12年に1度、だけじゃなくって賑わう神社(街で★深読み)
12年に1度、大いににぎわう《羊神社》を紹介しました。
「だけじゃないぞ! いつも人気だ!」
と怒られてしまったかもしれません。
さて、名古屋市北部には、もうひとつ、干支メンバーを名にいただく神社があります。
稲生町にある伊奴神社です。
なお、稲生は、織田信長が同母弟信行(信勝)と家督を争った《稲生の戦い》の地としても知られています。
「うつけ」の信長を宿老の柴田・林が見限り、期待の星・信行に加担した、実は信長の人生で最大のピンチでした。
この神社はもちろん、戌年の正月にはたいへんな人出となりますが、それだけではありません。
境内を歩くと、おなかの大きな妊婦のひとを含む家族、そして赤ちゃんを抱いた人たちを見かけます。
そう、安産&多産の犬にあやかり、ここは《安産祈願》の神社としても知られています。この辺りの人びとは、妊娠後期に安産を願ってここに訪れ、出産後にはまた、お礼参りに訪れる、というわけです。
ちなみに、前回記事の《羊神社》からここ《伊奴《いぬ》神社》にかけての地は神社がとても多く、いずれも庄内川(矢田川)のすぐ南側(名古屋城側)にあたり、おそらくはこの川が頻繁に氾濫したことと関係する、と思われます。
この神社にも「フツーの狛犬コンビ」は鎮座していますが、かなり「下座」に甘んじており、本殿近くの一等地を占めているのは、
《犬の王》
と称する石像です。
昔、例年の洪水で困っていたこの地の村人が、通りがかった山伏をもてなし、山伏から
「犬を祀れば水害から守られる」
と指導されて災厄を避けることができ、これが《伊奴《いぬ》神社》の始まりだということです。
出産は女性の人生で大きなイベントであり、最大のリスク要因でもあります。私が訪れた日も、おなかの大きな女性が、おそらくは配偶者と参拝に来ていました。
絵馬を納める「絵馬殿」、入口には確かに『今年の干支はオレだぜ』風に大きな虎が「番」していますが……。
「絵馬殿」の中は犬の絵馬ばかり、裏に書かれた「祈願」ももちろん、妊娠・出産関連です。
伊奴神社は「おみくじ」も独自性を発揮しており、かつ、2段階です。
300円の「犬おみくじ」は紙製のようですが、「金の肉球入り」なんだとか。
親犬?はちゃっかり「招き猫」のポーズで「開運」気配を漂わせ、その前でとぼけた顔の「仔犬」がまた参拝客の購買意欲を誘っています。
いやあ、作戦、成功していますよ。
さらに面白いのはこちらの500円バージョン。
「いぬみくじ」と題して、「犬の王」ミニチュア版フィギュアです。
このセラミック製?犬の王フィギュアの裏に穴があいており、「おみくじ」が入っているのです。
このセラミック製フィギュアは、おみくじの運を確かめた後、本家「犬の王」石像の下に並べておく人が多いようです。
しかし、犬たちはぼやいているかもしれません:
「え? 安産だからあやかりたいって? そんなの、人間たちが勝手に言ってるだけで、実際はたいへんなんだよ、犬のお産だって!」
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