはわからないけど、そのシーンに母泣けてしまって、もう。

息子のキャリアについては受け止められないときもあったけれど、今はこうして働いて家庭を持って頑張っている。

親なんて、何にもなくても、こんなちっさなことで泣いちゃうんだよね。

馬鹿を見たくば親を見ろって、そんな馬鹿がここにいる。

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御手洗 育/暮らしのエッセイスト
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