「Boys are all stupid!(男子はみーんなバカ!)」アメリカから来た女子高生は冷ややかに言った (エッセイ)
Snoopyと称するビーグル犬や、頭髪が手抜きで描かれたCharlie Brownという男の子が登場する4コマ漫画の傑作、「Peanuts」はよくご存じでしょう。
あるいは、TVアニメの方が知られているかもしれません。
このマンガにかなりの頻度で登場する単語に、
《stupid》
という形容詞があります。
バカ、間抜け、愚か ── そんな意味です。
Charlie Brownもよく使いますが、特に、わがままで口うるさい女の子Lucyが、SnoopyやCharlie Brownを罵倒する時に頻繁に出てきます。
再勉生活が終わり帰国して6年ほど経った頃、国内交換留学組織からの依頼で、アメリカ人の女子高生を6月から7月にかけての6週間、自宅で預かることになりました。
米国の南部から来た金髪白人の少女で、その当時、16. 7歳でした。
彼女は、《基本的には》スリムな体型で、顔立ちも整った、《見た目は》可愛らしい少女でした。
最大の問題は、彼女が、日本に来たくて来たわけではない、ということでした。《異文化》にまったく関心を示さず、朝から晩までパソコンと向かい合い、当時始まったばかりのSNS(SixDegrees.comなど)や、友人とのメール通信にふけっていました。
「日本に留学しようとした動機は?」
と尋ねても、
「父親が勝手に申し込んだら当たっちゃったの。私は来たかったわけじゃない」
と答える。
「日本で何をしたい?」
と尋ねても、
「Nothing」
あるいは、実家でもこんな調子だからこそ、父親が見聞を広めたらどうだ、と申し込んだのでしょうか。
けれど、地球を半周回ってきても、彼女の生活はほとんど変わっていなかった ── かもしれません。
日曜日に、城郭や博物館など、《日本》を感じられる場所に連れて行こうかと提案するのですが、
「私は行きたいわけじゃないけど、あなたたちが行きたいのなら行ってもいいわよ」
が口癖でした。
彼女に自室を明け渡していた中学3年の娘も、
「そんなに気を使わなくていいんじゃない。ひとりで好きなようにさせてやれば?」
と匙を投げていた。
彼女と話していて、極めて頻繁に出てくる単語が、
《stupid》
でした。
今でも印象的に思い出す場面が2回あります。
1回目は、夕食後にすぐ自分の部屋に籠る彼女との話題作りとして、次のように尋ねた時のことです。
「勉強の科目で、男子と女子との間に得意不得意の差のようなものってある? ── 例えば日本では、どちらかというと男子が数学が得意で、女子が国語が得意、というような傾向にあるようだけど」
彼女は、あっさりと、
「そんな傾向なんかないわよ」
そして、
「だって、男子はみんなバカなんだもん(Boys are all stupid)!」
と続けました。
「いやその、数学や理科は男子が得意なのでは?」
となおも尋ねる、というより繕おうとする私に、
「No! 男子はすべての教科ができない! They are all stupid!」
と言い捨てて自室に引き揚げました。
もうひとつ、ここで言及しなくてはならない、重要な問題があります。
このアメリカン女子高生は、いわゆる《巨乳(big breasts)》でした。
それ以外の体型はむしろスリムなのに不思議なことですが、それは、かなりのものでした。
私はそれ以前に自分の娘から頻繁に《警告》を受けていたので ── いい? お父さんがどこを見ているか、相手にはわかるからね、気を付けなさいよ ── 十分注意していました。
しかし、この《巨乳》留学生と向きあって話をしている時、相手の眼を見ていたこちらの視線が次第に下がっていくのに抗うのは、非常に難しい!
── 彼女の《巨乳》がその顔よりも上についていれば、《重力》の影響を受けずにすむのかもしれませんが。
(あるいは、視線がそこに行ってしまうのは、重力以外の引力の影響かもしれませんが)
なぜこんなことを書いたかといえば、それは、次回予定の、「もうひとつのstupid」に関わってくるからです。
以下、次号。お楽しみに。