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落選国会議員の言に思う、『手段の目的化』
市長を辞めて衆議院議員選挙に立候補した『ウケ狙いオジサン』が圧勝した愛知1区では、この荒波を被ってふたりの現職(だった)国会議員オジサンが落選し、比例復活もならず、国会から去ることになりました。
地元のTV局ではこのうちひとり、自民党から立候補した人が国会議員宿舎から引っ越すところを取材して、夕方のニュースに流していました。
落選による意気消沈は感じられるものの、それでも淡々と話す元議員さんはなかなか立派でしたが、彼の発言で気になることがあったので、考えてみました。
彼は、議員宿舎の退去期限の日に、
「(私は)宿舎にあまり泊まらなかったので……ほとんど地元に戻っていました」
と言い、
アナウンサーが、
「そうかあ……地元にこまめに変えるタイプの国会議員だったんですね……」
同情する様子を見せると、
「それで、この結果ですから。なかなか現実は厳しい」
と応じていました。
さて、この人が都心の一等地に低コストで住める議員宿舎にあまり泊らず、こまめに地元に帰っていたのはなぜだろう?
国会議員は国全体のために奉仕するのが使命だけれども、小選挙区で選ばれる議員は、その地域の有権者のお困りごと ── つまり『陳情』をしっかり聴いて国政に反映するため、地元に密着していたのかもしれない。
(ただ、これが過ぎると、利益誘導型の政治になってしまうので注意しなくてはいけないだろう)
ただ、自民党の議員は結構な頻度でいわゆる『行政職』を兼務する。実際この人も、政務官や副大臣を歴任していた。
衆議院の委員長や自民党の役職にも就いていた。
しょっちゅう地元に帰っていて、そのような重責が務まるのだろうか? ── 優秀な人で、どちらもしっかりこなすのだろうが……。
そのように多忙な国会議員が地元に密着しなければならないのは、うがった見方をすれば、『次の選挙』に備えるためなのだろう。
──『陳情』を聴く、というのもその一環なのだろう。
だから彼はうっかり、
「ほとんど地元に戻っていました……それで、この結果ですから」
と発言してしまったのだろう ── 正直な人です。
大臣や党四役を歴任したような大物を除けば、
『次の選挙に勝つために日頃から地元に密着する』
というのは、国会議員にとって最も重要なことなのだろう。
『選挙で勝つ』
というのは、政治家にとって、はたして国政を行うための
『手段』
なんだろうか?
でも、選挙で勝つための選挙区回りによって国政のための貴重な時間が費やされることを考えれば……
『選挙で勝つ』
それ自体が
『目的』
なんだろうか?
さらに穿った見方をすれば……国会議員には、JRの新幹線グリーン車含むすべての路線を乗り放題できるパスが支給されているから(=タダで帰れるから)……というのもありますが。
東京との交通利便性で不利があってはいけないので、交通費が支給されるのはいいと思いますが、『パス』でなく、経費申請する形にして、『透明度』を上げ、例の『文書交通費』のような形の一律支給は止めるべきだと思います。
さて、
『選挙で勝つ』のは『手段』だろうか?
『目的』だろうか?
両者は『混然一体』となっているのだろうか?