巨女ノ国 ~#013~

【「気をつけてな」「幸せに生きていけよ」

 そんなありきたりな花向けの言葉を背に、五人は小人の村からドローンで飛び出し、巨女ノ国があるとされている東方へと向かっていったのでした。】

 五人は皆が乗れる大型のドローンに乗り、小人の村を飛び立ちました。丸一日東へ向かって飛び続けましたが、辺りの風景は何も変化がありません。

二人目「おいおい、こんなに何もないなんて、外の世界は案外つまらないな。」

三人目「変化がなくて何もないと感じるのは、そこに何かしらの価値を見出すことができていないからさ。変わらない景色の中にも、確実に美しさは存在するよ。」

五人目「三人目、ユーはいつだって夢見がちなんだな。何もないところに何かを見出せるその才能は素晴らしいよ。」

 こんな他愛のない話をしながら、二日目が過ぎ、三日目が終わろうとしていました。さすがに皆変わり映えのしない風景に飽きてきて、言葉も少なくなっていきます。

四人目「なんだか退屈・・。本当にボクたちは東へ向かっているんだよね?不安になってきちゃうよ。あぁ~、早く甘えたい!巨女の胸の中に飛び込みたい!」

一人目「四人目の禁断症状が現れ始めたな・・。奴は誰かに甘えていないと気持ちが落ち着かなくなるからな。他のみんなは大丈夫か?」

二人目「・・俺は無性にトレーニングがしたい。体が委縮して消えてなくなっちまいそうだ。筋肉が俺を呼んでいる!!」

三人目「頭の中が自由になれているのはせめてもの救いだけど、さすがにこう何の変化もないと、不安になるな。早く創作活動がしたい。何かを生み出したい。想像してるだけでは創造ではない!」

五人目「おいおい、ユーたち!まだ三日目だぜ?こんなとこでそんなに不安になってどうする?まだまだ精神的に死んでる場合じゃないぜ!しっかりしろ!」

 意外にも冷静な五人目に、皆は何もないこの空の世界を受け入れようと決意しました。小人の村を飛び出しても、そこには何もない空虚な世界が広がっているばかりでした。でも、「この空虚の先にはきっと希望に満ちた巨女ノ国がある」__そう信じる気持ちは、五人ともしっかりと持ったままでした。

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