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しまなみ海道で、冬の《キリギリス》は行き倒れ寸前に (島で★深読み)

旅行社が主催するグループツアーに参加する問題点は、申し込む時点(より正確には、無償キャンセルが可能な時点)では、催行日の天気がはっきりわからないことです。
個人旅行なら、直前に「それなら、やーめた」とできるのですが。

この冬に入り、私が参加したしまなみ海道サイクリング・ツアーに関しては、一行参加者10名の内訳が、女性9名、ジジイ1名だったことと、

「しまなみ」を半分渡って愛媛県側に入ったら、《みきゃん》と称する妙に「おりこうさん」の《ゆるキャラ》と、《ダークみきゃん》という《悪役ゆるキャラ》とが、単純な《善》と《悪》の対立構造になっていることを、皆様に報告してまいりました。

それ以前の問題として、2泊3日ツアーの初日には雨が降り、2日目はひどい強風だ、と天気予報で脅されていました。
初日は広島県尾道から生口島まで、2日目が生口島から愛媛県今治まで、3日目はバスでその逆を辿りながらの観光となっています。

しまなみ海道全コース。1日目は➃の生口島瀬戸田まで走って一旦尾道に戻り宿泊。

初日の午後はやはり雨が降り、上下合羽を着て走りましたが、翌日に比べれば、まあ大したことはありませんでした。

生口島はレモンが特産

たいへんだったのは2日目。風がやたら強く、強風に逆らって自転車を進めるのは相当体力を使います。
平日催行のこのチームはロートルばかりなので、当然、電動アシストの自転車ではあります。
しまなみ海道サイクリングがたいへんなのは、橋が高い所に設けられている(その下を大型船が行き交わねばならない)ためで、海面近くの道路から、標高数十メートルを登らなければなりません

チームは、先頭が尾道観光協会の女性ガイド、最後尾が旅行社のお兄さんガイドです。私はもっぱらメンバーの最後尾を走っておりました。

強風に逆らって進むためには、電動アシストは不可欠です。アシストモード1,2,3と次第に強くなっていくのですが、強風に疲れ果て、2か3を続ける、という《電池に甘え》モードで、大島と四国を結ぶ、最後の来島海峡大橋に入りました
この橋の下は最も大型船が通る航路になっており、当然、橋の高さ(65 m)は最も高く、長さも最長(4.1 km)になります。

四国側から見た来島海峡大橋。この最後の吊り橋が最も海面から高い。

この橋に入った時に、私の自転車の電池残量が《最低》に突入し、アシストモードは《1》しか使えず、《不吉な》点滅を始めました
しかも、海峡大橋は三連の吊り橋で、最高地点まで、ひたすら登りです。

アシストモード2か3で軽快に進む女性9人とはどんどん差が開き、私ひとり、ぜいぜい言いながらこぎ続けました。

ジジイはすぐ後ろを走るお兄さんに泣き言を言い始めました。
「もうだめ! もうだめだ! どうしましょうか?」
「とにかく、もう行くしかありません! 行けるところまで行きましょう!」
「この先、まだ登りですよね? たぶん、だめです! もうだめ! たぶんだめ!」
「そうなったら、押して歩くしかありませんよ!」
「ええ?(……鬼か、お前は!)」
ひょっとしたら、押して登る方が楽かもしれませんが、かなり先を走るお姉さま方はそれを見てどう思うでしょうか。

いや、もう、そうなると《冬のキリギリス》も死にもの狂いで頑張るもので、お兄さんに骨だけは拾ってもらう覚悟でこぎ続けたら、いつの間にか峠を越えていました。

お姉さま方からかなり遅れて四国側の休憩所に到着すると、
「いや、あたしゃ、最後がたいへんだってわかってたから、平地はできるだけ電池使わなかったのよ」
「あんた、はじめから楽しようとしてたんじゃないの?」

《キリギリス》には、返す言葉もありませんでした。


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