巨女ノ国 ~#009~

【五人目「ドローンに乗ってどこまでも行けるようになったのに、相変わらず小人の村を出ようとしないのはこの村の閉鎖的なところだよな。他にどんな世界が広がっているのか、見たくはないのかな?」】

 五人目は、素朴な疑問を皆にぶつけました。この五人は村を出たがっていますが、他の村人たちがこの小人の村から出ようとしないのをずっと不思議に思っていたのです。

一人目「見たいとは思っているのさ。でも、見たいと思っているだけで、見るための一歩踏み込んだ行動を起こすのが怖いのさ。小人の村に帰ってこれなくなるのが一番怖いんだろうな。なんだかんだ、この村でも生きていこうと思えば生きていける。帰る場所を失うと思うと、怖くて怖くて仕方がなくなるんだろうよ。」

二人目「俺はもう、こんな村勘弁だけどな。なんせ退屈すぎるぜ。行動しなきゃ何も始まらねえのに、何もせずにこのまま死んでいくなんて、俺はごめんだ。140年の最大寿命だって、俺にいわせりゃ長すぎる。”おらこんな村いやだ~♪”ってやつさ。」

三人目「確かに。実際140年フルに生き切る意思を持った小人は少ないしね。それでもこの村にいることを選ぶのは、失敗するのが怖いんだよ。この小人の村を出たことを後悔する自分を認めるのが何より怖いのさ。」

四人目「失敗したら、優しい誰かに甘えて泣き付いちゃえばいいのに。それができないのかな?」

五人目「誰もがyouみたいに人を頼れるわけじゃないさ。この村では、失敗は”死”を意味する。何か事を興そうとして行動しても、失敗したら自己責任で誰も助けてはくれない。絶望を感じた人は、自ら死を選ぶケースが多いのはお前も知っているだろう?」

四人目「うん、知ってるよ。絶望は、死に至る病。絶望にさいなまれるのも自己責任。息苦しいよね~。・・それに、そもそも”失敗”って考え方をしなければいいと思うんだけど。」

二人目「なんにせよ、どの道俺たちは死ぬんだ。だったら、外の世界見て、巨女ノ国がどんなところか体験して、悔いなく生きようじゃねえか。絶望に怯えながら死を待つんじゃなくって、たとえ少しでも、心に希望を抱きながら生きる道を俺は選びたいね。」

 五人は、皆頷きました。98%の絶望が目の前に繰り広げられていたとしても、2%の希望を信じ、そこに残りの命を全て賭けようという気持ちは皆同じでした。もしその選択が間違っていたとしても、彼らは”失敗”とは考えないのでしょう。”経験”が増えただけだ、と捉えることでしょう。

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