【馬の耳に念仏】(新釈ことわざ辞典)記事版
私は馬ではないが(……たぶん)、耳に特殊なセンサーが備わっているらしく、《念仏》が始まると直ちに音声情報が遮断されます。
この機能のおかげで、厳しい上司との会社生活も、口うるさい妻との家庭生活も、幸せに終えることができました。
この機能により、
① 仕事中、上司が叱言を言い始めた時、
② 帰宅後、妻が愚痴をこぼし始めた時、
動き続ける彼らの口がついに静止するまで、《念仏》は《馬の耳》を素通りしていきます。
おかげさまで、会社でも家庭でも、大過なくすごすことができました。
ただ、《念仏》の途中で、上司や妻の様子が「激変」することがあります。
こんな風に……
《音声情報》は遮断された状態で、
《視覚情報》を頼りに、
適度な頻度で相槌を打ったり、うなずいたりしているのですが……。
……どうも、そのタイミングが《音声情報》とはズレてることがあるらしい……のです。
そして、その「ズレ」が、このような「激変」を引き起こすようなんです。
そんな時はどうするかって?
もちろん、幸せな人生のため、《視覚情報》をも遮断します。
目を閉じて、ひたすら想像するのです……
問題は、《視覚情報》が失われると、《念仏》がいつ終わったのか、判断できないことです。
もうひとつ、
── なぜか、「激変」に続いて《視覚情報》を遮断した後、頭部に強い「衝撃」を受けることがあります。
そんな時は、
《触覚情報》いや《痛覚情報》を、しゃだ……。