「動物園」は《地雷原》 (街で★深読み)
久しぶりに動物園を徘徊し、孤独な虎、寒風を避け水没したままの河馬、同じ献立の食事に余念のないコアラ、体を寄せ合い寒さに耐える狸一家などを視察してきました。
その中で最も集客能力の高い《芸人》は、象でもライオンでもゴリラでもなく、《フクロテナガザル》でした。離れた場所にいても彼の《絶叫》は耳に入り、何だ何だと人が集まって来る。
《人気芸人》ケイジ君は、長い腕を使って軽やかに跳梁し、喉の袋を膨らませて叫びます。
ケイジ君の声が聴きたい方はYouTube動画をどうぞ。
ちなみに、このエッセイの表題ですが、……動物園の話題は、私の後半生で、家族の前ではタブーとなっています。
うっかりそちらに話が行くと、地雷が炸裂します。
「動物園でさ……」と口にすると、
「よく3人で行ったね ── お母さんと**(妹)と3人で」
それを聞き流せばいいのですが、
「え? 4人で、だろ?」
と言い返すと、地雷が炸裂します。
「── それは、最初何回かだけでしょ」
と氷柱よりも冷たい声が落ちてくる。
「── お父さんと行くと、動物園に着いてすぐに、『もう帰ろう』って言い出すじゃない。そんなくらいなら、最初から3人で行った方がいい、って3人で行くようになったんでしょ」
その厳しい視線が体に突き刺さり、あ、また……となるのでした。
子供たちが小さい頃、残業はほとんど青天井、しかも仕事はいくらでもあったので、平日の夜だけでなく、休日出勤も頻繁でした。
しかも、出勤しないもう1日は図書館で資料を調べ(ネットのない時代です)小説を書いていました。
動物園で淋しい虎や河馬を見ているうちにアイディアが浮かぶと、早く帰ってカキモノがしたくなるのです。
「うーむ」
とそれ以上は逆らわず、地雷を避けるしかありません。
(とりあえず、河馬を倣って水没しておくとするか……)
森の中を木伝いに遠くに行って、《フクロテナガザル》のように叫びたくなるのですが……。
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