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生きてる価値がない人などいない

最近、義父に会うたび「(わしは)もう生きてる価値がないわ」と言う。

それを聞くと本当に悲しい気持ちになる。

舅と嫁として、ここまできたことに感謝している。
と言うのは嘘で、感謝しなくちゃと思っても、なかなかそうできなくて、そういう自分も素直じゃないなと思う。

頑固で理不尽で、嫁の務めを当たり前のように求める義父と、同居していたら私は間違いなく辛抱できなかっただろう。

病院のお医者さんに、30年も前の現役だったころの自慢話をする。
一方で、暮らしぶりが良くない人のことを小馬鹿にする。
そして今、自分が思うようにならないと、先の口癖が出る。

本当に切ない。

来年は90歳、お義父さんの生きる姿から何かを学びたい。
「よう聞け」で始まる説教を、聴いているように聞いているけれど、そういう話じゃなくて、もっと…。
いけない、私も義父に立派でいてほしいと求めている。

70歳で他界した実家の父は、亡くなる直前、母に「いい人生だった」と言ったと聞いた。
そして父は今も私の中にいる。

生きている価値のない人など、ひとりもいない。

義父の物差しはお金、私は心。
永遠に平行線かもしれないけれど、せめて「生きてる価値がない」なんて言わないでほしい。

数ヶ月前、結婚して初めて「ありがとう」と言われた。
信じられなくて、嬉しかった。

だからなんとか、生きてる価値を感じてほしい。
少し焦りを感じつつ、義父にとって幸せだと感じることは何だろうかと考えている。

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御手洗 育/暮らしのエッセイスト
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