続・「アトムの童」を視て想い出した新入社員実習中の『君は天才だ!』(エッセイ)
新卒で入社した企業での実習中、なんでもいいからひとつプログラムを作れ、と先輩に命じられ、《恋占いゲーム》を作ったエピソードを書きました。
実習指導者が出張を終え、私も元の仕事に戻りました。
3日間だけの臨時指導者の手もとには、半日で作った《恋占いゲーム》が残りました。
彼が、自分で作ったわけでもないそのゲームを外部企業の営業に見せびらかし、勝手にコピーさせた「ひどい話」は既に書きました。
今回はその後、「もっとひどい話」です。
女性読者の皆様、石をぶつける相手は私ではなく、その「臨時指導者」の方ですからね。
ここ、大事な所なので強調しておきます。
元の仕事に戻りましたが、同じ実験室です。「臨時指導者」だった先輩が昼休みになると日替りで女性社員をPCの前に連れてくるのには気付いていました。
女性社員がデータを打ち込む時は、
「じゃ、僕は後ろ向いているよ。正しい値を入れた方が正確な診断ができるからね」
と言ってPC画面に背を向けていました。
そして、《恋占い》が終わると、
「じゃ、PCの電源はちゃんと落とすからね。これでデータは間違いなく消えるから」
とPCのスイッチを切って彼女たちを安心させていました。
しかし、彼は、PC業者に私のゲームを見せたように、《黙ってはいられない人》でした。
ある日、私を呼んで、最初のプログラムに対して彼が行ったバージョンアップを説明した後、こう言うのです。
「実はね、PC電源を落とす前に、ほら、
『全てのデータを消去しますか?』
と尋ねてくるだろ? それで、『YES』を押して、さらにPC電源を落とすからみんな安心するんだけど、実はこの『YES』が、データをセーブするスイッチになってるんだ」
なんと、この人は、ゲームを口実に、女性社員が打ち込んだデータを《収集》していたのです。
彼は、データが最終的にPCに残るのは危険だと警戒はしていたようで、後から自分の手帳に書き写していました。
「うーん。僕の見たところ、サイズを正直に打ち込むコが7割ぐらい、って感じかなあ……」
彼が行った「バージョンアップ」には、さらに問題のある《質問》も加わっていました(答えたくなければ「スキップ」可能ですが)。
(……やれやれ)
そうした「数字自体」に関心のない私は思いました。
(……これ以上、この件に関わらない方が良さそうだ)
その部署での実習は間もなく終わり、工場実習が始まりました。溶接工程に配属された私は昼夜2交代のハードワークをこなしながら、時折、《恋占いゲームソフト》のバージョンアップ・アイディアが浮かぶことがありました。
(うん、この《質問》を加えるともっと精度か高くなる!)
しかしもちろん、工場実習が終わった後、正式配属が決まった別の部署での仕事に忙殺されていたことだけが理由ではなく、私がそのプログラムに関わることはありませんでした。