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自分が想像する「あったらいいな」は他の誰かも想像してる (エッセイ)

このところ、約20年前の講義の宿題で、学生が提出してくれた「あったらいいな」のいくつかを眺めています。
その中に、ちょうどその頃私が書いたショートショートにかなり近いアイディアがありました。
業界誌に掲載し、このnoteにも再掲した話です。その内容は:

・エレクトロニック・ショート・サーキット(ESC)社で開発中のテレビ用画像処理装置《配役》は、ユーザーのテレビに映る、ドラマ出演者の顔を好みの誰か──例えば、自分や知人にげ替えることができる。
・このためには、自分や知人の表情をできるだけたくさん撮影して、画像を記憶させておくだけで良い。

こうした技術(ディープフェイク)はここ数年、過激な言動やAVの動画の、人物の顔だけを政治家や女優に替えて拡散させる手段に使われ、深刻な社会問題になっています。

ショートショート「ア・タ・シ・が主役」掲載は2002年の6月号ですが、そのちょうど1年後、2003年の6月に、某国立大工学部で短期留学生対象講義の中で「あったらいいな」宿題を出したところ、留学生S君が提出してくれたのが、以下の提案、《Fun Television》でした。

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上のイラストのように、《Fun TV》《配役》ときわめて似ているシステムですが、テレビ自体にカメラが組み込まれており、別途撮影を必要としない「優れモノ」です。

もし、この両者の《リリース》時期が逆だったら、私が彼の「あったらいいな」を盗用した、と疑われても仕方なかったでしょう。
一方で、「ア・タ・シ・が主役」掲載誌は、読者がきわめて限られる国内誌であり、S君が目にした可能性はゼロ、と言い切れます。
《Wants》って、だいたい共通しているんです。それを何か(私の場合は執筆依頼、S君の場合は宿題)をきっかけとして《描いてみる》かどうか、だと思います。
「きっかけ」があると、頭の中から紙の上に出てくる。

企業で研究開発に従事していたころ、
「自分が思いついたアイディアは、世界で他に2人は考えていると思え。スピード勝負で結果を出して特許を抑えろ」
と先輩技術者によく言われました。
そして、実際に特許出願の1年半後に内容が公開になると、その前後に類似特許が他機関から出願されているのを目にしたものです。
これは、《Wants》にとどまらない、《具体的な課題解決の技術手段》ですので、競合相手はかなり限られますが、それでもそんな具合です。
そして、タイミングの前後は、技術者の運命も、所属企業の盛衰をも変えることがあるのです。

電話の発明に関して、わずか2時間早く特許出願したグラハム・ベルが権利を取得したのは有名な話です。


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