「巨女ノ国」~#003~

 五人は、かねてから小人の村で噂になっていた「巨女ノ国」について、話し合いを始めました。

一人目「この村では常に噂になっているから知らないものはいないが、”巨女ノ国”に私は行きたいと考えている。巨女ノ国には永遠の平和と安心があるそうじゃないか。私は、そんな国で暮らしていきたいと切に願う。それにな、みんな。どうも巨女ノ国が楽園であるという噂は、ただのデマでもなさそうなのだ。これを見てくれ。」

 一人目は、sphere(スフィア)という球形自動遠隔操作カメラで撮影された、巨女ノ国の映像を皆に見せました。小人の村は、テクノロジーにかけては随一の技術を持っていたので、このようなカメラを創るのはお手の物でした。

 sphereは空間さえあればどこでも映像を映し出せる装置でした。どの角度から誰が見ても楽しめるように、空間そのものを映像化するのです。五人の周りの空間には、たくさんの巨女たちと、笑顔で暮らす男たちの姿がスッと映し出されました。

 巨女たちの身体に包まれるようにうつぶせに寝そべり、肌の柔らかさや弾力を楽しむ男たちの姿が無数にあり、中にはそのままスヤスヤと眠りについている者もいました。巨女たちはそんな無邪気な男たちを優しいまなざしで見つめ、時には指先で頭や背中をそっと慈しむように撫でていました。

 その光景は、まるで女神たちの国、と言っても良いものでした。

 かつて小人の村の住人だった者も、小さく映っていました。体は小人のままなので小さいのですが、笑顔はとびきりでした。不思議と声はほとんど聞こえてきませんでした。あまりの幸せに包まれると、言葉も失って、ただただその幸せを感じることに溺れてしまうのでしょうか。

 巨女ノ国にいる男性からは、全身から幸せがにじみ出ているようでした。こんなに幸せそうな人々を、五人は見たことがありません。楽園のような世界。誰も傷つけあわず、外敵に怯えず、護られた世界。優しい世界とはまさにこのことでした。

三人目「こんな平和で幸せな世界で生きていけるなら、本望だよな。私たち小人だけでは、この世界は創れない。」

二人目「ああ。俺もそう思う。俺たち小人の村は、技術は達者だが、テクノロジーだけで人は幸せになれねえからなぁ。」

四人目「そうだよね。やっぱりさ、ずっと寂しいし、物足りないんだよ。なんだろうね?この気持ち。僕が甘えん坊だからっていうのもあるかもしれないけど・・。」

五人目「ミーはこんな平和な巨女ノ国に、マネーというものがあるのかどうかすごく気になるぜ。」

 五人の小人たちは、sphereが映し出すユートピアの映像をうっとり眺めながら、どんな困難があっても巨女ノ国に向かう決意を新たに固めたのでした。

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