巨女ノ国 ~#016~
【その時です。少し先に、小さな小さな小屋を見つけました。何もない大地に、一軒の小屋。「小人村の人が住んでるのかな?降りてみようよ。」五人は、ドローンで小屋に近づき、三日ぶりに大地に降り立ちました。】
五人は、小さな小屋の前に降り立ち、小屋の扉をノックしました。
小屋の中から出てきたのは、10年前に小人村をでて巨女ノ国を目指して東へ向かった一人の村人でした。
元村人「おや、来客とは珍しい・・。君たちは小人村の住人かね?」
五人目「まあ、小人村の元住人ってとこかな。今は巨女ノ国目指してドローンで東へ向かって飛んでいる。ユーはどうしてここに住んでいるんだい?」
元村人は一瞬目を輝かせて、笑顔になりました。
元村人「同じ小人村の出身なんだね。逢えてうれしいよ。それに、君たちの目は希望に満ちている。素晴らしいことだ。10年前の私を見るようだよ。・・私はね、君たちのように巨女ノ国に向けてドローンで旅していたのだが、いよいよ引き返せない地点(the point of no return)に近づいた時、複雑な気持ちになってしまってね。それ以上先に進めなくなってしまったのだよ。」
元村人の笑顔は、すぐに落胆した表情になりました。
二人目「もう後戻りできないってなったときに不安になっちまったのか?その気持ちはわからんでもないが・・それにしたって、帰りの燃料はまだドローンに積んであるんだから、いっそ小人村に帰ることだってできるじゃねえか。なんでまたこんなとこに一人で住んでるんだ?」
元村人「その通りさ。帰りの燃料を積んだドローンも、10年間ずっと保管している。小人村に帰ることだってできるさ。でもね、私は一人でここに生きることを決めているんだ。」
元村人の瞳には、静かな覚悟がありました。
一人目「少し詳しく聞かせてもらえますか?私たちはこのまま東へ向かうつもりですが、あなたがここで暮らす決意をした理由なども知っておきたいのです。」
元村人は、静かに口を開き、言葉を選び始めました。
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